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ポークをワインで煮込んだら。

冷えてくると恋しくなる煮込み料理の中でも、洋風の王様といえば、ごろんと塊お肉がお皿に鎮座する、ブフ・ブルギニヨン。いわゆる牛肉の赤ワイン煮込みかなと思います。


🍲冬の楽しみブルギニヨン

毎年、冬になるとつくっていますが、つくるとなると、最低でも煮込みに3時間くらいはかかってしまい、買い物の準備やなんやを考えると、半日がかりの大仕事。

とはいえ分量的には一度に、4、5皿分につくれるので、煮込みに時間をかけても、そのぶん報われる料理だなと思ってます。多めにつくって、小分けして冷凍しておけば、何度かにわけて楽しめるありがたいメニューでもあるのです。

🥩牛がない

その日は特に約束のないお休みの日。それならば、牛肉を煮込もう。調理時間の問題は心配ご無用。だって予定がないんだから。そう思って、近くのスーパーにいったのですが…。あれっ。

いつも売ってる牛肉のブロックがない。さらにいうなら牛すじもない。

煮込みに使う牛肉は、本来のフレンチなら頬肉やすね肉なのですが、なかなか普通のスーパーなんかでは見かけないので、ふだんはロースト用の赤身のももブロックをメインにしています。

ただ、もも肉は煮込むとほろほろ崩れるあの繊維っぽい感じは出るものの、お店で食べるブルギニヨンのお肉にある、とろける脂やゼラチン的なとろみがありません。なので、その役目を一緒に煮込むすじ肉で再現してるんですね。

しかし…。今回に至っては、ほろほろも、とろとろもどっちも売ってないという大ピンチ。あきらめるしかないか…。すっかり口が赤ワイン煮込みの口になってしまってるのに…。

🐽牛がなければ

そのとき目に飛び込んできたのが。

本日特売。

でも牛じゃない。豚肉。だけどブロック。

豚の角煮ってあるじゃないですか。考えてみれば、あれって味付けは醤油だけど、バラ肉でつくれば脂のところがとろとろするし、もう少し赤身の多い肩ロースなんかでつくれば、ほろほろもあります。

これはいけるんじゃないか。根本的なことをいうと牛じゃないから、ブフではなくなるけど、まあいいや。

だって、きょうは煮込む気満々なんだから。この煮込みたいDESIREは、もう誰にも止められない。だって、自分で止められないんだから。

というわけで、豚肉のブロックで赤ワイン煮込みをつくることに。いうなれば、ポーク…もとい、フランス語風に読むならポールのブルゴーニュ風煮込み、ポール・ブルギニヨンです。

🐽ポール・ブルギニヨン

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お肉は豚でもダブル使い。肩ロースはほろほろ寄り、バラ肉はもちろんとろとろ要員です。

🐽材料(4皿分)

豚肩ロースブロック…500グラム
豚バラブロック…500グラム
にんにく…1片
玉ねぎ…1個
にんじん…小1本
セロリ…1/2本
セロリの葉…1本分
バター…10グラム
赤ワイン…2カップ
水…3カップ
フォンドボー…小袋2
トマトペースト…小袋1
黒こしょう…適量

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🔪焼いて煮込もう

まずは野菜の準備。いわゆる香味野菜、かっこよくいうとミルポワさんたちです、ボンジュール。

🥕ミルポワに焼色を

セロリは葉を取り置いてから、玉ねぎ、にんじんとサイズを揃えてサイコロ状に切ります。

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お鍋でスライスしたにんにくを炒めて、香りを出します。

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バター半量を足して、切り分けた香味野菜を投入。

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このとき、忙しくかき混ぜたりはせず、動かさずじっくりと焼きます。底になった面に焼き色がついたら、底から返して全体にこんがりとした焼き色が付けばOK。水分が抜けて凝縮した野菜の甘さに、焼色の香ばしさが、煮込みに複雑味をプラスする要素のひとつです。

