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5月17日 ジャニー喜多川の事件と、テレビ王国崩壊の兆し

 最近、世の中を騒がせているニュースといえばジャニー喜多川による長年の性加害に関するお話しだ。
 ジャニー喜多川に関するお話しから掘り下げよう。

 ジャニー喜多川は1931年アメリカにて生まれる。父親が高野山真言宗米国別院の僧侶だった関係でアメリカ生まれだったようだ。少年の頃のジャニー喜多川は日本と米国の2つの国籍を持っていた。1933年、一家で日本へ戻り、大阪府大阪市で少年期を過ごすことになる。
 その頃に母親が死去し、太平洋戦争も勃発する。少年のジャニー喜多川は和歌山県の田舎に疎開し、終戦頃には16歳になる。
 戦争が終結し、16歳になったジャニー喜多川は、子供たちだけでロサンゼルスに移住し、現地の高校に入学。その後は、まあいろいろあったようだ。
 1960年初頭、ジャニー喜多川は東京都渋谷区・代々木の在日米軍宿舎ワシントンハイツにて近所の少年たち30人で構成された野球チームのコーチを務めていた。
 その野球チームの少年たちと、あるときミュージカル映画『ウェストサイド物語』を鑑賞するのだが、一同感動し、そのままエンターテインメント事業を始めることを思いつく。もともと野球チームのメンバーだった4人によるグループが最初のアイドルとなる。これが「ジャニーズ」の出発点だった。
 その後は1980年代に「たのきんトリオ」「シブがき隊」「少年隊」といった少年アイドルをデビューさせ、1987年には7人組アイドル「光GENJI」がデビュー。1990年代には「SMAP」、「TOKIO」、「V6」、「Kinki Kids」、「嵐」……と日本にいれば絶対に知っているであろう男性アイドルの多くはジャニーズから生まれている。

 ここまではWikipediaでひろってきた話。
 ジャニー喜多川が死去したのは2019年7月9日。解離性脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血によりこの世を去る。

 ジャニー喜多川が死去してから4年……ようやく世に出てきたのが彼による「性加害」問題だが……。
 正直なところ、「今さら?」という感じがして……。私の知る限り、2000年代初頭に“事務所の少年たちを摘まんでいた”という話が出て、裁判にもなっていたはず。例えば2003年、裁判所がジャニー喜多川によるタレントへの性的虐待を認定し、120万円ほどの罰金が支払わせている。現社長である藤島ジェリー景子は「知らなかった」と語るが、知らないはずがない。
 昔からのジャニーズファンも当然ながら知っていた。2003年頃の裁判の時、私は知り合いに「これ本当か?」と尋ねたら、「本当だよ」と教えてくれた(しかも嬉々として。どうやら彼女らの中ではジャニー喜多川と少年たちの関係は「BL」に変換されていたらしい)。「それ以前から知ってたよ」という答えで、ファンの間では「常識」あるいは「基礎教養」となっていた話だった。
 これだけ長らく語られていて、ファンなら知ってて当然だった話(芸能ニュースに興味のない私ですら知っていた話)を、現社長が「知らなかった」……というのは無理がある。

 “噂”としてはもっともっと前からあって、改めて遡ると1965年頃からずーっと語られていた話だったらしい。つまり最初の少年アイドルが売り出されはじめたその頃から、この世を去る頃までずーっとだ。
 ここまでくると「お盛んなことで」……とあきれるしかない。

 こんな話をしているけど、私はアイドル文化にはさほど興味がなく、ジャニー喜多川という人物を糾弾しようとはまったく思わない。
(芸能ニュースにまったく興味のない私にはその役目はない)
 そうではなく、これも1つの《王国》が崩壊する兆しなのかな……と感じている。

 メディアの世界でジャニーズの力は絶対的だった。
 いくつか事例を示そう。
 2008年頃『週刊現代』に驚くような記事が載った。アイドルグループ「嵐」のリーダー・大野智がカラオケボックスで大麻を嗜んでいた……という話だ。この話は実際に大野智の合コンし、3Pセックスもしたという女性から語られている。その時の写真……つまり大麻を吸ってラリっている大野智の写真も掲載されていた。
(※ 週刊現代 2008年8月9日号)
 ところがこの件について特にメディアが大騒ぎすることはなかった。というか沈黙した。スクープはなかったことになり、大野智はその年の『24時間テレビ』を何事もなかったかのように勤め上げる。
 話はさらに遡って1999年『噂の真相』という雑誌で「芸能人乱交パーティ」というタイトルのスクープが載った。
 TBSに出入りしていた局の芸能ブローカーが、アイドルや若手俳優のために、乱交パーティを企画し、開催した……という内容だ。雑誌には当時のアイドルやテレビ局員が乱痴気騒ぎを繰り広げる写真が掲載されていたそうだ。
 この乱交パーティにはKinki Kidsの堂本光一、TOKIOの長瀬智也といったジャニーズタレントも参加していた。
 さすがにこのニュースはテレビ報道はなかったものの各週刊誌が後追いをしたが、そのなかからジャニーズアイドルの名前だけは削除されていた。ジャニーズ事務所ではない俳優……この時はいしだ壱成だけが矢面に立たされ、バッシングされることになる。
 2001年にいしだ壱成は麻薬所持で逮捕されるわけだが、この時に事務所による庇護は受けられなかった。なぜなら事務所にそこまでの力がなかったからだ。だがもしもジャニーズ所属だったら、「なかったこと」になっていたのではないか。
 2001年にはSMAPの稲垣吾郎がフルチンで散歩していたために大スキャンダルとなり、この件はさすがに大きくなりすぎたのでテレビ報道されたが、報道では「稲垣メンバー」という不思議な配慮を込めた呼ばれ方になっていた。その後、稲垣吾郎が業界から干されたのか……というとそんなことにはならなかった。

