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【米国株】米経済が強い理由:高金利は経済にプラス!?恩恵を受ける富裕層銘柄

米著名投資家が「米国経済が強い理由の一つは、高金利だ」と指摘した4月16日のBloomberg記事がCNBCなどで取り上げられ、話題になっています。

ヘッジファンド、グリーンライト・キャピタルの創設者で著名なバリュー投資家のデビット・アインホーンは、適度な水準までの金利引き上げは実際には経済を押し上げる、と述べました。家計は、受取利息の方が支払利息を上回るため、ネットの受取額が増えるというのです。

実際に、家計の「金利・配当収入」と「金利支払い」を比較すると、「金利・配当収入」の金額が大きく、差は開いています。全体では、高金利は家計の収入にとってポジティブとなっており、これが強い米経済・消費に貢献しているという見方ができます。

bea Table 2.6. Personal Income and Its Disposition, Monthly

ただし、恩恵は富裕層に集中しています。2022年の統計では、世帯数では約33%を占める高所得層が、約80%の「利息・配当収入」を得ています。
更に、富裕層は持ち家比率が高く、金利が低いうちに固定金利で住宅ローンをロックインするか、住宅ローンを完済している比率が高いため、高金利によるネガティブな影響も限定的です。

U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICS, Consumer Expenditure Surveys

一方で、金利が20%を超えるとされるクレジットカード負債残高は過去最高となるなど、低~中所得層への経済的な圧力は増しています。

このような状況から、今後は消費トレンドとして、富裕層の消費は強く、比較的低所得層の消費は弱い、といった二極化の強調が想定されます。

そこで今回は、富裕層の消費をテーマとして、関連企業を検討しました。


ピックアップした業界

富裕層の消費をテーマに、以下の業界に注目し、関連企業を検討しました。

資産運用

  • 富裕層の資産管理に力を入れている大手企業に注目

  • プライベートバンキング、ブローカレージ業務、オルタナティブ投資が関連

エアライン

  • フルサービスかつ国際路線の比重が高い企業に注目

  • ビジネスクラスなどのプレミアム商品の収益が伸びている

クレジットカード

  • 富裕層の比率が高い企業に注目

  • 会費収入が安定的な収益源となっている

モノ

  • 高級品を提供する企業に注目

  • コロナ禍でも底堅い需要を維持している企業が関連

カジノ

  • 富裕層向けの高級カジノリゾートを運営する企業に注目

  • VIPプログラムや専用施設で富裕層の取り込みを図っている

これらの業界では、富裕層のニーズを的確に捉え、付加価値の高いサービスを提供することが重要となります。各企業の戦略や競争力に着目し、投資機会を探ります。


資産運用

資産運用業界において、モルガン・スタンレー(MS)KKR(KKR)ブラックストーン・グループ(BX)は、富裕層の資産管理に力を入れている大手企業です。

PER(株価収益率)と成長期待の関係

白い線が市場の平均的な成長期待とPERの関係を示しています。線より上が割高、線より下が割安と判断されます。

モルガン・スタンレー(MS)

モルガン・スタンレーは、M&A助言など投資銀行業務に加え、プライベートバンキングと証券仲介業務を同社のもう一つの柱に育てました。富裕層のニーズに合わせたカスタマイズされた投資戦略や、きめ細かいアドバイザリーサービスを提供することで、顧客満足度の向上と長期的な関係構築を図っています。また、グローバルな投資機会の提供や、デジタル技術を活用した利便性の高いサービスの開発にも注力しています。

  • ポジティブ

    • 資産運用事業(ウェルス・マネジメント事業)が過去最高の収益を記録し、強固な利益率と新規資産獲得を示した

    • 資産運用収益が過去最高となり、顧客資産が7兆ドルに達した

    • PERは市場対比割安

  • ネガティブ

    • 直近4/12に同社の富裕層向け資産管理部門が、複数の規制当局(米証券取引委員会、通貨監督庁)による調査を受けているとウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じ、株価は5%程下落。このリスクが残る

KKR(KKR)

KKRは、プライベートエクイティ投資に特化した大手オルタナティブ投資(株や債券など伝統的な資産クラスではない投資対象)会社です。1976年に設立され、レバレッジド・バイアウト(LBO)の先駆者として知られています。KKRは、企業の買収、成長支援、価値向上に取り組み、高いリターンを追求しています。また、不動産、インフラストラクチャー、クレジット、ヘッジファンドなどの多様な投資戦略も展開しており、総合的なオルタナティブ投資プラットフォームを提供しています。富裕層や機関投資家から多額の資金を集め、グローバルに投資活動を行う。

