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#302 ところで、ほかのみんなはどうしたの?

今日も坪内逍遥の『当世書生気質』を読んでいきたいと思います。

『当世書生気質」』はいよいよ最終回に突入!任那くんからの手紙を読んでいる小町田くんのところに、倉瀬くんが登場!田の次のことで話があるから、応接所へ来いと呼びつけます。行ってみると、そこにいるのは守山くん。久々に会った三人は、服装に関する議論で、桐山くんにコテンパンにやられた須河くんのことで盛り上がります。そんな無駄話をさんざんしたあと、ようやく小町田くんが、「僕に用事でもある訳ですか」と聞きます。そして、守山くんは、衝撃的な内容を告白します。何と、自分の妹は、田の次だと言うのです!そして、そのきっかけは、やはり上野戦争だというのです。降りしきる雨と、猛火の勢いの中、顔鳥の兄貴・全次郎が、三芳さんの妾のお秀と、その子・お新を連れて、混乱に乗じて逃げようとしているところから始まります。お秀は駆け逃げてる最中に、前方に倒れ、その時、お新を投げ出してしまいます。必死に奪うが如く抱きかかえ、先を走る全次郎に追いつこうとした時、全次郎の額に弾丸があたり、全次郎は亡くなってしまいます。髪も服も乱れ、息も絶え絶えの状態で逃げ延びると、なんと抱えていた我が子がお新ではありません!どうやら、転んでお新を投げ出してしまった時に、別の子供を抱え上げてしまったようなのです。とにかく、いま、自分が抱えている子供は誰の子供なのか、それを確認しなければ、お新を探し出すことはできません!臍の緒の包みを開くと、守山亮右衛門の娘・そでと書かれてます。そこから、お秀の中の天使と悪魔がささやき始めます。そして、お新の腰についてる巾着を奪い取って、置き去りにします。その後、お秀は吉原の青楼に身を沈め、そこからは悲運の連続…結婚するも夫と死別、多くの職を経て、ついに顔鳥の新造となります。そして、顔鳥の来歴を聞き、顔鳥こそが自分の子供であることがわかり、互いに涙。ところが、お秀は、ここでよからぬことを考えます。顔鳥は自身が持っている短刀の家紋(守山家)の出であると勘違いしているわけですが、そのまま守山家の娘として通そうと提案するのです。この話をこっそり聞いていたのが源作さんで、どう考えても、お秀さんが間違えて拾った女の子は田の次で違いない!そこで、源作さんはお秀を強請り、計画に乗ろうとしますが、心を改め、田の次に真実を告げ、お秀の悪事はバレて、第18回の顛末となるわけです。と、守山くんは、ここまでの話を小町田くんに説明して、人力車は守山くんの事務所に到着します。そして、守山親子、小町田くん、倉瀬くん、三芳さん、園田さん、お常さん、田の次などと祝宴を開いて、めでたし、めでたしとなります。

本篇の眼目已に終りぬ。骨髄の趣向は已に尽きぬ。また説[トキ]いださん要なけれど、僅[ワズカ]に説洩[トキモラ]せし条[クダリ]を拾ひて、ここに顚末[モトスエ]を結了[ケツリョウ]すべし。
継原青造は、多年放蕩の報[ムクイ]しるけく、必至に困窮の体[テイ]となりしも、守山友芳が笑止[キノドク]に思ひて、かつ継原が学才あるをば、甚だ惜みける由[ヨシ]あるゆゑ、後[ノチ]におのが家に招き寄せて、さながら食客[ショツカク]のやうになして、常にその扶助[タスケ]をなしたりしかば、継原もいたくその義に恥て、翻然行為[ホンゼンオコナイ]をあらためつつ、再び学校に通学して、専ら学問に心を凝らしぬ。その行末[ユクスエ]は知る由なけれど、目下の有様を評する時にはhopeful[ホウプフル](末たのもしし)と守山もいひたり。
山村も継原と同様の有様なりしが、性来弁才に長ぜし故か、いつしか電信の糸に引かれて、遠くある地方[イナカ]の学校におもむき、その教頭[キョウシガシラ]に任ぜられしとか。地方[イナカ]に学者乏しとはいひながら、かかる平凡学者を教頭[キョウトウ]にするとは、ああ地方憫[アワレ]むべし、と倉瀬が時々に歎息せしとか。

ということで、このつづきは…

また明日、近代でお会いしましょう!

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