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性愛は残酷で生々しく美しい「アデル、ブルーは熱い色」(2013)

2013年のフランス映画、『アデル、ブルーは熱い色』を見ました。

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2時間59分というなかなか長い上映時間。
正直最後まで一気に見るつもりはなかったのですが、止める暇もなく見てしまいました。
主人公の女の子が何を考えているのかいまいちよく分からず、その子の心情が気になってしまって追いかけてしまった感覚が強いです。

以下、あらすじや感想についてまとめていますので、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。ネタバレを含みますのでご注意ください。


あらすじ

18歳の少女・アデルは教師になりたいという夢を持ちながらも上の空な学校生活を送っている。
男女の友人とつるむ日々を過ごしているが、自ら他人と壁を作り、本音をさらけ出せずに孤独を感じて過ごしていた。

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本人は無自覚だが、女友達も認める美人なアデルは男子から口説かれて体の関係を持つも思ったような満足感は得られなかった。


ある日、彼女は街中で青い髪が目立つボーイッシュな女性・エマに目を奪われる。

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そして”偶然”立ち入ったレズビアン・バーで彼女と再会し、それからデートを重ねていく。

言うまでもなく、アデルはエマに一目惚れだった。
彼女の切ない欲求に呼応するかのようにエマは体を許し、二人は熱烈に体も心も求めあっていく。
これは二人が出会い、惹かれあい、求め合い、共感し、すれ違い、別れるまでの過程を描いた物語。


感想①「性愛はタブーなもの?」

日本で育ったからなのか分かりませんが、「性愛」に対しては世間で容易に語ることを禁じられているというか、どこか閉塞的であったり、タブーなものとして扱われやすい気がしています。

多様なセクシャリティがあるので、性愛に興味が向かなかったり、そもそも理解が出来ない方がいても何らおかしくはありません。

アデルはきっと、心と体の繋がりの整合性が取れずに苦しんでいたのではないかと思うのです。そしてエマと体を重ねる時だけは完全に調和できたのではないかと。

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けれど、それは長くは続かなかった。

互いの生まれた環境や、今までに形成された価値観の違いで心がすれ違っていき、やがてアデルは体の欲望だけを強引に埋めようとしてしまいます。
そのせいで2人ともどうしようもなく傷ついてしまう。もうここ、見ていられないほどキツかったです。目の前にいるし、かつては分かり合えた仲なのに。


感想②「見返りを求めない愛の残酷さ」

筆者は過去に片想いで悩んだ時、どこかで「愛に見返りを求めるな」という言葉を目にしたことがあります。その時は納得したつもりでいたのですが、この映画を見てからはその言葉がいかに辛辣なことか考えさせられました。

だって、愛した人からは愛してほしい。当然じゃないですか?

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手の届かないアイドルや、自分だけが認知しているような存在であれば「推す」で十分かもしれません。(きっと相手もそう望んでいるはず)
ですが手の届く距離にいる相手であれば「自分のことを好きになってほしい」と願うのは自然な欲求であるといえます。

くわえて、アデルのように一度「愛された」「分かり合えた」という快感を知ってしまうと「見返りを求めない愛」を望むことはなかなか出来ないと筆者は感じるのです…。


感想③「ベッドシーンが最高」

ごめんなさい、もう隠さず簡潔に言いますけどベッドシーンが最高すぎました。

やっぱり2人とも映画に向けて体をある程度しぼってらっしゃるんでしょうか…
胸や尻は豊満で腹はすっきりと引き締まっているんだけど、グラビアアイドルのようなあざとさは無い。太ももや二の腕はむっちりとしているけど、娼婦のようではなく至って健康的。

そんな2人が組んず解れつのあれやこれやをベッドの上で繰り広げるんですが…「見て!!!見てください!!!!」と言わんばかりのカメラアングルと尺でした。

実際にレズビアンの方々が言っているようなセックスを再現されていて「ガチだな」と制作側の意欲・覚悟を感じました。

あ、観客側を意識したような嬌声などはないのでご安心を(?)。生々しく愛を貪る彼女らがただただ美しいです。絵画的な美の探求心を感じました。


最後に

筆者の書き方のせいで「え…ポルノ映画?」と感じさせていたらそれは誤解です。

そして、LGBTの方々にのみ向けた映画でもありません。
人を愛し、ほろ苦い経験を感じたことのある方なら胸が張り裂けることでしょう。

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無償の愛って、恋愛では果たして存在するのでしょうか。

必要な時にもらえない不確かなもの。
恵んだ分だけ返還されない理不尽なもの。

愛されているという実感があるパートナーと共にいられることは奇跡なのではないかと感じました。

青い色の使い方も素晴らしいので、是非いろんな人に見ていただきたい1本です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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