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新しい自分をつくる|私とは何かー「個人」から「分人」へ【読書感想】

平野啓一郎さんの「私とは何かー「個人」から「分人」へ」を読み終えました。


平野啓一郎さんご本人が提唱する「分人主義」について書かれた本です。
人間を、分けられないひとりの「個人」から、人格ごとにわけられる「分人」として捉えていきましょう、という考え方です。
うまく説明するのが難しいので、公式ページのリンクを貼っておきます。
https://dividualism.k-hirano.com

対人関係ごとに見せる複数の顔が、すべて「本当の自分」である。
個性とは複数の分人の構成比率によって決まる。
自分という人間を、複数の分人の同時進行のプロジェクトのように考える

私とは何かー「個人」から「分人」へ

全て本当の自分

置かれた環境や周りの人間によって、自分が変わっていくことに関して
作者の学生時代の体験や、留学時のエピソードとともに語られるのでわかりやすいです。
自分の過去とも重ね合わせられる部分も多くあり、腑に落ちるところがありました。
例えば高校時代、学校にあまり馴染めず居心地の悪い日々を過ごしていましたが、好きな音楽を聴いたり、校外の気が合う人と交流したり、ブログを書いているときの自分は好きでした。この本で言う分人化をして、心のバランスをとっていたんだと思いました。
当時は無理して人に合わせることが多く「本当の自分はどこ」などいろいろと悩んでいました。
でも偽りだと思っていた姿も含め、全て本当の自分だそうです。本当の自分という考え方をすると、嘘の自分が生まれてしまうから。
対する相手ごとに生まれる自分は、全て本当の自分で、好きなところと好きになれないところがある、それでいいんだと思います。
この本に書かれているように分人は他者との関係から生まれる。悩みの半分は他人のせい。そう考えると当時の自分が救われるような気持ちになります。

付き合う人間を変えると分人が変わる

ここ数年で性格が前向きになりました。
退職、結婚、再就職、出産、育休、職場復帰などを経験し
そのたびに少しずつ違う自分になっていたように感じます。

限界OLをしていたころは自己否定が激しく後ろ向きな人間でした。残業が多く人間関係も悪かったし、どうがんばっても明るい気持ちにはなれませんでした。家庭環境も最悪の時期で、心から安らぐ瞬間はなかった。
もちろん自分のことも好きではありませんでした。

専業主婦のときは夫との分人、育休中は子どもとの分人の割合が増えて、それは納得いくものではありましたがバランスが悪かったように思えます。

今、前向きに過ごせている理由は
・今の職場の人間関係が良いこと
・実家と適切な距離をとったこと
・仕事と家庭の両立がそれなりにできていること
・信頼できる家族と過ごしていること
などが挙げられると考えました。
まさに付き合う人間が変わると分人が変わるを実感しています。
そして今の自分は比較的好きです。
つらい時期もあったからこそ、どういうときの自分が好きかを考慮して環境を整えていきたいと強く感じました。

これからどうしていきたいか

今の仕事は問題なく続けられているものの、少しずつ考え方が変わってきています。仕事内容や、お給料や、家庭との両立などいろいろな要素はありますが、
ひっくるめて、仕事中の分人が嫌になってきている…と解釈しました。
具体的に転職するといったような勇気は出ないけど、新しいことに挑戦したり、なにかしら変化をつけたいと思っています。
だからこそnoteを書いてみたり、勉強を始めてみたり、いろいろ取り組んでみています。
元々保守的な人間だからこういう考えに至るまで時間がかかったけど、いい方向に人生が進んでいるような感覚があります。
新しい挑戦、つまり新しい分人をつくるということ。
今の自分を足場となる分人にして、維持しつつ少しずつずらすような形で変化していきたいと思います。
そして分人の構成比率が変わったとき、もっと好きな自分でいられたらいいなと思います。

自分のことを絡めに絡めた読書感想となりましたが、
いろんな側面から分人について書かれていてとても面白い本でした。
(顔が分人を統合する、分人の3ステップ、一人でいる時の私は誰?、分人主義的恋愛観など)
人間関係に悩んだり、自分探しをしたりしたい方におすすめします。
高校生の自分にも読ませたい、そんな一冊でした。

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