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ことのは。

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言葉や文物について
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世紀末の物語

考える人がいる
愛を説く人がいる
バカな思い込みに左右される人がいて
自分は間違っていないと信じる人がいる
間違ったことを間違っていると知ったうえで
何が正しいのかさえ考えることもない人がいて
間違っていることを「間違っている」とは知らずに
ただ間違ったことをただただ続けてゆく人がいる

抽象論はやめた

空からおっぱいが降ってきた
柔らかいお餅のようなおっぱいは
食べても食べても腹が満たない

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誠実さのかけらもなく

誠実さのかけらもなく

いちばん欲しいものは
いちばん手に入れたくないもので
それはそこにただ在るから 美しい
手に入れたらそれまでだから
欲しい欲しいといつまでもつぶやいて
きっと君を困らせるだろう

なにが大切かなんてわかるわけがない
クソみたいな真実が僕の世界
そんなものがあるとすれば だが
君が僕の世界に迷い込んでから
事態が悪化した

人生の問いは単純なもの
何を求めているのかすら忘れさせる唯一のもの
ここで「

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あなたのメタファー

有機野菜と上質な食肉で調理された
老舗ビストロのアラカルトの一品のような

横断歩道の真ん中で立ち止まって
2日前の約束を思い出して焦る老婆のような

恋に恋する女に恋する男の母親のような

おなかいっぱいでも「デザートは別腹」といって
ペロリとたいらげるフロマージュのような

宇宙へ飛び立つ宇宙飛行士が地上で
「最後に会いたい」と願ってやまない女のような

会社が倒産して借金の取り立てに苦しみ

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無題の詩あるいはささやかな震え

ポストボックスの陰茎に刺さったあなたの良心が
ひどく健気な中学生の入学式に没入した
校長先生の苦悩にも似た教頭のハゲ頭に
唾を吐いた中小企業の社長が吐いたひとこと
震えるほどの怒りを覚えた葛西臨海公園の近くに住む主婦が
子供の夜泣きに耐えかねてタオルケットを蹴飛ばしながら
子供を殺した自責に念に駆られて自殺したというニュースを観て
バンド練習のために秋葉原に向かう途中のブルース奏者が
「おれもブル

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あいうえおの詩

あなたのことを
いつまでもいつまでも
うえからしたまで
えんりょなく
おかしいほどに
かんがえています
きがくるっても
くるまがなくても
けんかがたえなくても
こうおもいます
さびしいときに
しあわせなときに
すばらしいときをゆめみて
せなかがまがるまで
そばにいたい
たいくつなときには
ちからとなり
つらいときには
てをつなぎ
とりのように
なみのよう

ぬぎすてきれぬ
ねまきを
のはらにすて

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