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受け継ぐ営み つなげる「心」━あそ未来創造塾 最終プレゼンテーション

あそ未来創造塾に3期生として参加しています。
昨年7月からスタートして、この3月でいよいよ最終プレゼンテーションとなりました。

ここでは、プレゼンに向けた内容のまとめと、語りきれない部分について補足として綴っています。

農業を軸にした3つの事業プランと、その中心に据えるコンセプトについてまとめました。


あそ未来創造塾とは

公益財団法人 阿蘇地域振興デザインセンター主催のあそ未来創造塾。阿蘇地域の広範に渡る地域課題を民間の個人事業者、ローカルイノベーターの発掘によって解決していこうという取り組みです。
産・官・学・金の連携により、地域に新しいサプライチェーン・バリューチェーンを生み出すことを目標にしており、とりわけ”地域課題の解決”に重きを置いたCSV(creating shared value)の観点に基づく事業創出を応援してくれる学びの場です。
塾生はこれまで地域課題と企業課題を結びつけた事業コンセプトの考え方や、実際のCSVに基づく事業展開の事例、他の地域における未来創造塾塾生達の取り組みについて学んできました。
いよいよあそ未来創造塾も最後のカリキュラム、塾生たちによるそれぞれの事業プランの最終プレゼンテーションを迎えます。

まずは自己紹介

私は今、南阿蘇村地域おこし協力隊 新規就農プロジェクトに参加しています。
2023年に家族4人で熊本県の南阿蘇村に移住して、新たに農業を始めるための研修を受けつつ、南阿蘇村農業みらい公社にて村内の耕作放棄地の有効活用のための業務に従事しています。

あそ未来創造塾への参加も、地域おこし協力隊として活動する中でご紹介いただいたものですが、将来的に独立就農を目指す上で、思い描く営農ビジョンを具体的にしていくための大きな刺激となりました。

最終プレゼンを前に、これまでの事業プランをもう一度まとめ直すとともに、プレゼンテーションの中では伝えきれない部分についての補足として、ここに綴らせていただきます。

”つなげる”農業:新規就農

様々な業種の方が集うあそ未来創造塾ですが、私が手掛けたいのはまず”農業”です。
現在は独立に向けた準備期間中です。

一口に農業と言っても形は様々ですが、私は多品目栽培農家として就農する予定です。
単一の品目に絞らず、複数の野菜を1年を通じて栽培します。季節を感じることができる営農スタイルに憧れて、私が農業を手掛けるなら多品目農家になろうと心に決めていました。
四季折々の野菜セットをお客さんに直販できる、生産者と消費者がお互いに顔が見える形でのつながりを持ちやすいということも大きな魅力でした。

私が就農を希望するようになったのは、農業を通じて自然に触れ、人とのつながりを育むことへの憧れがあったからです。農家という生き方への憧れというか、単に農業がしたいだけではなく、つながりを育む”媒体”としての農業に大きな魅力を感じていました。
そうした魅力を余すところ無く発揮できるのが、多品目栽培というスタイルだと考えています。

農業を通じた地域資源の循環にも挑戦したい。廃棄されてしまう地域資材を有効に活用して、循環型の有機農業を実践したいと考えています。
就農までの実験的な取り組みとして米やそば、エゴマなどの収穫残渣、ダメージ品として廃棄される野菜から堆肥を作っています。実際の栽培の上にも活用できる堆肥化技術の習得を目指して、試行錯誤中です。

私のような就農希望者が増えて、農地を引き継いで新たに農業を始めることは、そのまま地域の景観保持につながります。
とりわけ南阿蘇村は風光明媚な観光地としての景観を重要視しているので、農業に従事することが環境保全活動への参画となります。このことは南阿蘇村の地域おこし協力隊員として活動する中で学んだものです。

農業を通じて自然とつながり、人とつながり、地域資源循環の輪をつなげ、美しい景観を後世につなげる。

”つなげる”農業を、ここ南阿蘇から始めていきます。


見て・触れて・感じて・味わう:農業体験農園

2つ目のプランは特に人と人とをつなげる場作りとしての農業に着目した農業体験農園の開設です。
「農業体験」というと、皆さんどんなイメージを持っておられるでしょうか?いわゆる収穫体験、実った野菜を一口いくらで収穫して持ち帰る、もちろんそれだって楽しいのですが、ちょっと勿体ないと思うのです。
収穫に至るまでの道のりは長い長いものです。土づくりから畝立て、種まき、苗を育てて畑に植え、水やり、草刈り、間引きや芽かき…それぞれの過程の全てにおいて、自然の営みを感じることができます。

農業という営みが単に生産のための労働となってしまっては勿体ないことですし、農産物が自然から切り離された既製品のようになってしまっていることも残念なことです。”農”という一連の営み全部を、見て、触れて、感じた上で味わう。そこから得られる感動を共有するための場作りをしたいと考えています。

私自身も農業の初心者として野菜作りを一から学ぶ過程の中で、様々な感動がありました。
農業はまさに、命とつながる産業です。その営みを通じて得られる体験は、人と人とのつながりをもっと豊かなものにしてくれるはずです。

