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ショートショートnote

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noteで小説が書けるゲーム「ショートショートnote」を使ってちょこっと書いてみた。
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1分読書

1分読書

以前何かの本で、連続して1時間ジョギングした場合と、1日に20分のジョギングを3回した場合とそれほど消費カロリーに差がない…といった内容の記述を読んだ。

理屈上どうなのか検証したわけでもないし、出展が確実なものなのかも分からないので真に受けてもらっていいかは分からないが。

そんなことをふと思い出したこともあり、隙間時間活用で「1分読書」なるものを始めてみた。

なかなか忙しい中でまとまった時間

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缶詰めMD

缶詰めMD

そうそう、あれはうちのお母さんが缶詰を作る機械を買ったからと何か俺たちも積めてみようぜって俺と山本くん、里谷くんの3人で作った缶詰だ。

実家を建て直すことになり納戸を片付けていたら、ガラスが割れてしまってから見た目が悪いということで第一線を退いたサイドボードの棚の中、トーテムポールの柄の栓抜きの横に佇んでいた。

山本くんも里谷くんももう忘れてしまっただろうし、それぞれ埼玉、宮城にいるのでこんな

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「さしすせそ」のスキなところ

「さしすせそ」のスキなところ

巷では「○○フェチ」「○○マニア」「○○推し」という言葉を耳にするが、私は近頃「さしすせそ」の魅力にハマっている。

「あいうえお」よりはクールな感じ、「かきくけこ」よりは大人っぽく、「たちつてと」よりは冗談が通じ、「なにぬねの」より男っぽい。

「はひふへほ」より知的で、「まみむめも」より気さくで、「やいゆえよ」よりストレートで、「わいうえを」より常識的な感じ。

耳元で囁かれるとドキッとしてし

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ノリごっこ

ノリごっこ

「そんなに凹むなよ…そうそう、結局は気持ちの問題なんだよ。」
どの程度の落ち込みかよく理解する気もない樋口君は何だか自分都合の論理でいつも私を慰めてくれる。

「おっ、そうだ。ごっこ、ごっこ。『ノリごっこ』しようぜ。どっちがカラ元気出せるか競争しようぜ。まずは俺からな。」

と言ったかと思うと両手のひらを目一杯広げて顔の横に置き、右に傾がり左に傾がり。

樋口君の一生懸命な姿にごっこを通り過ぎてノ

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私とフォーク

私とフォーク

そんなに力一杯ねじ込んでいるわけではないのに、私のフォークは溝の奥にパスタが挟まってしまう。

そのパスタを頬張ろうとするとフォークの先が口の中のほっぺの内側に突き刺さる。

ちょうどいいところにもってこようとフォークを軽く振ってやると溝を一気にスルスルとお皿に落ちる。

フォークよ。どうもお前とは気が合わないようだ。

半笑いのスイカ

半笑いのスイカ

「昔さ、志村けんがコントで半月切りのスイカをスゴい速さで食べてたの知ってる?」

「あぁ、見たことあるかも。」

「あれさ、子供ながらに『志村スゴいな』って思ってたんだけど、今思うと反対側を削ぎ落としてカメラに見える面だけ薄く残してたと思うんだよな…」

そんなに細かく分析する必要もないことなのだが、夫は真剣な口調で呟きながら、私に見える側の面を残しスプーンで丁寧に削り、その削りカスを嬉しそうに口

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神様部

神様部

「あぁ…なんか騙された気がする…」

放課後はゴミ拾いに近所の公園の花壇の手入れと草むしり。

まだ出来立てホヤホヤの文科系サークルの部室棟の2階の角部屋に掲げられた「神様部」の看板。

てっきり神社巡りをするサークルかと思って入ってはみたもののボランティア活動の毎日。

公園の道向かいに住んでいるおばさんがこちらに近寄ってくる。どうやら水曜日はパートの勤務時間が短いのか他の曜日は我々が作業を撤収

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東と西のお金持ち

東と西のお金持ち

ある日、神様は東から一人、西から一人それぞれ選び大金を与えました。

東の者はそのお金はないものとして銀行預け、今まで通りの毎日を過ごしました。

西の者は今までの仕事を辞め、そのお金を使い色んな場所にいったり色んな本を買って読んだり、たまに食べるに困らない程度には働く生活を始めました。

その二人が三十年後に神様の前で顔を会わせてみると…

黒い男子

黒い男子

同じシャツに同じ半ズボンを履いた兄弟に会ったのは夏であったことは間違いないが、「盛夏」と呼ぶほど日差しは強くなかったような気がする。

丸坊主の頭に日に焼けた真っ黒い顔からニコッと笑った時に見える白い歯。

「どこに住んでいるの?」と聞くとキリッとした目付きのお兄ちゃんはこう答えた。

「南信濃村。長野県の一番南にある村だよ。」

二人のその姿からきっとその村はヤシの木が生い茂り、たわわな南国の果

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