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【呻吟】死






 自室に戻ると、罪を犯す前、元通りだった。改めて親への感謝が溢れてくる。砂の世界と似た雰囲気を部屋に覚え、みょうな落ち着きがあった。
 まだ彼との約束が、アドレナリンをとめどなく放出させてくる。あんな賭けはしたが、実際はそれを上回る海外大に受かろうと、芸術や作品に没頭して世間に認められようと、彼は賭けに勝ったことにしてくれるだろう。私がそれこそ文字通り、一生懸命にアツくいられる対象を見つけられれば、それでいいのだ。
 死ななきゃ、それでいい。 中途半端に先走る私の熱を、ユウタが勉強に向き合えるキッカケとして、道を作ってくれた。やっぱり彼には敵わない。

 「そんなに夢中になっちゃったら、2年が730日じゃ足りないじゃない」わくわく入り混じる二ヤケ顔を一人こぼす。

 この先、「人生そんなもん」だと言われる展開が待っているかもしれない。またあの時と似た場面に遭遇するかもしれない。

 でも、大丈夫。私には私がついている。脳内で意見が割れても、決断さえしてしまえば最強の見方だ。ユウタだって、背中を預けられる、友達だ。
 悪くない青春時代が送れそうだ。
 机上のシャープペンを思いっきりノド元につき刺す。日和らなかったってことは、これからも覚悟を決めて生きられそうだ。

 ゆっくりとカーテンを開くとともに、風に乗って頬に触った、いつかの砂。忘れないよ、と記憶に堆積させた。





最終話まで読了、ありがとうございました。
最後シャーペンを刺しているのは、少年院に行くような人はその後の人生で不当な扱いを受けるから、どんなに気があろうと自殺してしまうかもという暗喩です。ありがとうございます。

マジ小説書くの楽しかった。Tiger先生の次回作にご期待ください。

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