「赤とんぼ」の町で酒盃を交わす
「赤とんぼ」という歌がいつも心にあって、昔を思い出したりするたびに頭のなかで歌っている。幼少時に仰ぎ見た赤トンボの乱舞がよほど心の深みに働きかけているらしく、ハーモニカで高校時代に吹いたのも、東京に下宿して、夕暮れの上野公園のベンチで吹いたのも「赤とんぼ」だった。
作者の三木露風にとって、「私に詩思を与えたのは、故郷の山川である」というほどに龍野の自然は作品のふるさとであったし、五歳にして別れた母の面影を懐古する場所でもあった。龍野というまちに一度行ってみたい。その思いは龍