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HOUSE OF GUCCI 所感(ネタバレ含む)

私は取り立ててグッチファンではないのだが、昨年から話題となっているこの映画、ファッションに所縁のある友人に誘われて観ることに。グッチに関してはあまり詳しくなく、グッチ家がトスカーナ(フィレンツェ)出身であること、90年代に血生臭い“お家騒動”があったこと、今ではグッチ家の人間はブランドには誰もいないこと…など、いろいろ勉強になったので、早速所感として残しておきたいと思う。

イタリア語訛りの英語

監督が巨匠リドリー・スコットということで、キャストもレディガガ、アル・パチーノ、ジャレッド・レト、サルマ・ハエック…ととても豪華。言語は英語だが、かなりイタリア訛りでそれぞれのキャストが話しているのと、ところどころのイタリア語のフレーズが臨場感を増している。

パトリツィアの演出

各キャストの役柄への演出もかなりの力の入れようで、パトリツィア(レディ・ガガ)に関しては結婚前の20代の風貌から結婚後、義父が亡くなり夫のマウリツィオと共にグッチの実権を握り始める80年代と、ファッションの変遷が上手く描かれている。特に80年代、マウリツィオがパトリツィアの本性に気が付き2人の関係が壊れ始めた矢先の彼女のヘア、メイク、ファッションが上手く80年代を演出しているのはもちろん、体型までも年相応の雰囲気を上手く演出していて「ああこんなイタリアおばさん、本当にいる」という臨場感に溢れているのだ。弁護士経由で離婚を突きつけられる辺りは、表情や体型、所作などでちょうど40代あたりの女性の物哀しさを上手く表現している。これが非常に良かったと思う。

レディ・ガガはイタリア系なのでそれもあってこの配役に選ばれたのかと思っていたが、この演技や風貌に対する役の入れ込みようを見て、それだけではないのかもしれない、と素直に感じるところだ。

マウリツィオの変遷

ストーリー序盤の、弁護士を目指している頃のマウリツィオの風貌も見逃せない。ビッグフレームのメガネ、地味めのセーターにジャケットという品は良いけれど少しダサくて真面目な学生という素性を上手く描いていて、アダム・ドライバー(マウリツィオ・グッチ)のウブな演技もそれに輪をかける。これが80年代には、父親の死去に伴いスタイリッシュなビジネススタイルに変遷していくのも一つのポイント。

サルマ・ハエック

番外編トピックとしては、現在グッチが所属するケリンググループの会長の妻サルマ・ハエックが占い師として出演している。この配役が怖いほどハマっている。

そしてソフィア・ローレン、アナ・ウインター、トム・フォードのそっくりさん(?)も登場するのでここはお楽しみに。

マウリツィオの経営的素質、そしてパトリツィアはなぜ夫の殺害を決めたのか?

ストーリーとしては、マウリツィオが経営的素質がなく結果的に経営から外されることになるが、どういうくだりでマウリツィオがそう判断されたのか?その辺りがあまり描かれていない。また、パトリツィアが画策してマウリツィオは殺されてしまうが、それを占い師が嗾(けしか)けた場面はあるものの殺意を抱き決断するまでの経緯は含まれておらず、その辺りは個人的には物足りなさが残った。

が、総じては長めの上映時間(2時間37分)でグッチの約20年をこれだけコンパクトにまとめているので、満足感としては上々。役者も勢揃い、個性の強い俳優が実在の人物に寄せて話す言葉も風貌も臨場感があって、ファッションだけでなくイタリア好きな方も楽しめるのではないかと思う。私はといえば、改めてトスカーナを由来とするメゾンが多いことにもイタリアへの敬意を感じ、もっとイタリアブランドを知りたくなり、勉強したくもなった。そんな映画である。

ハウスオブグッチ 予告編

(C) 2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.


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