鰻代を振り込んでもらって

先週末は土用丑の日だった。江戸時代の広告PRによって鰻を食べるようになってと言われている。この宣伝が、運良く根付き、続いたことによって、今では鰻を食べるのが当たり前になった土用丑の日。正直、1日だけ鰻を食ったからって夏を乗り切れるほどのスタミナなんてつきやしないとは思うのだけれど、なんとなく鰻が食べたくなるのは「継続こそ力なり」の賜物か。

ご多聞にもれず、そんな刷り込みをもろに受けている僕の母は、毎年、決まって鰻代の5000円を振り込んでくれる。もう僕は32歳になる。親に鰻代を振り込んでもらうなんて恥ずかしい話だ。でもいつもその5000円をありがたくいただく。しかし、そのお金で鰻を食べたことは今まで一度もない。いつも、いつの間にかなくなってしまう…。あるときは光熱費の支払いに、あるときは飲み代に。あるときは何かに。

でも、今年こそはと思い、いや一瞬思ったのだが、どうせ鰻屋に行っても混んでるだろう、かといってスーパーやコンビニの鰻もいまいちだしと理由をつけ、今年も鰻屋に足を運ぶことはなかった。

僕は5000円をATMでおろし、財布に入れ、本屋に向かった。青山ブックセンター本店。僕の大好きな本屋。アート本、広告本、小説、実用書、これらのジャンルが実にバランス良く置いてあり、広すぎず、狭すぎずの店内をぐるぐるして、「感性は感動しない(椹木 野衣著)」を購入し、その後に、シアターイメージフォーラムで想田和弘監督の「THE BIG HOUSE」を観た。僕の鰻代は、鰻に消えることはなかったけれど、今年は、しっかりと栄養を摂取できた気がした。

新たなコンテンツの制作のために大切に使わせていただきます。何に使ったかは、noteにてご報告させて頂きます。