 芸能の世界にはいつも何かしらのスキャンダルがあるもの。暴力事件に麻薬事件、窃盗、強姦。なんでもござれの危ない世界だ。しかしなぜかジャニーズ事務所タレントだけがそういった諸々の事件に名前が挙がることはなかった。時々、なにかの拍子で週刊誌にちょろっと漏れ出ることがあるのだが、その後、謎の引力が働いてジャニーズ・タレントの名前だけが消えてしまう。
 これがジャニーズ事務所の「権力」だった。なにかが起きても、その直後、もみ消される。乱交パーティも大麻もなかったことになる。記事にならなかっただけで、他にも一杯あったかも知れない。
 他のタレント事務所にできず、ジャニーズにできた「力」。それがどんなスキャンダルももみ消せる絶対的権力だった。
 ジャニー喜多川による性的虐待問題が最近まで報道されてこなかったのも、ジャニーズに絶対的権力によるものだった。

 それがジャニー喜多川という人物がこの世を去って4年……ようやくジャニーズの「魔力」が消えつつある。どうして今になってジャニー喜多川による犯罪が世に出たのか、メディアが取り上げるようになったのか……それはジャニーズの魔力が失われよとしているからだ。
 今回の一件も、まずイギリスのBBCが取り上げて、その後、おそるおそる……という感じで国内のニュースがぽつぽつと取り上げて……という感じだ。ジャニー喜多川はすでにこの世を去っているのに、メディアは今もそれくらいに遠慮がちに事件を取り上げようとしている。それくらいにジャニーズの魔力が絶大だった……ということがわかってくる。

 マスコミが「暗部」を取り上げないもの……といえばスタジオジブリがある。
 どうしてスタジオジブリ関係のネガティブな報道が出てこないのか……というと鈴木敏夫が恫喝してまわっているから……と押井守が明かしている。スタジオジブリはいかにも健全なイメージで売っているが、その実態は「スターリズム」。異論は絶対に許さない世界。異論を上げる人間がいたら、えげつない方法で排除しているとか。どうしてそれが実現できているのか……というと鈴木敏夫の存在。テレビではわからないが、鈴木敏夫は実は「恫喝の男」なのだという。
 それとともに、マスメディアとしてもジブリを貶めるような報道は自分のマイナスになる……という判断があって、自ら「報道しない自由」を発動している。こうしてスタジオジブリに関するネガティブ報道はしない……というインナーサークルが成立することになる。
(そもそも宮崎駿がスキャンダルにあまりにも無縁な職人人間でバッシングする要素がない……ということもあるけど)
 その鈴木敏夫の絶対権力も、そもそもジブリが一度解散した……ということもあって、ちょろちょろと色んなものが漏れ始めている。最近、鈴木敏夫に愛人のような人がいる……という話が出てきたが、これも鈴木敏夫権力に陰りが出てきたから。
 表に出てきてないだけで、他にもいろいろあるんだろうよ。
 といっても私は「恫喝の男」鈴木敏夫を糾弾するつもりはない。宮崎駿監督は『ルパン三世 カリオストロの城』で大コケして干されていて、『風の谷のナウシカ』はどうにかヒットしたものの、それ以外の作品はすべてコケてた。宮崎駿はこのままアニメ史から消えていたかも知れない……それを見事「国民的アニメ作家」にまで成長させた。これが鈴木敏夫の成果だ。副産物として、1990年代頃までアニメといったら子供と変人が見るもの……という偏見があったが、その偏見を消し去ったのも鈴木敏夫。メディアにジブリに対するネガティブ情報を決して載せさせない……恫喝しまくったからアニメに対するポジティブなイメージが作られてきたのだ。鈴木敏夫がいなかったら、オタクは今でも「犯罪者予備軍」と呼ばれて忌避されてきたことだろう。
 逆にこれだけの成果は、恫喝でもしまくらないとできあがらないもの。最近のアニメのポジティブイメージは、こういう男の手段を選ばないやり方で築き上げられたものだ。

 おそらくはジャニーズに関するスキャンダルが報道されないのも、“裏”で何かしらがあったから。ジャニーズにもインナーサークルというものができあがっていて、そこでマスコミ自身でジャニーズに関する報道は自ら取り下げよう……という動きがあったのだろう。

