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オスの性分

 生物は自らの遺伝子を存続させるために交配をして子孫を残しているのだと言われることがある。しかしそうではない。遺伝子を持ち出して説明するのは、一つの説明原理、つまりそう説明されると分かった気になるからだ。
 
 自らの遺伝子を残すことが生命の目的なのだとすれば、交配によって相手の遺伝子を受け容れている時点で既に敗北している。その方が生存可能性が高かったので交配というシステムが現在でも存続している。
 遺伝子を残すために交配があるというのは話の順番が逆で、遺伝子の交配によって多様さと変化を生み出すことが自然環境の変化に適合しやすい仕組みだったということになる。もっとも、何を持って事前環境の変化に適合し易いと言うのかという問題はある。
 人類から見れば我々が地球上で一番繁栄した生物と思っているが、個体数や種類で言えば昆虫の方が圧倒的に多い。昆虫の種類は110万種と言われており地球上の種の過半数を超えている。さらに、その個体数に至っては未だに良く分かっていない(▼参考1)。蟻だけでも2京匹というのだから人類など足元にも及ばない(▼参考2)。
 遺伝子を残すことに成功している生物は人類なのだろうか。

 人類を含む哺乳類のように雌雄別々の染色体の交配が行われる生物を雌雄異体種というが、生物のなかにはひとつの個体で完結しているものもある。それを雌雄同体と言う。何で両性の特徴を同時に持つ生物がいるのか謎が多いようだが一部では研究成果が無い訳では無い(▼参考3)。
 雌雄同体は雄でも雌でも無いとは言え、どうやら遺伝子的にはメス側に寄っているようだから、有性生殖の生物にとってもオス的要素はおまけなのかもしれない。

 もし生物がメスの遺伝子を残す仕組みの表れなのだとしたら、オスの役割はメスの遺伝子を後代に残すための添え物程度のものということになりはしないか。場合によってはメスを守り、世話をする役割ということにもなるだろう。
 しかし蜂の場合を考えると、働き蜂はすべてメスで、一番えらいのは嬢王蜂。オスは繁殖用の材料的存在に過ぎない。ライオンの群れだってメスが主体で、オスは別行動。人間のオスだけが偉そうに振る舞っているのは、その方がメスにとって都合が良かったからということなのだろう。

 オスが強がったり戦闘好きだったりするのは、極端な話、メスに踊らされているだけということだ。夫があくせく働いて金を稼いで、妻が友人たちと優雅なランチを食す構図は、実は生物としては真っ当な姿のひとつのかも知れない。
 世界の中心がメスなのだとしたら、社会は女性のためのものであって、女性の社会活躍なんて言わずもがなということか。というかむしろ働き蜂が増えるのだとしたら、どこかで優美な暮らしを甘受している嬢王蜂がいるのかもしれない。
 オスはメスにかしずき貢ぐのがお似合いなのだ、きっと。

おわり



▼参考1

▼参考2

▼参考3


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