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【こえ #25】声を取り戻す方法としては、大きく3つがある…

萩原 幹雄さん


 私たちは通常、空気の通り道である「気管」と食べ物の通り道である「食道」が途中までつながっている。たまに食べ物が「気管」に入ってしまうと、むせたりする理由だ。場合によっては誤嚥性肺炎で重病化になることもある。

 しかし、喉頭がんや食道がんなどをきっかけに喉頭(声帯)摘出手術を受けた方は、首に永久気管孔を造設する(穴が開く)ことで新たな「気管」をつくり、そこを通じて呼吸することになる。すなわち「空気」の通り道と「食べ物」の通り道は完全に分かれることになる。


 その状況で声を取り戻す方法としては、以下の3つがある。

  1. 「食道」に空気を取り込み、食道入口部の粘膜を新たな声帯として振動させ発声する『食道発声』

  2. 電気の振動を発生させる器具を使い、口の中にその振動を響かせ、口(舌や唇、歯など)を動かすことで言葉にする『電気式人工喉頭(EL)』

  3. 手術により新たな「気管」と「食道」とをつなぐ器具を挿入し、気管孔を手や指で塞ぐことで肺の空気を食道に導き、声を出す『シャント発声』


 これまでお会いした、喉頭(声帯)を摘出された当事者の方はすべて①か②を実践される方で、③を選択した方にお会いしたのは今回の萩原さんが初めてだった。

 正確な統計はないが、欧米では③が主流と言われる一方、日本では約半数が①、30~40%が②とも言われ、③は極めてマイナーと言われている。

 それを反映するように、「先にかかった病院がシャント手術(③)を知らず、自分でインターネットを調べてシャント手術ができる東京の病院に行ったんですよ」と萩原さんは振り返られた。

 お仕事をバリバリされていた萩原さんとして、習得に時間がかかる『食道発声』(①)や、これまで仕事上の付き合いがある方にとって「自分の思い込みかもだが、受け入れられづらく感じて」しまった『電気式人工喉頭(EL)』(②)に対して、「声質は以前と違うかもしれないが、術後すぐにでもコミュニケーションを取れる発声レベルが可能」になる『シャント発声』(③)は魅力的だった。その点は、特に「現役でお仕事をされている当事者の方にはお伝えしていきたい」と話された。


 『シャント発声』(③)は日本ではマイナーであるが故に「メリット・デメリットが過剰に言われるような噂話も多い」と感じておられる。現在所属する、群馬県で喉頭(声帯)を摘出した方が発声訓練に集う「群鈴会」には他に『シャント発声』(③)をされる会員はいないが、「正確な情報を伝える」役割を果たせればと会に所属されている。


 と言いつつも「手術後の予後が長い当事者の大先輩が多くおられ、これからの人生のために役立つ経験が聞ける」から「群鈴会」の場を大切にしている。「純粋な人のつながりのためですかね」と微笑みながらはっきりと『シャント発声』でおっしゃった。


▷  群鈴会



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