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猫塚

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猫の声が耳から離れない。 ある時から始まった怪異。 きっかけは恐らく自分だと話す提供者。 都内のある家で今も続く恐怖とは。 『とにかく猫を絶やすな。可愛がれ』という言いつけの意… もっと読む
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猫塚③

猫塚③

百合子はうつむき、机の下で人差し指を握って耐えていた。
授業中も指が痛んで集中できない。
痛みが頭まで揺さぶるように疼く。

「斎藤さん、どうしたの?」
「……」
快活な百合子からの返事はなく、うつむいたままだ。
担任教師の中野は顔をのぞいた。
すると陶器のように白くなり、瞼をきつく閉じた顔があった。
「やだ、顔色わるいじゃない。保健室行こうか?」
小さい頭がこくりと動くのを確認して、中野は百合子

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猫塚②

猫塚②

朝起きると、小春の鳴き声がした。
もともと吠えない子だったが、最近は体調のせいか全く聞いていなかった。
元気になったのかもしれない。
百合子は期待を胸に、慌てて庭へ出た。

朝露で足を濡らしながら向かう。
小さな茶色い背中がせっせと動くのが見えてきた。

小春が穴を掘っていた。
知識として犬が地面を掘ることは知っていたが、見るのは初めてだった。
前足で一心不乱に掘り進めている。
しばらく見ていたい

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猫塚①

猫塚①

斎藤家の家は、いかにも日本の屋敷という雰囲気だった。
元々地主の流れを汲む家柄のため、土地が広く造りも古い。
駅からかなり離れているその場所は、東京都内とは思えない雰囲気だ。
近隣住人から別名『猫屋敷』と言われていて、常に猫を多頭飼いしている。
聞けば、何代か前の当主の妻からの言いつけで猫を可愛がっているそうだ。
「言いつけで?」
阿達はメモから視線を外し、斎藤百合子の顔を見つめた。
「とにかく猫

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