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ニューヨーク、犬も歩けば…

上の写真はペルー出身アーティストによる「13の月」(13 Moons)という題名の作品。2023年4月末まで展示中。詳細は下記に記載。

今回のテーマ: 美術館
by 萩原久代
 
ニューヨークと言えばメトロポリタン美術館をはじめ、近代美術館(MOMA)、グッゲンハイム美術館、ホイットニー美術館、ブルックリン美術館など数多くの美術館がある。どこも卓越した美術作品が展示されていて甲乙付けがたい。書き始めるとキリがないので、美術館そのものではなく、ニューヨークらしい美術鑑賞のアイデアをご紹介したい。
 
ニューヨークではアートが身近にあり、街歩きしながら楽しむことができる。犬も歩けばアートにあたる。お散歩しながら美術鑑賞、これまた楽し、である。
 
まず、ギャラリーを見てまわる。ニューヨーク市内には1,000を超えるギャラリーがあるという。マンハッタンなら、チェルシー、トライベッカ、ソーホー、イーストビレッジの周辺にギャラリーが集中している。特にチェルシー地区だと、10以上のギャラリーが一つのビルに入居しているところがある。また、隣り合わせにギャラリーが立並ぶ通りが複数あるので、100メートルも歩けば10件ほどのギャラリーに立ち寄れる、といった具合だ。
 
商売でやってるギャラリーなので、展示作品には値段がついている。価格リストを誰でも見られる。コンテンポラリーアートが中心だが、ピカソやポップアートの大物(ジャスパー・ジョーンズ、アンディー・ウォーホールなど)の作品が展示されることもある。一方、無名の新人アーティストの作品を多く展示するギャラリーもある。彼らだって将来は大物になるかもしれない。今3万円で買える絵が、10年後には300万円になるかも!?とワクワクする。購入しなくても、コレクターになった気分が味わえる。(本当にそうしたコレクターもいるが)
 
ギャラリーの場所と展示作品リスト(例えば、https://www.artforum.com/artguide/place/new-york)をチェックして、お天気の良い日に散歩を兼ねて歩いてみよう。
 
もうひとつ、私が好きなアート散歩は、公園や広場などに設置された公共アート(public art)を見ることだ。ニューヨーク市公園・リクレーション部(Parks & Recreation) が、ニューヨーク市民のための野外美術館を目的に、独自に展示スペースをアーティストに提供するものだ。野外なので作品は彫刻やインスタレーションだが、ユニークな作品が楽しめる。それらは半年〜1年程度の期間で数十ヶ所の公園や広場などに展示される。
 
冒頭写真の球形の作品は、マンハッタンのニューヨーク郡・高等裁判所の前にある公園(Thomas Paine Park)と裁判所前の広場に2023年4月末まで展示中だ。ペルー出身アーティストによる「13の月」(13 Moons)という題名の作品で、ペルーの高原で違法に伐採されたユーカリの木の残った根部分を集めて製作されたという。
 
世界中のアーティストが集まるニューヨークだから、野外美術館に選定されたアーティストの国籍や経歴も多彩だ。どこにどんな作品があるかは、公園・リクレーション部のサイト(https://www.nycgovparks.org/art)に公開されている。
 
野外美術館の作品は、チェルシーのハイライン(廃線となった高架線を緑地化した線上公園) の数カ所でも展示されている。それらを見ながらハイラインをブラブラ歩き、チェルシーにあるギャラリーを覗いて、近くのホイットニー美術館に行く、というルートは「私のイチオシ」だ。ニューヨークらしいアート三昧の時間と言えましょう。その上、チェルシーにはオシャレなレストランも多い。アートの後には美味しい夕食が待っている。週末のデートにピッタリ!ではありませんか。


 
 
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萩原久代
ニューヨーク市で1990年から2年間大学院に通い、1995年からマンハッタンに住む。長いサラリーマン生活を経て、調査や翻訳分野の仕事を中心にのんびりと自由業を続けている。2010年からニューヨークを本拠にしながらも、冬は暖かい香港、夏は涼しい欧州で過ごす渡り鳥の生活をしている。コロナでそのリズムが狂ってなかなか飛べない渡り鳥となっている。

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