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[読書記録]のび太の月面探査記(原作:藤子・F不二雄、著:辻村深月) / 想像力は思いやり

小さな頃、ドラえもんの長編映画が大好きでした。特に、武田鉄矢さんが主題歌を歌う、「のび太の宇宙小戦争」のエンディング
「ああ僕は、どうして大人になるんだろう
 ああ僕は、いつごろ大人になるんだろう」
という歌が大好きで、感動で震えたのを覚えています。
今回、図書館の棚に並ぶ映画ドラえもん「月面探査記」を辻村深月さんが小説にしたものを見つけて、とても嬉しく、読んでみることにしました。全く知らなかったのですが、「月面探査記」は2019年にアニメ映画化されていて、その脚本を辻村深月さんが担当されたのだそうです。そして、「脚本と小説は全く違うものだ」、と仰っていました。

月面に作るパラレルワールド。「異説クラブメンバーズバッジ」でまたまたのび太くんとドラえもんが、とんでもないものを月の裏側に作るところから物語が始まります。何度思い描いても羨ましい世界。ひみつ道具であらん限りの夢を叶えて、大冒険へと進んでいきます。
いつも私たちが生きているのとは違う世界に友達ができるのび太くん。本当に羨ましいです。

「月面探査記」では、特殊能力を持って生まれ、子供の姿のまま年を取らず、永遠の命を持った「エスパル」という種族の「ルカ」という男の子と友達になります。11人しか存在しないエスパルは特殊能力と永遠の命、そのために良いことも悪いことも経験して、それを昨日起こったことのように忘れることができないまま、本当に長い間月に身を隠し続けているのです。
その孤独を、こう書いています。

体の中でエーテルが燃え続ける限り、エスパルたちはずっと生き続ける。その命には終わりがなく、また、自分たちで新しい家族を生み出すこともできない。一代限りで、ただずっと生き続ける。
その命が「永遠の孤独」を意味するのだと気づくのに、そう長くはかからなかった。(略)
エスパルたちは、外見は地球人やカグヤ星人の子どもたちと似ているが、「変化がない」という点においては、子供以上だった。思考の純粋さ、感覚、記憶力、見てきたものすべてを「忘れない」。普通の子どもたちなら成長とともに失うはずの感性を忘れない。

「のび太の月面探査記」より

受けたショックを忘れることなく、ただ月から見える美しい地球に憧れながら、千年もの間暮らすって、ちょっと想像を絶する絶望ではないかな、と思うのです。

話は変わりますが、私は映画ドラえもんの中の、旅の途中に出てくるドラえもんのひみつ道具の宿泊施設が大好きです。
今回は、気球ポッドの床についたハッチの入り口から入ると、びっくりするような広さの空間があって、それぞれの個室があるというもの。しかもお風呂つき。「地球を見ながらうっとりと浴槽に浸かることができる」、です。すごい。羨ましい。

終わりになるにつれて、ルカの持っていた悲しみへの誤解も解けて行きます。そしてルカは、大きな決断をするのです。おお……、となりました。

表紙、裏表紙、カバーの表紙裏、中表紙のドラえもんの挿絵がとても可愛らしく、静かな宇宙の中にのび太くんの世界の楽しさを感じさせてくれます。のび太くんはどこにいても、ここぞという時には不安や恐れを見せず、優しくて勇気のある人だな、とやっぱりじーんとします。

「想像力」は藤子・F・不二雄さんの作品の中で、いつもキーワードだな、と思います。
ドラえもんも、「想像力は未来だ!人への思いやりだ!」と言っています。
想像力が人間の特殊能力だと私も信じて、ずっと大切にして行きたいです。

やっぱりドラえもんの世界が、私も大好きです。

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