  • ポジティブ

    • 富裕層向け商品が引き続き好調。個人投資家向けの資金調達額が前年比で大幅増加

    • 成長期待と比較して特に低いPER(割安)

  • ネガティブ

    • 高金利下で業績を伸ばしているが、潜在的には高金利での資金調達に伴うリスクや、景気後退環境下では投資先企業の破綻リスク

ブラックストーン (BX)

ブラックストーンは、世界最大級のオルタナティブ投資運用会社の一つです。1985年に設立され、プライベートエクイティ、不動産、クレジット、ヘッジファンド・ソリューションズの4つの主要な投資戦略を提供しています。特に不動産投資に強みを持ち、世界各地のオフィスビル、ホテル、商業施設、物流施設などに投資しています。また、プライベートエクイティ投資では、大型の企業買収や成長企業への投資を行っています。ブラックストーンは、機関投資家や富裕層から多額の資金を集め、長期的な価値創造を目指した投資活動を展開しています。グローバルなネットワークと優れた投資実績により、オルタナティブ投資業界をリードする存在。

  • ポジティブ

    • 個人富裕層向け商品の販売が好調で、前期比83%増。特に米国で強い。

    • PERは市場対比割安

  • ネガティブ

    • 金利上昇は(自社・顧客)保有資産価格にネガティブ

    • 特に、大きな事業としてCRE(商業不動産)投資事業を抱える

これらの企業は、富裕層のニーズを的確に捉えた商品・サービスの提供や、専門性の高い人材の確保に努めています。今後は、デジタル化の推進やグローバルな投資機会の開拓などを通じて、競争力の維持・向上が期待されます。ただし、市場環境の変化や規制の強化など、業界特有の課題にも注意が必要です。


エアライン

米国の航空業界において、デルタ航空 (DAL)ユナイテッド航空(UAL)は大手のフルサービスキャリアとして知られています。両社の特徴は、国内線に加えて国際線の比重が高いことです。

DALとUALは、国際線ネットワークを強みとしており、北米、欧州、アジア、南米など、世界中の主要都市を結んでいます。特に、ビジネス客や富裕層をターゲットにした、ビジネスクラスやファーストクラスなどのプレミアム商品に力を入れています。

近年、両社ともにプレミアム商品の収益が伸びています。これは、ビジネス客や富裕層の需要が堅調であることに加え、サービスの質の向上や座席の快適性の改善など、プレミアム商品の競争力を高める取り組みが奏功しているためです。

コロナの影響により、航空業界全体が大きな打撃を受けましたが、足元ではレジャー需要が非常に強く、運賃が上昇しています。一方、ビジネス客の需要は回復途上にあります。

今後は、プレミアム商品の更なる強化や、顧客ロイヤルティの向上、運営効率化などに取り組むことで、競争力の維持・向上を図ることが期待されます。ただし、燃料価格の高騰や人件費の上昇など、コスト面での課題にも直面しています。

PER(株価収益率)と成長期待の関係

ユナイテッド航空 (UAL)

  • ポジティブ

    • 4月17日、市場予想を上回る業績発表により15%上昇。翌日も5%上昇

    • 国内線でレジャー需要が堅調。特にプレミアム旅客収入の構成比が上昇など、富裕層の需要を捉えている

    • 上昇後でも5倍程度と非常に低いPER

  • ネガティブ

    • 相次ぐ不具合により連邦航空局審査中。追加の路線拡大制限や運航停止リスク

    • 人件費・燃油費高騰

デルタ航空 (DAL)

  • ポジティブ

    • プレミアム旅客の需要が堅調で、今後も成長が見込まれる

    • 企業需要も加速している

    • PERは市場対比割安

  • ネガティブ

    • 「レジャー目的の短距離需要が供給過剰」とコメント

    • 人件費・燃油費高騰


クレジットカード

アメリカン・エキスプレス(AXP)

富裕層向けのクレジットカードサービスのアメリカン・エキスプレス(AXP)は高額な年会費を設定し、それに見合った特典やサービスを提供することで、富裕層の顧客基盤を築いてきました。アメリカン・エキスプレスの顧客は、平均的なクレジットカード利用者と比べて所得が高く、高級品や旅行などの支出が多いのが特徴です。

年会費が安定的な収益をもたらしています。この会費収入は、景気変動の影響を受けにくく、同社の財務基盤を支える重要な要素となっています。

近年、富裕層だけでなく、若年層の取り込みにも注力しています。ミレニアル世代やZ世代をターゲットにした商品の開発や、デジタルサービスの拡充に力を入れています。

今後は、デジタル化の推進や、パートナーシップの強化、新興国市場の開拓などを通じて、さらなる成長が期待されます。ただし、競合他社との競争激化や、規制環境の変化には注意が必要です。

