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より早く、より正確な動作を可能にする、「ライフキネティック」理論とは

医療先進国であるドイツで、脳神経学と運動学等の最新研究に基づき考案された脳科学理論、「ライフキネティック」をご存知だろうか。

ライフキネティックは、アスリートから児童、高齢者まで幅広い対象に、誰にでもできる簡単な動きを通じて脳に刺激を与え、脳機能の向上と神経の伝達機能を強化、促進することができる。そして新たに構築された神経ネットワークは日常生活機能からアスリートのパフォーマンス向上まで、様々な状況下で応用され、アスリートにおいては、ドイツのサッカーチームであるドルトムント、クーバーコーチングジャパン等で導入された事で知られている。

競技スポーツにおいて、技術面の向上には最小限の随意努力で最大限の運動を実行すべく、反復練習を行う事が非常に重要視される。小脳に特定の動作パターンを学習させ、フォームを習得することで、より速く正確に、エネルギー効率よく動作を行うことが可能となる。

日常動作において、この自動化された運動が特に顕著に見られる。「片手に荷物を持ち駅へ向かって歩き、なおかつ電話をしている」この状況だけでも、小脳により自動化された運動と大脳皮質からの指示による随意運動が混在して同時並行しているのが分かる。

これらは脳の別部位、かつ左脳右脳が同時に使われるため、「マルチタスク」と呼ばれる。

ライフキネティックの理論の要となるのは、「繰り返して学ぶのではなく、変化を通じて学ぶ」ことにある。常に変化する予期しない運動に遊びの要素を加えることで、楽しくなり、できるようになる。さらに褒められることで、運動機能や記憶力を司る「報酬系」と呼ばれる神経伝達物質あるドーパミンが放出される。これにより、意欲や学習能率、集中力向上による運動能力向上等の効果が期待できる。

日常生活や競技の根底となる部分である、あらゆる「反応」に対して「マルチタスク」を遂行するためのアプローチを行う。そのプログラムの主軸として、ボディコントロール、視覚機能、認知機能の三分野に分かれる。

視覚情報を正確にするためには、左右の眼球を正常に稼働させるための筋の調整、視覚機能を司る脳後部にある後頭葉の活動をより活性化させることが非常に重要である。

人間の行動の8割は視覚情報に基づくと言われている。しかし、ひとえに視覚と言えど、対象が視界に入っているという事と、対象を視界内で捕捉しているという事では、話は全く別である。

例えば、投げられたボールを視野に捉えていても、そのボールの軌道の前後を広範囲で見ているのと、そのボールに書かれた数字を読み取る程に注視することの違いである。

前者は「ショット」と呼ばれる動作で、ボールのその先に描くであろう軌道や落下地点などを予測することには向いているが、それのみに依存してしまうと急激な変化が起きた際に対応しきれず、結果として全体の反応の遅延に繋がることがある。

逆に後者のみではボールの急激な変化に対する反応速度は向上するが、あまりに限局しすぎては人員の配置や周辺状況などの全体の動きに気を向けられず、その後の動作には繋げにくい。

このようにスポーツや日常でも、目の前の情報を正確に捉え、脳から出来るだけ早く次の行動に対する的確な指示を行う事が必須になる。

よって、これらはどちらが重要という訳ではなく、状況次第で自在に使い分けなければ、後に続く充分なパフォーマンスは発揮されない事を意味する。

ライフキネティックでは右脳派、左脳派などという言葉でおなじみの左右面の脳の局在だけでなく上下、前後面でも分けて考えられ、この計8分割の脳をいかに同時に協調させて動かせるかという事を最大の目標としている。

認知とボディコントロールについては、前述のマルチタスク状態に加え、右脳と左脳を同時に使用することに重点を置く。大脳はそれぞれ左右の半球が逆側の半身を司り、左右の半球を連結する交連線維と呼ばれる神経接続機能の強化が欠かせない。

そのため、メニューの例として、右手(左脳)と左足(右脳)を同時に動かす課題を与える。立位で左足を浮かせ、円を描くように回し続けた状態で、エドゥと呼ばれるお手玉を上に投げ、手のみを左右交差させた状態でキャッチする。

これらに高い筋出力の必要はなく、タスクを増やし脳を混乱させ考えさせることでネットワークを活性化する、ブレインジョギングという手法が用いられる。

ライフキネティックは、特別な器具も環境も必要なく、発想次第で幾らでもメニューを考案し、即座に実施することができる。

勉強や仕事、日常生活動作等においては、ライフキネティックにより培った能力や効果そのものが貢献する事も多いが、競技スポーツ等への活用には、それらを基にして別途で筋力トレーニングと技術、戦術トレーニングに励む必要がある。

それらの共通する根底としての部分は、ライフキネティックの実施により非常に短時間の実施で大きな変化をもたらす事ができる。年齢や環境を問わず、少しでも多くの人々に導入され、各々の望む成果の力添えができれば幸いである。

株式会社ウェルネスデベロップメント ライフキネティック日本支部http://lifekinetik.jp
編集:TeLAS 関口貴久