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#299 事の顛末がわかったところで…

今日も坪内逍遥の『当世書生気質』を読んでいきたいと思います。

『当世書生気質」』はいよいよ最終回に突入!任那くんからの手紙を読んでいる小町田くんのところに、倉瀬くんが登場!田の次のことで話があるから、応接所へ来いと呼びつけます。行ってみると、そこにいるのは守山くん。久々に会った三人は、服装に関する議論で、桐山くんにコテンパンにやられた須河くんのことで盛り上がります。そんな無駄話をさんざんしたあと、ようやく小町田くんが、「僕に用事でもある訳ですか」と聞きます。そして、守山くんは、衝撃的な内容を告白します。何と、自分の妹は、田の次だと言うのです!そして、そのきっかけは、やはり上野戦争だというのです。降りしきる雨と、猛火の勢いの中、顔鳥の兄貴・全次郎が、三芳さんの妾のお秀と、その子・お新を連れて、混乱に乗じて逃げようとしているところから始まります。お秀は駆け逃げてる最中に、前方に倒れ、その時、お新を投げ出してしまいます。必死に奪うが如く抱きかかえ、先を走る全次郎に追いつこうとした時、全次郎の額に弾丸があたり、全次郎は亡くなってしまいます。髪も服も乱れ、息も絶え絶えの状態で逃げ延びると、なんと抱えていた我が子がお新ではありません!どうやら、転んでお新を投げ出してしまった時に、別の子供を抱え上げてしまったようなのです。とにかく、いま、自分が抱えている子供は誰の子供なのか、それを確認しなければ、お新を探し出すことはできません!臍の緒の包みを開くと、守山亮右衛門の娘・そでと書かれてます。そこから、お秀の中の天使と悪魔がささやき始めます。そして、お新の腰についてる巾着を奪い取って、置き去りにします。その後、お秀は吉原の青楼に身を沈め、そこからは悲運の連続…結婚するも夫と死別、多くの職を経て、ついに顔鳥の新造となります。そして、顔鳥の来歴を聞き、顔鳥こそが自分の子供であることがわかり、互いに涙。ところが、お秀は、ここでよからぬことを考えます。顔鳥は自身が持っている短刀の家紋(守山家)の出であると勘違いしているわけですが、そのまま守山家の娘として通そうと提案するのです。この話をこっそり聞いていたのが源作さんで、どう考えても、お秀さんが間違えて拾った女の子は田の次で違いないのだが、本人がいなけりゃどうにもならない!

魚心[ウオゴコロ]ありゃア水心[ミズゴコロ]、なにも余計な邪魔はせぬが、と味にからんで強請[ネダリ]かけられ、(第十五回を見よ。)お秀も殆[ホトン]ど困り果[ハテ]て、余儀なく八円ほど金子[キンス]を遣はし、つひに源作をも味方に引込み、第十八回に見えたる如く、彼[カ]の広告を口実にして、お常が住む家まで尋ねゆきしが、源作図らずも途中に於て、お芳の身の上を聞たるより、俄[ニワカ]に本善[ホンゼン]の心に復[カエ]りて、始終逐一に裏切して、お芳の田の次に告[ツゲ]たりしかば、お秀の謀計[ハカリゴト]喰[クイ]ちがひて、殊には思ひよらぬ元の旦那、三芳庄右衛門に面会して、さすがの鉄面皮悪婆[ズウズウシキアクバ]といへども、争[イカ]でか胸を冷さざらん、終[ツイ]に身の罪を白状して、そのこしかたの事実を語りぬ。
友「オイオイ車夫[ゴスケ]。ここらでいいのだ。話に浮れて大変に来過た。」
車夫「ヘイさよでございましたか何方[ドチラ]へ。」
友「イヤ待つてくれ。一旦事務所へかへらう。親父は宅[タク]に待てゐるもしれない。」
車夫「それではお宅へ。」
友「ウン。かへつてくれ。」

ということで、このつづきは…

また明日、近代でお会いしましょう!

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