とある機械設計エンジニア

某自動車メーカーで技術者として働いています。早稲田大学基幹理工学研究科出身。 大学の勉…

とある機械設計エンジニア

某自動車メーカーで技術者として働いています。早稲田大学基幹理工学研究科出身。 大学の勉強ちゃんとやっておけばな。。。と後悔しています。後輩たちには同じ思いをしてほしくないので、「工学のプロを目指す」皆さんのために最初のステップをお手伝いできればと思います。

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  • これだけ!シリーズ

    工学系の勉強をコスパよく、タイパよくこなしたい皆さん向けに、これだけはやっとけ!というトピックを集めました。工学系の論文を一人で読めるようになるための知識を提供することを目的として記事を作成していきます。

  • 設計屋のひとりごと

    適当にあったことやったことをつぶやきます。

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第15回 これだけ!論文を読んでみよう(線形代数)

 前回は3次元のばねマス系の連成振動の解について解説しました。  今回は今まで学んだ内容の実践、というほど仰々しいものではないですが、線形代数がどのように使われているのかを、論文を読みながら見ていきましょう。 1.今回紹介する論文について 今回紹介するのはこちらの論文。 Numerical modeling of traffic-induced ground vibration Mohannad Mhanna, Marwan Sadek , Isam Shahrour,

    • 最近、技術士の勉強をしています。少しでもスキルアップに繋がることをしたいのと、邪な話ですが資格手当が出る企業があるとのことで、転職の際にも嬉しいなと思ってのことです。今年中に技術士補を取得して、その間にあった体験や勉強したことなどを記事にしたいなと思います。というつぶやきでした。

      • 第14回 これだけ!連成振動を求めよう(線形代数)

         前回は行列の対角化の方法について解説しました。  今回は行列の対角化を活用して、実際に3次元のばねマス系の連成振動の解を求めていきます。これが解けるようになるために13回も解説を続けてきたつもりなので、皆さん最後のひと踏ん張りです! 1.問題提起。3自由度の連成振動 以下のようなばねと質点が繋がった系があります。この時各質点の変位$${x_{1},x_{2},x_{3}}$$を求めてください。…というか一緒に求めていきましょう。 まずは運動方程式を打ち立てます。運動方

        • 3DプリンターとArduinoで電動アシスト技術を再現したい

           最近思うことがある。  私は自動車メーカーに勤めているわけだが、確かに自動車は人々の生活を便利にしている。遠くに移動できる、重い荷物を楽に運べる、車中泊にレジャーに用途は無限大。しかしながら自動車にはいまだ解決できない課題がある。一つはライフサイクルにおける環境負荷。もう一つは使用者への金銭的な負荷。そしてもう一つは生身の人間にとって車は依然として凶器であるという点である。  自動車メーカー各社は血眼になって解決策を探っている。弊社も例外ではない。持続可能な社会を実現する

        第15回 これだけ!論文を読んでみよう(線形代数)

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        • これだけ!シリーズ
          15本
        • 設計屋のひとりごと
          3本

        記事

          第13回 これだけ!行列の対角化(線形代数)

           前回は固有値と固有ベクトルの考え方について解説しました。  今回は行列の対角化について解説します。これを学ぶことでいよいよ連成振動を解析的に解くことができるようになります。もうひと踏ん張り頑張りましょう。 1.対角行列はどうやってだすん? 固有ベクトルと固有値の定義の式が原点です。 $$ AX=\lambda X $$ 行列$${A}$$がn次の場合、上式を満たす固有値$${\lambda_{1}\dots\lambda_{n}}$$と固有ベクトル$${u_{1}\

          第13回 これだけ!行列の対角化(線形代数)

          第12回 これだけ!固有ベクトルの考え方(線形代数)

           前回は固有値と固有ベクトルの求め方を解説しました。  今回は固有ベクトルと固有値の考え方、つまりこれらの概念がどう大事なのかを解説します。前回の内容が理解できることが前提なので、前回の内容をしっかり復習しましょう。 1.固有ベクトルで表現できること 線形空間におけるn次行列$${A}$$による線形変換を考えます。この時、行列$${A}$$の固有ベクトルがn個があるとしましょう。そしてこの固有ベクトルはたがいに直行(線形独立)でしたね。つまり、線形空間における任意のベクト

          第12回 これだけ!固有ベクトルの考え方(線形代数)

          第11回 これだけ!固有ベクトルと固有値(線形代数)

           前回は線形空間と線形変換の性質について解説しました。  今回は固有ベクトルと固有値とは何か、そして固有方程式の解き方について解説していきます。 1.固有ベクトルと固有値実は前回固有ベクトルについてちらっと話しましたが、今度は違う例で再度説明します。次のような線形変換を考えましょう。 $$ A= \begin{pmatrix} 3&5\\ 1&-1 \end{pmatrix}\quad \overrightarrow{r}= \begin{pmatrix} 5\\1 \

          第11回 これだけ!固有ベクトルと固有値(線形代数)

          第10回 これだけ!線形空間と線形変換(線形代数)

           前回は何を目的にこの講座を投稿しているのかについて解説しました。  今回は線形空間と線形変換の性質について解説していきます。 1.前置き。線形空間 線形変換についていきなり説明する前に、線形変換が行われる空間について説明します。  ベクトル$${\overrightarrow{a},\overrightarrow{b},\overrightarrow{c}}$$について次のような式を考えましょう。 $$ \overrightarrow{x}=k\overrightar

