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デザイナーを目指す学生必見!テクノロジー企業のデザイナーが担う役割とは?

NECには50年以上の歴史を持つデザイン組織があります。
未来の日常を創ってきたテクノロジー企業のデザイナーはどんな人たちなのか。
そして、テクノロジーの変化とともにデザイナーの役割はどう変わっていったのか。

今回は、長年NECでデザイナーとして活躍されてきた坂井さん、ディレクターとしてチームをリードする對馬さん、入社4年目のプロダクトデザイナー松井さんにお話をお聞きしました。

對馬さん【左】 
2006年入社。携帯電話や業務システムのUIデザインを担当。その後、事業開発にデザイナーとして参画。現在は事業部や研究所の新規事業開発を支援するデザインチームのディレクター。

坂井さん【中央】
1980年代は家電・PCのデザインを担当。その後、インタラクションデザインに幅を広げ、PaPeRo開発、システムのUXデザイン、大学講師など幅広く活躍。現在はデザイン経営の推進・支援に従事。

松井さん【右】 
2020年入社。タブレット端末や物流ロボットなどのプロダクトデザインを担当。その後UIアニメーションや展示会空間など幅広く活躍中。


未来を描き、より良い製品・モノのデザインを追い求めた

― いま学生のみなさんは2000年代生まれですが、坂井さんと對馬さんはそのころにはデザイナーとして働いていたんですね

坂井:
当時は、パソコンや携帯電話のユーザーインターフェース(UI)を中心にあらゆることをしていました。
ユニークなところでいうと、研究所と「PaPeRo(パペロ)」というロボットの開発をしていました。

家庭用のペットロボットを作るため、犬などのペットの観察をして「ロボットと人がどんなインタラクションをするべきか」といったことを考えるところから開発が始まりました。
2005年の愛・地球博で人気になったりして、コミュニケーションロボットとしての一つの成功例とされています。

「PaPeRo」
家庭で人々のパートナーとして共に暮らすことのできるロボットを目指した

―對馬さんがNECのデザイナーになったのは2006年からとのことですね

坂井さん:
私が彼を採用しました(笑)

對馬さん:
そうなんです、ずっと坂井さんが上司でした(笑)。
まさにPaPeRoを見て「これをやりたい」と思って入社を決めて、入ってからも「PaPeRoのチームに行きたいです」って言ったんですよ。

ただ当時ガラケーが全盛期で、関わっていないデザイナーがいないくらいの時代だったので、待ち受け画面やメニュー画面のデザインをする仕事を任されました。
見た目を作るだけではなくて、「Flash」というアプリケーションでインタラクションを作るのも楽しみながら仕事していましたね。

それから、プロが使う航空管制システムのUIもデザインしました。このシステムは誰がどう使うかがすごく具体的で、その運用フローに沿ってUIを考えるのがけっこう面白かったです。将来運用を見据えたUIの先行提案をしたりすることもあって、それもまた楽しかったです。

―「製品・モノ」のデザインが多かったんですね。

坂井:
ただデザイナーの中ではなんとなく「製品の形ではなく、サービスこそ本質なんじゃないか」と気づきつつありました。
で、研究所の人と将来のサービスを企画して、事業部門に持っていったんですが、「うちは端末を作る事業なので」と言われてなかなか受け入れてもらえませんでした。当時はまだ「サービス」という考えに結び付きにくい時代でした。

今あるSNSみたいに「写真をたくさん撮って似たような写真が集まって、趣味が似ている人が交流できる」みたいなサービスとかを考えていたんですけどね。


デザインは、サービス・ビジネスづくりの領域へ

―そこから、テクノロジーやデザイナーの役割はどう変わっていったんですか?

對馬さん:
だんだん「この技術があれば勝てる」とか「唯一無二の技術」というのは少なくなってきて、「新しい技術を出せばすぐ同じような技術が開発される」みたいな世の中になってきたんですよね。
もちろんNECは今でも世界No.1の顔認証とか、唯一無二の技術をたくさん持っています。
でも、技術だけではビジネスになりにくい時代になってきた

坂井さん:
2000年代って世の中的に「ユニークなアイデアを考えれば売れるんじゃないか」って思っていた節がありましたが、2000年代中頃とか2010年代からは変わっていった。その結果、デザイナーにも「ビジネス開発」ってすごく言われるようになっていきました。

對馬さん:
「技術的に優れた製品・モノを売る」というところから、「技術は唯一無二じゃなくても、ビジネスになるアイデアを形にする」というようにやり方が変わってきたんですね。
その流れに合わせて、デザイナーの役割も「良い製品・モノをデザインする」だけではなくて「ビジネスやサービスの仕組みまでデザインする」というふうに変わってきたと思います。

―薄々感じていた「サービスが本質なんじゃないか」という感覚がいよいよ現実になったんですね。仕事内容も変わっていったんですか?

對馬さん:
2015年から数年間、新規事業開発のチームにデザイナーが入ることになって、ビジネス開発に本格的に関わるようになりました。

例えば僕が関わっている「協調搬送ロボット」は、もともと「適応遠隔制御技術」というNECオリジナルの技術を起点に事業を作ってみようというプロジェクトでした。無線通信を使って2台のロボットを同時にリアルタイム制御して、それらが協力して倉庫の荷物を運ぶという、物流現場の支援サービスです。

「協調搬送ロボット」
對馬さんが事業開発に関わったほか、松井さんもプロダクトデザインに関わった

―デザイナーとしてどのようにプロジェクトに関わったんですか?