🐽お肉は完成図より大きめに

続いてお肉。

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煮込んで縮む分を計算して、大きめの角切りにします。

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フライパンを熱して、油を敷かずにお肉を入れ、お肉自身の脂でしっかりと焼き色が付くまで焼きます。

表面がしっかり焼けたら、香味野菜のお鍋に合わせておきます。

🔥旨味をファイヤー

お肉を焼いた旨味も逃しません。フライパンに残った余分な脂をキッチンペーパーで軽く拭ったら、赤ワインの半量を入れて火にかけます。

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加熱していくとワインのアルコール分に火がつきますが、すぐに燃え尽きるので、そのまま待ちます。やけどには十分注意して、慌てないようにしてください。

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火が消えたら、フライパンの旨味をこそぎ落とすようにしながら、すこし煮立てます。

🍲さあ煮込みます

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香味野菜とお肉のお鍋に、フライパンの赤ワインを移し、残りの赤ワイン、水、フォンドボー、トマトペースト、セロリの葉を加えます。

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最初は強火で火にかけ、沸騰してきたら出てくる灰汁をレードルですくいとります。

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灰汁が落ち着いたら、弱めの中火にしてそのままお肉に竹串がすっと通るまで煮込みます。

灰汁取りをするのかしないのかという点には諸説あると思いますが、煮はじめの大きな灰汁は取っておくと、火を弱めてからはそれほどたくさん出るものでもないので、あとはどうでも気になれば取る、くらいでいいかなと思います。

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目安は60分。お肉の柔らかさによって、調節してください。

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お肉が柔らかくなったら、取り出します。

🍲ソースを仕上げます

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煮汁を濾して、ソースを抽出。取り除いた香味野菜はお肉の旨味をしっかり吸っているので、フードプロセッサにかけて、冷ましてから冷凍しておくと、カレーやミートソースなどの煮込み料理の旨味出しに使えます。

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濾したソースを火にかけて煮詰めます。

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6、7割まで煮詰めて味を見て、水っぽくなく、しっかり旨味が詰まっていたらOKです。

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ボウルに移したらバットに載せ、周囲に氷水を張って冷やします。冷やすときは、スプーンを使ってソースを下から上へ、すくっては落とす感じで混ぜると早く冷やせます。

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冷えると表面に脂が。豚バラって脂すごいですもんね。これを取り除きます。

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豚式デミグラスソースのできあがりです。

ひと口味見。うん、おいしい。濃厚な味に、赤ワインとトマトの酸味が加わって、旨味たっぷりです。

さあ、あとはこのソースとお肉を合わせて、温めれば…。

🐽豚肉の赤ワイン煮込み完成

このとおり。豚肉の赤ワイン煮込みになりました。

ごろんとしたお肉が主役の盛付は、いわゆる洋食屋さんのビーフシチューとはひと味違う、フレンチの肉料理スタイル。親しみのある豚の角煮を洋風にアレンジしたら、こんなひと皿に変身するんじゃないでしょうか。

ナイフをいれると、繊維に沿ってお肉がほろほろほぐれます。もちろんバラ肉のほうは脂がとろとろ。長時間の煮込みで濃厚なワイン色に染まるうえ、味付けもしっかりして複雑なので、いわれなければ豚肉と気付かない人もいるかもしれません。

つくった本人も、もし知らずに出されたら、赤ワイン煮込みイコール牛肉という先入観から、ブフ・ブルギニヨンだと思って食べてそうです。

そして豚の魅力といえばコストパフォーマンス。牛肉と比べると、お財布にも優しいごちそうメニューが誕生しました。

これからますます冷え込んで、季節は冬本番へと向かいます。もしよかったら、こんなひと品も試してみてはいかがでしょうか。おもてなしのメインに、赤ワインの隣にこんなひと皿があれば、きっと喜んでもらえるはず。

素敵なおもてなしになりますように。


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