見出し画像

論文「感じられた身体」を読んで

・論文「感じられた身体」を読んで


「感じられた身体」
―トランスジェンダーと『知覚の現象学』―
The Felt Sense of Body:
Transgender and Phenomenology of Perception
藤高 和輝(2019.12)
はネット上で公開されている論文で、無料で読むことができます。

・「身体違和」と「性別違和」

身体違和がないのに性別違和があるというのはどういう状態なのか?
自分を「女性」だと認識していながら、自分の体が男性であることに違和感がない状態とは何なのか。
トランスジェンダーとは「身体」ではなく「身体のイメージ」だという論文を見つけた。例としてそこにあるもの「男性器」(元からの身体)は変わらないのに、腕を失った人が腕があるように感じるように、そこにあたかも「女性器」があるように感じるのだという。しかし、過去に体験済みで今はない身体の一部がまだあるかのような感覚と、一度も体験していない臓器が存在する感覚というのは比べられるのだろうか?男女それぞれの身体を経験していないのに「女性器がある感覚」とは一体何なのだろうか?また、全ての女性が体験するわけではないものの多くの女性が毎月体験している「生理」が来る感覚もあるのだろうか?子宮という臓器がないにも関わらず「生理」を感じる感覚が毎月何日間かあるのであればとても興味深い。生理前に乳腺が痛くなる感覚もあるのだろうか?「妊娠」していないのに10ヶ月間自分の子宮の中で子供が育つ感覚がある人もいるのだろうか?
また「ふくらはぎに胃がある」とか「膝の裏に目がある」とかでない限り身体の内部に他の部位の感覚があるのは、人間の臓器が身体の中心に集まっているため他の臓器の感覚を誤認しているとすればまだわかる。特に生理痛などは、一般的な腹痛である胃腸の痛みと勘違いすることはよくある。
しかし、例えば「女体を持つ人の男性器の感覚」や「男体を持つ人の乳房の感覚」は、身体のイメージが自身の身体から空間へ飛び出しているため、どう感じるのか気になる。イメージとして飛び出していたとしても、そこに実体はないのだから触覚はない。女性であっても男性器の感覚のある人は、男性器のポジションなどを気にするのだろうか?乳房に関しては私はあまり胸が大きくないため、世に聞くような男性器のポジションよりはおそらく胸のことを気にしたことがないが、実際にそこに胸はなくても身体のイメージが胸の大きな人の場合、走った時に鎖骨の下の皮膚が吊れるような感じがあったりするのだろうか?

・存在しない身体的特徴や臓器の「感覚」とは何か?


私は生まれつき女性であり性自認も女性なので「乳房がある感覚」や「女性器がある感覚」は普段は無意識化している。無意識であるためむしろ「乳房がある感覚」や「女性器がある感覚」が具体的にどういうものであるのかがわからない。そもそも、身体違和は性器などの男女の差によるものだけなのだろうか?例えば私の肌は白いが身体イメージは黒い肌である、とか、年齢的な違い、例えば自分は30代の女性だが身体イメージは5才の女児である、とか、外見的イメージで実際は太っているが身体イメージは痩せているだとか、人間以外のもので例えば自分の口は人間の口であるが身体イメージは鳥の嘴である、とか、存在しない身体的特徴として自分の尻には尾があるはずだ、とか言う人はいないのだろうか?
脳で考えるだけでロボットの操作が可能な技術はすでに存在する。一般的に人間の腕は2本脚も2本だが、「脳内の身体イメージ」による操作が可能であるならば、ロボットの3本目の腕や3本目の脚をそれぞれ2本の腕と脚と同時に動かすことも可能なのだろうか?
また、なぜ性別の身体イメージのみが社会に許容され、年齢や人種などの身体イメージは許容されるべきだという議論がないのだろうか?もしあるのであれば教えてほしい。

・「女性」のイメージとは何か


女性あるいは男性特有の身体的特徴であった場合、メディアによる情報で異性に対し間違った身体イメージを持つ人は少なくない。自称トランス女性の中にも、女性はスネ毛やヒゲやワキ毛が生えないと思い込んでいる人を見たことがある。実際は、女性はワキ毛やスネ毛のないことをよしとして強制する空気があるがために、多くの女性があらゆる方法でわざわざ除毛している。ある自称トランス男性は痴漢被害に遭った際に「女性であれば痴漢被害を喜ぶはずだ」と思っていたという話を読んだことがある。これは、男性向けメディアによる「非現実の女性のイメージ」であり現実の女性の感覚ではない。痴漢被害に遭った女性はもれなく不快感を感じているし、それ故に痴漢行為は罪なのだ。
身体を正しくコントロールするために身体イメージは修正することが可能である。前に芸能人である武井壮さんが少年の頃運動に目覚めた時に、鏡を見ることでイメージと肉体とのズレを直したら身体が思うように動くようになったと言っていた。

・犯罪における男女の身体的傾向


間違った女性の身体のイメージかと思われるものは他にもある。他の女性たちに尋ねたことがないので私だけかもしれないし少数派なのかもしれないが、私は男性の裸を見てもそういう気持ちがない時で、ない相手であれば全く性的に興奮しない。多くの女性がそうだろうが、男性器(の画像)を見ても「何も感じない」かシチュエーションによっては「気持ち悪く」感じる。質問形式のネット掲示板で、投稿者の男性が「肛門の病になった時、女性の看護師二人がまるで何でもないかのように陰茎と陰嚢を手でヒョイとどかして患部を観察していた。看護師になる女性は男性器を見ても興奮しないよう特別な訓練を受けているのだろうか?」という投稿をしているのを見た。世の男性は、女性の裸(や画像)や性器を見ると興奮する人が多いイメージがある。もしそうであれば、女性の性欲と男性の性欲は非対称である。
そもそも、犯罪の被害者・加害者の比率を見てみれば単に個人の問題とは考えられないほどの差がある。性犯罪に至ってはその差は歴然だ。しかし、この統計は戸籍上(身体的)性別で計算されており、加害者の男性の中にどれだけのトランス女性が含まれていて、被害者の女性の中にどれだけのトランス男性が含まれているかは不明である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?