まず、技術者と一緒に「この技術をどう使えそうか」議論するワークショップを設計しました。
それで8~9個くらいアイデアが出ました。例えばタンカー船を横から押すタグボートの複数台制御とか。

出したアイデアは、顧客インタビューでニーズを確かめます。
この時のヒアリングスキルや、ヒアリングの材料として簡単なイメージ図を作る力は、過去にUI/UXデザインをやっていた時に培ったものが役に立ちました。

―役割は変わっていても、使うスキルには共通点が多いんですね!


テクノロジーとユーザーの間にデザイナーがいる

―こうしてデザイナーの役割が徐々に変化してきた時代にデザイナーデビューした松井さん。「大学時代にイメージしていたデザインの役割」と「NECに入ってから感じたデザインの役割」にギャップはありましたか?

松井さん:
ギャップはあまりないです。
大学では「ユーザーにはこんな課題があるから、解決のためにこんなものが必要だ」ということをちゃんと考えなさいという、まさにデザイン思考の考え方を学んできました
その役割自体はNECに来ても求められているなと感じます。
ただ会社では部門ごとに考え方があってこちらの意図が通じないこともあるので、そこへの歯がゆさはときどき感じます。

―テクノロジー企業の中でのデザイナーの役割って何だと思いますか?

松井さん:
技術って、昔は「テレビが高画質になった」「薄くなった」みたいに、進歩やすごさがユーザーにとってわかりやすかったと思うんですが、最近は「新技術」といっても、マニアにしかウケないんじゃないかってものの方が多くなったのではと思っています。「新技術」だけではユーザーが価値を感じられない。

作る側とユーザー側の間ですごいギャップが出てきているんだろうな、と思って。
それを「こうしたらユーザーにとって良いものになるんじゃないか」と提案したり、ユーザーのためにならないと考えたときには「待った」をかけたりするのがデザイナーの役割だと思います。

對馬さん:
NECの技術って、価値がわかりにくいですよね。
なので「相手にとってこの技術ってどういう価値になるか」ということを意識する。ほぼほぼそれをやっているのかなと思います。

さっきお話した「協調搬送ロボット」に使われている「適応遠隔制御技術」って、すごい渋い技術なんですよ。「通信は遅延する」ということを前提として、それをどうやって補完するかって考え方なんですよね。遅延しない技術を作るんじゃないんですよ。そんな発想が面白い。

ただ、技術の内容がわかっただけでは何がいいかわからない。
だから、テクノロジー企業のデザイナーが、技術の渋さと良さをちゃんと理解した上で、「この技術が、どんなユーザーのどんな場面で価値になるのか」を伝えていく。それが役割なんだと思います。

坂井さん:
まさにそれですね。
研究者ってすごいことを考えている。でも自分の技術のすごさに気づいていないんです。
「これすごいじゃないですか!これで世界獲れますよ!」って言っても「そんなことないです…」って言われてしまう。

なぜなら、常に彼らは先行事例と戦っていて「そこよりは負けてるんだよな」と思いながら勝つために試行錯誤する日々を送っているから。
だからNECの研究者が生み出す技術のすごさを表に出してあげるのが、デザイナーの役割でもあり、面白さだと思います。

これからの「テクノロジー企業のデザイナー」とは

―今もまさに生成AIの登場など、テクノロジーが社会を大きく変えるタイミングに来ていると思います。
そんなこれからの時代で、テクノロジー企業のデザイナーとして大切なことは何だと思いますか?

松井さん:
デザイナーの役割の一つである「手を動かしてきれいなものを作る」というところはAIに置き換わると思っています。
「ユーザーに対しての価値を見出す」という企画側に力を持っておく必要があるのかなと思います。
あとはその企画側の作業をするときに、生成AIを積極的に使っていかないといけないなと思います。

對馬さん:
人々の価値観ってやっぱり変わっていきますよね。災害みたいな出来事が起こったり、生成AIみたいな技術が出てきてそこに色々な要因が積み重なったりして変わっていく。でも、変わらない価値観もありますよね。
だから「何が変わらなくて、何が変わっていきそうなのか」ということをイメージしながら過ごすことが大切

それから、私たちデザイナーが作るのは「技術を使った未来の世界」なので、変わりそうなことと変わらなそうなことに、少しだけ「こうなったらいいな」という思いを付け加えて、未来の世の中をイメージしてみるといいと思います。

坂井さん:
私はもっと荒唐無稽な話かもしれませんが(笑)。
生成AIの登場は、たぶんコンピューターやインターネットができた時に匹敵するくらい大きな出来事でしょう。当時のように、新しい産業も生まれてくると思います。

で、私たちがあの時何を考えていたかと振り返ると、なんだかすごく夢見ていたような気がします。
これまでNECのデザイナーは、研究者と一緒になって、一見するとくだらなく見えるようなことをいろいろやってきました。でも結果的にみるとそれが10年後の姿をちゃんと表していたりした。

そう思うと、もっと未来に対して夢を描いてもいいかなと。
NECって本当に10年後を動かす技術がいっぱいあって、面白いところだと思います。

年代も経験も異なるデザイナーたちが揃って口にしていたのは「ユーザー目線で技術の価値を見出す」ということ。
テクノロジーと共に進化する人々の生活を見つめながら、常に未来の日常を創ってきた、そしてこれからも創っていくデザイナーたちがNECにはいます。

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