【読書感想文】『本質を捉えて自分で考える』~ずる賢さという技術-日本人には足りないメンタリティ-~

僕は「真面目な人が偉い」という道徳観の中で生きてきた。

小学校も、中学校も、高校も、1日も休むことなく登校した生徒は、終業式で皆勤賞を表彰されていた。記憶が定かになるが、幼稚園もそうだった気がする。

大学1年生の春、初めてのバイト先になる牛丼チェーン店の面接では、いつもよりハキハキと受け答えをし、使い慣れていない敬語で自分のことを説明していた。なぜなら、自分が誠実で、勤勉な人間だとアピールすることに必死だったから。それは19年ほど生きてきた中で「真面目な人が偉い」という考え方の中で生きてきて、自分にもしっかりとしみ込んでいた証拠だった。

4年が経った今もそれは変わらなかった。守田英正選手の著書と出会うまでは・・・。

守田選手は大卒で入団した川崎フロンターレ(J1)での活躍が評価され、ポルトガルへの移籍を勝ち取ると、先のワールドカップでは日本代表選手として強豪国を相手に堂々と戦って躍進に貢献した。

今では日本人の中でトップ選手の1人である守田選手だが、大学生になるまで世代別代表に選ばれていない。エリートではないにもかからず、なぜ日の丸を付けて世界の大舞台祭典でプレーすることができたのか。

それは、ずる賢さという技術をもっていたから。

日本に蔓延る「真面目な人が偉い」という道徳観について、文化としては誇るべきと前置きをしながらも、次のように述べている。

「でも、サッカーのような勝負事や競争社会においては、クリーンなやり方にとらわれすぎると、試合や人生の勝率が下がりかねません」。

流通経済大学、川崎で大きく成長して世界の舞台に羽ばたいた守田選手の言葉は、成長を必要とする僕の胸に突き刺さった。

これまで成長するために素直さが必要だと考えていた。人のアドバイスにしっかりと耳を傾けて、自分に還元していく。できることを増やし、質を高めていくためには、それしかないと思っていた。

しかし、本書を読むと、それだけでは足りないことを痛感した。

大切なのは自分の頭でしっかりと考えること。

「はい」「そうですね」と聞くだけでは、身になるはずのものも流れていってしまう。今までの僕はそうだったのかもしれない。歩んできた道を振り返ると、未熟な自分を気にかけてくれた人たちの顔が浮かんだ。両親はもちろん、進路の相談や小論文の指導をしてくださった高校の先生、卒論の添削をしてくれている大学のゼミの先生たちの優しさがあったからこそ、今の自分がある。

全く成長していないことはないが、歩幅は小さかった。

「最初からすべてを受け入れてしまうと、思考がストップして受け身になる可能性がある」。守田選手の言う通りだ。

アドバイスをもらったとき、ありがたみを感じながらも「1回頭の中で必要か不必要かをしっかりと考えたうえで、なおかつその判断に間違いがなかったか考える」ことを守田選手はしてきたと言う。

アドバイスを生かすも殺すも自分次第。そもそもアドバイスをもらえる前提が甘いのかもしれないが、自分で考えることが最も大切なことである。当たり前のことかもしれないが、あらためて学ぶことができた。

考えるのは、アドバイスや教えをどのように生かすのかだけではない。

自分にとって必要なのか、それとも不必要なのか。本質を捉えて考えることに意味がある。自分の未熟さに胸が痛くなりながらも、少しでも成長するために、本書に書いてあることが自分にとって必要な学びかどうかを考えながらページをめくった。

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