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夫の運転する助手席、信号待ちで…

夫の運転する助手席、信号待ちでぼんやり見ていたのは、エチケット袋でうんちの始末をする男性と、その横で後ろ足で何度も地面を掻くように蹴る小型犬。

柴犬のモコは今、住んでいた宇都宮から遠く離れて千葉の老犬保護施設にいる。モコに寄り添うように暮らしていた父が3月にいなくなって、姉と相談してそうすることに決めた。
モコが小さい頃、父は厚木に住んでいて私も姉も比較的近くに住んでいたからよく遊んだ。

2年前、父とモコを浦和の私の家に呼び寄せて一緒に暮らした時期もあった。
“ふたり”が私の家に来たのは、父の脚の具合が悪かったなどの理由だが、悪い脚を引き摺りながらも父は親友モコとの散歩は欠かさなかった。
その散歩の後ろ姿をたまに遠くから見た。
ふたりの歩みは、それはそれはゆっくりとしたもので、モコが父の散歩のペースに付き合ってくれていたのだろう。
私がさっさと歩けば5分程度のコースをゆっくりとゆっくりと、2~30分かけて。
どちらにとっても楽しい時間なのだろうと見ていたものだ。
大きな背を丸めたゴルフキャップの父と左右に振れるモコのお尻。
犬の散歩の光景を見るたびその姿が浮かび上がる。

あの頃、朝晩の散歩を担当した私と夫は、モコを運動不足にしてはいけないという気持ちもあって案外しゃかしゃかと住宅街を回った。モコは草ムラを見つけては留まりながらも尻尾を立てて早足で歩いた。

モコの様子を案じた言葉を漏らしたら、夫が「だったら千葉の施設に会いに行こうよ」と言った。
会いたい。
でも、会った時モコは「迎えに来てくれた」って思うはずだ。
また辛い想いはさせられない。
だから、このまま会わない。

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