PER(株価収益率)と成長期待の関係

  • ポジティブ

    • 2023年は記録的な収益と純利益を達成

    • 顧客エンゲージメントと高級製品への需要が強い

    • 顧客の与信(不払いの低さ等)が業界で最も強い

    • PERは市場対比割安

  • ネガティブ

    • 景気後退局面においては新規獲得の若年層の債務不履行リスク

    • 企業部門では中小企業向けの支出が力強さを欠いている


モノ

ブランズウィック (BC)フェラーリ (RACE)レストレーション・ハードウェア (RH)は高品質な商品やサービスを提供し、富裕層のニーズを的確に捉えることで、ブランドロイヤルティを築いています。

ブランズウィックはボート、マリン用エンジン、フィットネス機器などを提供する企業、フェラーリは高級スポーツカーメーカー、レストレーション・ハードウェアは高級家具や住宅設備を販売しています。

コロナ禍では、巣ごもり消費の恩恵を受け、各社の業績は好調でした。その後、消費がサービスに移行する中、フェラーリとブランズウィックは底堅い需要を維持しています。一方、レストレーション・ハードウェアは一時的に業績が悪化したものの、現在は回復傾向にあります。

PER(株価収益率)と成長期待の関係

ブランズウィック (BC)

  • ポジティブ

    • 高価格帯艇の顧客は比較的底堅い。顧客へのアンケート結果として90%が5年以上ボート利用を継続する意向

    • PERは市場対比割安

  • ネガティブ

    • 2023年の米国新艇販売台数が6%減少し、2024年は横ばいが見込まれる。成長が見込める訳ではない

フェラーリ (RACE)

  • ポジティブ

    • 富裕層を中心とした強い顧客基盤。

    • 2023年は過去最高の売上高、EBITDA、EBIT、純利益を記録

    • ハイブリッド車の割合が44%に倍増と、エコカーへのシフトも進む

  • ネガティブ

    • 世界へのエクッスポージャー。直近では中国本土、香港、台湾でわずかに出荷が減少

    • PERが大きく割高

レストレーション・ハードウェア (RH)

高級家具や住宅設備を販売。

  • ポジティブ

    • コロナ中の「巣ごもり消費」、その後の反動を経て、2024年の需要は12~14%の増加が見込まれる

  • ネガティブ

    • 住宅市場の低迷による引っ越しによる需要の低さ

    • PERは市場対比割高


カジノ

米国のカジノ業界大手であるシーザーズ・エンターテインメント (CZR)MGMリゾーツ・インターナショナル (MGM)は、高級カジノリゾートを運営しています。ゲーミングに加え、高級ホテル、ファインダイニング、エンターテインメントなど、幅広いサービスを提供し、ハイローラー向けのVIPプログラムや専用施設で富裕層の取り込みを図る。

コロナの影響で一時的に打撃を受けたものの、徐々に回復しつつあります。ただし、アナリストの分析では、消費全体の増加に比べてカジノへの支出は抑えられており、拡大の余地があると見ています。

今後は、富裕層のニーズを的確に捉えた施設・サービスの提供やオンラインビジネスの強化などを通じて、競争力の維持・向上が期待されます。ただし、規制環境の変化や社会的責任への対応など、業界特有の課題にも注意が必要です。

PER(株価収益率)と成長期待の関係

シーザーズ・エンターテインメント (CZR)

  • ポジティブ

    • ラスベガスでは2023年にホテル収入と飲食収入が過去最高

    • iCasino(合法オンラインカジノ)事業が好調に推移

    • 2024年にはいくつかの大型建設プロジェクトが完了予定で、高い投資リターンが期待される

  • ネガティブ

    • 株価が低迷

    • PERは市場対比割高

MGMリゾーツ・インターナショナル (MGM)

  • ポジティブ

    • ラスベガスで記録的な利益を達成し、7つのカジノが個別記録を更新

    • 日本、ニューヨークでのカジノ参入を視野に入れている

  • ネガティブ

    • ラスベガスに加え、マカオ事業も大きな割合を占める

    • PERは市場対比割高


まとめ

今後、富裕層の消費は強く、低所得層の消費は弱い、という二極化の強化が想定される、という視点のもと、有力企業を検討しました。

ここで抽出した企業の株式市場での評価をフォローするとともに、今後は下記についても検討していきたいと思います。

  • 富裕層をターゲットとした他業界企業

  • 「低所得層の消費は弱い」の投資テーマ



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