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私信 ずっとずっとそうだった

雨がやまない六月に
諦めながら
息(やす)みながら
ねじれた輪の内側を歩き
胸が騒ぐことはなく
脈が乱れることもなく
とても閑かで
あなたは
今日も嘘つきだ
 
記憶の中での違和感が
今になって腑に落ちる
あなたは
ずっとそうだった
 
笑えない場で高らかと笑い
誰かれ構わず裁定を下し
必ず批判せぬ人に擦り寄って
下心を巧みに昇華する
それでも
譲りたくない「欲求」は
存在だけでは「承認」されず
唐突に起こすアクションは
還らぬ引き潮を誘発し
あなたの地上に
そうして誰もいなくなる

満たされないまま
「満たされたい」と言わない自意識が
誰の記憶にもない過去を
あなたの中に現在させて
あなた独りがあなたを讃え
現実社会に戻っては
あなたが往けない場所へ往く
知人をとことん罵り倒し
何もなかったかのように
独り笑って朝に寝る
 
あなたは
何度も諭されながら
自分ごととは向き合わず
わざわざ
「初めて知った」と言い放ち
「恐ろしいことですね」
「堕落させますね」などと
分析語りを披露して
他人(ひと)事としてのみ口にする
 
あなただけが認めない
誰かと比べて勝(まさ)っていて
誰かと比べて讃えられる
優越で在りたい
あなたの病

明日も嘘つき
 

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