 今回の一件で、ジャニーズ所属タレントの多くが沈黙を貫いている。これもまだジャニー喜多川の魔力が働いているから……と言われている。
 しかし……ひょっとすると、こういうことかもしれない。ジャニーズ所属タレントにとって、ジャニー喜多川との性関係を公言しない代わりに……というものがあるのかも知れない。そのかわりに、“色んなもの”をもみ消してもらっていた。もしもジャニー喜多川の魔力を剥ぎ取ってしまうと、その代償として世に出てしまうものがある。「自分も色々やらかしてきた」……その過去が彼らにとっての「呪い」。それを恐れているのではないか……と私は推測している。
 といっても、私はそれを悪いとは言わない。私はアイドルに興味はないし、この件について誰も糾弾しようという気がないからだ。「そうかもね」くらいの話だ。

 私が考えているのは――テレビを中心とする《王国》は今まさに崩壊しようとしている……ということ。ジャニーズはその切っ掛けに過ぎない。次に危ないのは「電通」を中心とする王国だ。
 電通はご存じの通り、テレビを中心とする広告事業を一手に引き受けてきた。
 そんな電通のどこに問題があり、私のような小物がこうやって時々、批判的な文章を書けるのは、電通の権力が弱まっているから(かつてだったら、こういうものでもテレビで取り上げ、視聴者に叩かせていた)。かつてだったら電通のやらかしはテレビや新聞に載ることはまずなかった。どこかの週刊誌でひっそり報道され、消えていく……というものだった。
 どうやら電通は「縁故採用」を進めすぎたせいで、構成員のほとんどが「ボンクラのアホ」ばっかりになっているのだという……噂なんでこれは本当かどうか知らないけど(最近の電通発の企画力のなさを考えると、そうかも……という気はする)。かつてのような絶対権力も弱くなって、あちこちでボロが出始めている。

 メディアの世界を支配していた絶対権力者達が少しずつこの世を去っている。私たちが見ているのは、テレビを中心とする巨大な大帝国が崩れようとする途中経過のもの。最近、ぽつぽつと出てきているのはその“ほころび”の部分。
 この大帝国が崩壊した後には何が残るだろうか。テレビを中心とした利権に群がっていた人たちは、次はどこへ行くのだろうか。

 私が1つ期待しているのは、テレビと密接な関係を築いている「財務省」の存在。財務省はテレビと新聞を中心に、毎年のように「国の借金が~」「国民1人あたり借金が~」といったデマを流し、国民を騙してきた。財務省の絶対権力には時の総理ですら逆らえず、財務省に反抗するような態度を取った途端、その政治家になにかしらのスキャンダルが発生する。マスコミも財務省に楯突くと情報を流してもらえなくなるから、逆らえない。テレビと政治の絶対権力がどこにあるかというと財務省だ。「財務省だ」……ということを誰も語れなかった。
 でもテレビ王国が崩壊すると、自ずと財務省の権力を発動する場が崩壊する。そんな時が来たら……少しは世の中の空気も良くなるかな。

 ただ一方で怖いのは、マスコミが「糸の切れた凧」になる可能性だ。マスコミが1980年代から漫画・アニメ・ゲームに対して執拗なバッシングをし続けたのは、漫画やアニメの業界に権力がなかったからだ。鈴木敏夫のような「怒るおじさん」がいないと、誰彼構わず、意味もなく「貶めたがる」のがマスコミだ。普通の一般人でも、バッシングの対象にするのがマスコミだ。
(たぶん、「俺たちは「報道」という《権力》を持っているんだ」ということを誇示したいがためだろう。しかもその意識は自覚できていない)
 権力がない相手にはどこまでも高圧的な態度を取るのがマスコミだ。そしてあることないことを面白がって報道する。1980年代から2000年代まで、あらゆる少年犯罪は漫画とアニメとゲームが原因ということにされていた。もちろん、「真っ当な学者」は「そんなことはない」と語っていたが、そういう話はテレビや新聞に載ることはなかった。マスコミが広めた嘘を、みんな信じていた。
 今は後ろにマスコミをコントロールする権力者がいるから押さえられているが……この権力者がいなくなったとき、マスコミが暴走して、よりバカみたいなニュースばかりになってしまうんじゃないか……。
 マスコミは基本的にバカしかいない世界だから、権力者がいなくなった後、賢明な報道ができるとは思えない。私は以前から、マスコミは「台風だと思え」と考えてきた。なぜならマスコミは1つの権力でありながら知能がまったくなく、しかも自分自身のコントロールすらできないからだ。権力を持ったバカが暴走したときが一番危ない。それなら、いっそコントロールする誰かがいたほうが良いのかも知れない。
 これからはマスコミを中心に、日本という国が自壊していくのかも知れない。

 テレビ王国が崩壊すると、世の中の空気が良くなるのか、それともマスコミの暴走が起きるのか……。どっちの未来が待ち受けているのか、私にはわからない。
 そういう危機がひょっとすると来るかも知れないから、私はテレビを中心とする社会からは距離を置いておこう。まずテレビは見ない!


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