          第10回 これだけ!線形空間と線形変換(線形代数)

          なぜ「これだけ!」シリーズを始めたのか。もやもやとした私の夢

           今年の2月中旬から「これだけ!」シリーズの第一弾として線形代数学の講座を投稿し始めました。早くも9回目を迎えいよいよ終盤、終わりが少しずつ見えてきたという状況です。そして徐々に見てくださる方やスキを押してくださる方が増えてきてうれしい限りです。 私の夢  私には夢があります。夢というよりかは使命感といった方が正しいかもしれません。私の夢とは、日本のこれからの若者の学力を向上させることです。特に工学分野においてその最前線を引っ張るような若者を育成したいです。それには会社に

          なぜ「これだけ!」シリーズを始めたのか。もやもやとした私の夢

          第9回 これだけ!行列式の使い道。講座の目指すところ(線形代数)

           前回は行と列の基本変形を用いた行列式計算方法について解説しました。  前回の最後で「次回はなんで行列式を解く必要があるのか、その活用法の一端にふれましょう。」と宣言した手前、どのように説明するか悩んでいましたが、この際私たちが目指すところを洗いざらい話しちゃえ、ということで、線形代数の講座の最終的な到達点をお伝えしたうえで、行列式が何に使われているか、この先何を学ぶ必要があるのかを、紹介しましょう。  なお今回は高校物理の内容が出てきます。なるべくわかりやすく説明するつも

          第9回 これだけ!行列式の使い道。講座の目指すところ(線形代数)

          第8回 これだけ!行と列の基本変形を駆使して行列式を解こう(線形代数)

           前回は行列式の余因子展開を使った求め方について解説しました。  今回は列基本変形を用いた行列式計算方法について学びましょう。 1.行列の基本変形をもう一度学ぼう かなり前の回の復習です。行列の行基本変形ではどんな変形の仕方がありましたか? 上の3つの動作があるのでしたね。覚えてないっす!という方は↓のリンクから行列の行基本変形の方法と活用方法を学びましょう。 行列の変形では列の変形はいけないこととされていましたが、行列式では列の変形も行うことができます。以下の法則を

          第8回 これだけ!行と列の基本変形を駆使して行列式を解こう(線形代数)

          第7回 これだけ!余因子展開で行列式を求めよう(線形代数)

           前回は行列式の基本的な計算方法について解説しました。  今回は行列式の余因子展開を使った求め方を学びましょう。 1.余因子展開とは 前回の復習です。3次行列の行列式はどう計算できますか? $$ \begin{vmatrix} a_{11}&a_{12}&a_{13}\\ a_{21}&a_{22}&a_{23}\\ a_{31}&a_{32}&a_{33} \end{vmatrix} =a_{11}a_{22}a_{33}+a_{12}a_{23}a_{31}+a_{

          第7回 これだけ!余因子展開で行列式を求めよう(線形代数)

          第6回 これだけ!行列式の基本    (線形代数)

           前回は転置行列について解説しました。  今回から行列式について解説していきます。重要な概念であり、工学的にも重要な「固有値」や「固有ベクトル」を求めるために必要です。なので数回に分けて丁寧に解説していきます。今回は2,3次行列の行列式の求め方を学びましょう。 1.行列式とは?What the f*ck?って感じだと思います。詳細は次の節で解説しますね。とにかくまず覚えてほしいのは以下の3つの性質と表記の方法。 行列式は行と列の数が同じ正方行列でしか定義できない(正方行

          第6回 これだけ!行列式の基本    (線形代数)

          設計者が3Dプリンターで遊んでいる件

          最近はまっていることがあります。 それが3Dプリンターを使った工作です。 買ったのは下の(おそらく)中華製の3Dプリンター。これがびっくりです。 家に届いて開封したらすでに組み立て済みとなっていて、電源をつないだらすぐに印刷開始できました。 このプリンターにはsdカードが同封されており、その中に印刷できるモデルがいくつかあったので「dragon」という名前のファイルを選択し、印刷開始。 出来上がりがこちら。 かわい……い?塗装してないからだろうか、なんとも目玉が不気味

          設計者が3Dプリンターで遊んでいる件

          第5回 これだけ!転置行列    (線形代数)

           前回は掃き出し法を用いた逆行列の計算と逆行列の活用方法について解説しました。 前回は特大ボリュームだったので、今回は少し箸休めして、転置行列の性質についてゆるく学んでいきましょう。 1.転置行列って?転置行列$${A^T}$$は、元の行列 $${A}$$の行と列を入れ替えた行列です。つまり、行列$${A}$$のi行j列の要素$${a_{ij}}$$が、転置行列 $${A^T}$$のj行i列の要素となります。具体的には行列$${A}$$が次で表される時、 $$ A= \

          第5回 これだけ!転置行列    (線形代数)

          第4回 これだけ!掃き出し法で逆行列を求めよう(線形代数)

           前回は2次行列の逆行列の求め方について解説しました。 今回は3次行列の逆行列の求め方と、逆行列の工学分野での活用例を学びましょう。 1.その前に…行列の基本変形を学ぼう 話の腰を折るようですが、行列の変形方法を知らないと掃き出し法が使えないので、まずは行列の変形方法を知りましょう。  行列の基本変形には以下の3つの操作があります。  何を言ってるんだ?となるかもしれませんが、実は皆さんすでにやり方を知っています。それを今から解説します。まず例として次の連立方程式を考え

          第4回 これだけ!掃き出し法で逆行列を求めよう(線形代数)