わたし、孤独を感じないんです。友達だって多い方じゃないのに。ずっとなんでかなー？って思ってたんですけど、初めて孤独ってこういうことか、という場面に遭遇した！それは

友人が難民になった時

友人、ムハンマドはガザ出身でわたしがインド滞在中に知り合った人。知り合った数年後、多くの難民がヨーロッパを目指したあの時期に彼もヨーロッパに向かった。その時、彼は『非公式ルートで』という言い方をしていた。そして難民キャンプで過ごし、ビザを取得し難民という地位を得て晴れてキャンプを出て街で暮らすようになった。そこで待ち受けていたのは差別だった。
家族には会えない、スカイプで話しことはできても直に会うことはもしかしたらもう無理かもしれないし、いつか将来会えるかもしれないし、インシャアッラー、神様次第。
周りのヨーロピアンたちはアラブ人＝難民＝テロ・・・みたいな考え方も一部にあって、挨拶しても無視される日々が続き、いるのにいない自分、生きているのに死んでる自分みたいな状況にあった。

毎日なにしてるの？

とにかくできるだけ寝ている。現実が苦しすぎるんだ。早く今日が終わるようにね。

その時初めてわかった。これが本物の孤独なのね。
わたしが一人でいても帰る場所、帰ることができる場所がある。少ない人数でもいつでも会える友達がいる。いつも会わなくなっていつだって会える。絶対的な安心感がある。だから孤独じゃないんだ。

ムハンマドのそんな孤独な日々は数年続いた。

２０１８年初頭

聞いてくれ！婚約したんだ！

え？婚約？？おめでとう！で、相手は誰？どこで知り合ったの？？

どこでってお見合いだよ。ドラディッショナルなやつさ。うちのお母さんが設定してくれて。

もしかして、彼女はガザにいる？

そうだよ。ガザとこっちでスカイプでお見合いして。それで何回かお話ししてプロポーズしたんだ。

そっかー。よかったじゃん。それで、彼女は今もガザ？いつヨーロッパに来るの？？

インシャアッラー、許可がおりたらね。ほら、ガザだから。

なるほど。

そして半年後

今彼女がヨーロッパについたよ、結婚したよ。彼女に代わるね。

初めまして、よろしくね！あなたの話は聞いてるわ、こっちに遊びに来てね。わたしも会いたいから。一緒に料理しましょうよ。

これでムハンマドの孤独は本当に癒される。初対面の二人はここから恋が始まるのね。
わたしと彼女は数ヶ月に一度メールや電話で連絡を取り合った。

そして１年後の今　

わたしは２通のメッセージを受け取った。

実は赤ちゃんが生まれました！これでわたしも公式ママよ！！家族みんなで待ってるからね！

父親になりました。女の子です。家族３人で待ってます。

彼のジェットコースターのような人生がトロッコ列車に穏やかさに変わっていった。もしかしたらプリウス並みに静かなものになったのかもしれない。

人間関係はいかに孤独を癒すものなのか、Boy meets girl は自由恋愛を意味する偶然の産物だけでなく、伝統と先端技術の融合もあり得るのか、人は人無しでは生きることが苦しくなるのか、わたしの普通、その普通を得難い境遇にある人もいるのか、と知った。

ムハンマドの妻と娘。まだ見ぬわたしにとっても大切な人。早く会いたい！７月２７日に生まれた二人のベイビー、会いたい人が増えたよ！