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本は巡り、体験は連なる(映画「ポラン」のこと)


先日、古書店・ポラン書房の閉店を追ったドキュメンタリー「ポラン」を見にK'scinemaへ行ってきました。

私は以前、ポラン書房の近くに住んでいてよく足を運んでいました。閉店を見届けられなかったのが心残りだったので、こうして映画で見る事が出来て、本当によかった。

ポラン書房があった大泉学園には長いこと住んでいたので、良い思い出も苦い思い出もたくさんあります。そんな中、あのお店があったのは、今思うと救いでした。
いろんなものが置いてあり、少し暗くて、手巻き時計の音が(店の広さの割に)だいぶ大きいポラン書房。すごい引っ込み思案なので特にお店の方と話したわけでもなく、山ほどの本を買ったわけでもないですが、ふらっと立ち寄って、文庫本とかを買って自転車で帰る、という流れが好きでした。あそこは私にとって、気持ちのシェルターだったんだと思います。

私は書店という場所や本というリアルな物が好きです。
我ながらその理由がはっきりわからなかったんですが、映画の中で店長の石田さんが(うろ覚えですが…)「本をめくるというのは、ただ読むだけではなく、“体験”になる」というようなことを話していて、まさにそれだ!という気持ちになりました。
私はポラン書房に行って、何となく「へー、こんな本もあるんだ」と思ったり、本がたくさんある空間に身を置くという“体験”が好きだったんだと思います。あまりにも日常だったので、当時はそんなふうに意識していませんでしたが…。

閉店の理由はコロナによる売り上げ減少が大きかったとのこと。こんな形であの場所がなくなるなんて思いもせず、私は家を引っ越していたので閉店を見届けることも出来ず、ずっとモヤモヤしていました。それだけに、この映画を見て自分の中である種の区切りがついた気がします。

はー、人生いろいろな時間があったな。だけどこうして、点と線がふっと繋がる瞬間って素敵だ。上映中、何度も泣いてしまったな。

ポラン書房さん、お世話になりました。そして中村洸太監督、この映画を作って下さってありがとうございました。



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