具体的な取り組みとして考えているのは、キッチンコンポスト堆肥でつながる地域循環型農園。
家庭から出る生ゴミをコンポストとして発酵させたものを農園で回収し、堆肥化します。
完成した堆肥で野菜が育ち、再び家庭に戻ってきます。
キッチンから始まる循環の仕組みを、丸ごと体感して味わってもらう、新しい形の農業体験です。

各家庭で生ゴミをコンポスト化してもらう工程をお伝えするところからスタートします。いっぱいになったコンポストを定期的に農園に持ってきていただく傍ら、農業体験を楽しんでもらったり、実際にコンポスト堆肥で育った野菜を味わっていただきます。堆肥づくりそのものも、一つの体験コンテンツになり得ます。
農園に来てもらうことがそのまま、循環型社会を担うことに繋がります。「サステナブルな生活って、楽しい!」そう思ってもらえるような取り組みを目指して構想中です。

農ある暮らしの感動を届ける:『FARM×ART』

私が農業に従事しようとする動機の裏側には「つながりを大切にしたい」という思いがあります。
自然と人のつながり、人と人とのつながり、それを子どもたちの世代までつなげたい。
それを人に伝えるための一つの手段として、創作活動を行います。平たく言えば、農家兼画家。農業とアートの掛け合わせ、『FARM×ART』です。
農家として日々自然と向き合う中での感動を、描くことで発信していきます。

生産した野菜のイラストなどをパッケージとして利用することで付加価値を高め、販売促進につなげることが見込めます。
農業体験農園を営む上でも、自然に触れる感動を絵にして伝えることで「こんな農園に行ってみたい」と思ってもらうための訴求力となり得ます。

しかしそういった事よりも何よりも、私自身が農業を営む中で、自然の営みに対する”感性”を失ってしまわないために、描くことで感受性を育んでいたい。ある種の実践としてのアート。そんな意味合いまで持たせることができれば、作品が持つ価値自体も高めていけるかも知れません。

私のライフワークとして、『FARM×ART』を始めます。

今のところまだまだ作品のクオリティも安定しない上に、認知度もさっぱり(笑)な状況なので、先ずは技術の向上と人に知ってもらうための活動を兼ねて、基本的に無料でご依頼を募っています。

自然を深く見つめ、人とつながることを大切にする、それを目に見える形に表すアートとして。

鋭意制作中です。


つなげる「心」=サステナブルマインド

あそ未来創造塾 最終プレゼンテーションに向けて3つのプランを作成しました。
どれに対しても思い入れが強く、これから農業に携わる中で実現していきたい目標であることに嘘は無いのですが、今回のプレゼンテーションを通じて本当に伝えたかったことはどれなのか?と考えるほどに選びきれないというか、どれでもないような気もします。

私が今回のプレゼンで本当に伝えたかったのは、これから私が農業に従事していく上で中心に据えるコンセプトそのものです。
つまり、農業を媒介にして「心」をつなぎたいということ━サステナブルマインドという考え方についてです。

私たちの社会が持続可能なものになっていくために必要なことは何でしょうか?

直面する問題解決のための技術
循環型の社会を作るための仕組み
これ以上 環境に負荷を掛けないためのルール

それはもちろんですが、それよりも何よりも、
「サステナブルな在り方が楽しい
「こんな社会を作りたい
「この営みを後世に伝えたい
という思いを共有することが大前提。

それがつまりサステナブルマインドです。

こうして横文字にしてしまうと仰々しいというか、勿体つけた感じもしてしまうかも知れませんが、考えても見れば当たり前のことだと思うのです。

楽しくなければ続くはずがない。
作りたくなければ作れるはずがない。
伝えたくなければ伝わるはずがない。

何だってそうだと思いますし、これを私たちの社会に置き換えて考えたって、全く同じです。
だから私は、楽しい・作りたい・伝えたい「心」を育む場所が必要だと考えました。そのための媒体として、農業は最適の事業です。

(さらに詳しくは、以前に書いたnote「農業✕マインドフルネス┃サステナブルマインドを育む場としての農園作り」にて綴っています。)

・サステナブルマインドを中心に据えて
・そこに紐づく取り組みに何でも挑戦
・そんな取り組みをどんどんつなげる

これが私がこれから手掛けようとしている事業の中心に据えるコンセプトです。

もし共感してくれる方があれば、一緒に農業をやってみたいですし、ぜひ体験農園づくりを応援して欲しいですし、一緒に阿蘇の自然でも描いてみたい。そんなことを通じて、もっともっとこの”つながり”を広げていきたいと願っています。

最後に

あそ未来創造塾を通して、自分の事業プランについて言語化していくプロセスを学ぶ機会をいただけたことは本当に貴重な経験でした。
また、同じ阿蘇地域でそれぞれに自身の夢を描いて、その実現に向かっている塾生の皆さんと知り合えたことにも感謝するばかりです。

あそ未来創造塾 第3期もこれにて終了とはなりますが、むしろこれからが始まりなのでしょうか。

頂いた講義の中で、「未来創造塾の取り組みが3期続けば地域が変わる」というお話がありました。それが現実のものとなりますように、あそ未来創造塾に関わる皆さんの取り組みが阿蘇地域を取り巻く課題解決とそれぞれが思い描く事業の発展につながっていくことを心からお祈り申し上げます。

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