以下の記事で『麻尼亞』を発行していた風俗研究家・平井蒼太の雑誌『郷土風景』についての書誌を紹介したが、平井は他にどのような雑誌に投稿していたのだろうか。

ざっさくプラスより平井（本名である平井通名義も含む）の『麻尼亞』以外の書誌情報を抜き出すと以下のようになる。なお、一部年代が不明のものがあるので、年代が分かるもののみ記載した。

昭和3年
裾除考　『風俗研究』第103号

昭和4年
弓浜半島外江村の正月　『風俗研究』第104号
脚布　『風俗研究』第108号
見世物女角力発生思考　『風俗研究』第109号
見世物女角力の変遷　『風俗研究』第113号

昭和5年
大阪賤娼誌　『犯罪科学』第1巻第7号

昭和6年
大阪売笑挿話　『デカメロン』第2号
女角力の話　『デカメロン』第3号
女角力の話　『デカメロン』第4号
近代娘白浪　『デカメロン』第1巻第10号
続大阪売笑挿語　『デカメロン』第1巻第11号

昭和7年
＜特種文献の一＞英名二十八衆句　『デカメロン』第2巻第1号
大阪穴探  『デカメロン』第2巻第4号
浪花賤娼志（一）　『風俗研究』第143号
大阪の新聞錦　『匂へる園』第1輯
浪花賤娼志（二）　『風俗研究』第144号
浪花賤娼志（三）　『風俗研究』第145号
『末摘花』及び其書類　『匂へる園』第3輯
おぢやれ　『匂へる園』第4輯
浪花賤娼志（四）　『風俗研究』第147号
浪花賤娼志（五）　『風俗研究』第149号
浪花賤娼志（六）　『風俗研究』第151号
涸れる泉　『俚俗と民譚』第8号
鳥取県西伯郡外江村盆行事聞書　『俚俗と民譚』第8号
信楽民譚　『俚俗と民譚』第10号

昭和8年
浪花賤娼志（七）　『風俗研究』第153号
浪花賤娼志（八）　『風俗研究』第155号
浪花賤娼志（九）　『風俗研究』第159号

昭和9年
横浜沿革記録1　『古典趣味誌』資料第1号

昭和10年
横浜沿革記録（完）　『古典趣味誌』資料第2号
腰裳の美学　『古典趣味誌』資料第4号

昭和11年
見世物女角力のかんがへ 　『歴史公論』第5巻第5号

主な記事は女角力、大阪の風俗関連、地域の民俗紹介が多く、梅原北明周辺の雑誌、民俗学関連の雑誌が投稿先であったようだ。個人的に気になるのは、ざっさくプラスで確認した限りでは、昭和12年以降の投稿がほとんどないことである。たとえば、平井の投稿先のひとつであった江馬務が発行していた『風俗研究』は昭和17年まで発行されていたが、平井は昭和8年以降投稿していない。Wikipediaに平井は立項されているが、この情報によれば、平井は昭和10年に肺結核にかかったようなので、健康上の問題で研究活動を控えざるをえなかったと推測される。