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折々の歌詞

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2019年2月の記事一覧

折々の歌詞(66)

折々の歌詞(66)

近づいて 近づいて 近づいて あの空が落ちる/近づいて 近づいて 近づいて 近づいて/近づいて 近づいて 近づいて 近づいて…/美しき死と日々よ

 SIAM SHADE

「Life」(2001)世紀末「セカイ系」の影響はあるが、素朴なデカダンではない。「死」と「日々」の位置は交換不能。

折々の歌詞(65)

折々の歌詞(65)

かわいた風をからませ/あなたを連れてくのさ

 LArc~en~Ciel

「HONEY」(1998)折口信夫は古今和歌集「みさぶらひ御笠と申せ宮城野の木の下露は雨にまされり」に関し「頭韻を多く踏んでゐる…日本では、ある處で、韻法が發達してとまつてしまつた」と述べた。この詞章を読ませたい。

折々の歌詞(64)

折々の歌詞(64)

頭上に降り注ぐ流星 まるで五月雨か小夜時雨/潔癖の大地を裸足で歩く この線路だけを手掛かりに/繋ぐ君の手は暖かく/汚れたままの掌で

 ムック

「流星」(2006)色彩感ゆたかな語彙に目がくらむ。生身の肉体性の表象、「裸足」「暖かく」「汚れ」に救われる。幻想ではない人間の物語に着地できた。

折々の歌詞(62)

折々の歌詞(62)

あたいの うらないが ピタリと当たるまで/あんたとあたいの 死ぬ時わかるまで/あたい トランプやめないわ/スタ スタ スタ スタ スタ

 象狂象

「プカプカ」(1972)「江古田のガールズ」の俳優・小林光による歌唱で初めて知った。Femme fataleの魔性を淡彩で描いたような味。

折々の歌詞(63)

折々の歌詞(63)

鎧無きとも我ら 此処に立つ/ゆるぎなき確全の 蜘蛛は此処に有り

 ムック

「蜘蛛」(2005)冒頭四行が漢詩めいた響きで剛健な叙情とでも言うべき境地を用意し、「共にうたえば/強く想えば」で明るく大きな空間に解き放つ。「確全」は「確然」を土台にした造語に近いが、音調といい字義といい巧み。

折々の歌詞(61)

折々の歌詞(61)

今日ですべてが終わるさ/今日ですべてが変わる/今日ですべてがむくわれる/今日ですべてが始まるさ

 泉谷しげる

「春夏秋冬」(1972)ひと仕事終えたあとには必ず口ずさむ。なぜこのような美しい言葉を紡ぎ出せるのか不思議でならない。作品と作家の人格・言動に直接の関係はない。中原中也も同様。

折々の歌詞(60)

折々の歌詞(60)

ふたりは恋人で何年たっても変わらない/ふたりは恋人で何年たってもわからない

 口ロロ

「ふたりは恋人」(2013)「変わらない」ことを慈しみ合う「ふつうの恋人」。なんの疑問も持たない「ふたり」に流れる時間のみを感じさせる。無色透明の情緒のなかで「死が近づいてく」という事実に愕然とする。

折々の歌詞(59)

折々の歌詞(59)

お陽さま 見えたら/庭で ふとん干して/留守電切ったままで/海へいこうよ

 明和電機

「お陽さまみえたらふとん干して」(1996)地球最後の日を描いている、という説明を読んだ記憶がある。そうかもしれない。「電気」「ふとん」「留守電」「ガスの元栓」の日常が「お陽さま」と「海」の狭間で輝く

折々の歌詞(58)

折々の歌詞(58)

世界の終わりが そこで見てるよと/紅茶飲み干して 君は静かに待つ

 THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

「世界の終わり」(1996)安直に解釈すれば寓意、「世界」を「君」と「僕」の関係にシンクロさせている。「くるっている」「あんた」が冷たい美貌の女性なのは間違いない。

折々の歌詞(57)

折々の歌詞(57)

伝説の時を 幾年も越えて/戒めのために 客人は来たる

 人間椅子

なまはげ(2014)「客人」をマレビトと読ませている。折口信夫の著作、少なくとも「古代研究」は通読しているに違いない。「祝祭」も韻律が許せばホカイ、オトズレとでもしたかっただろう。ほとんど感情価を持たない純粋叙事。

折々の歌詞(56)

折々の歌詞(56)

呼ぶ声はいつだって 悲しみに変わるだけ/こんなにも醜い私を こんなにも証明するだけ でも必要として

 鬼束ちひろ

「流星群」(2002)タイトルが喚起するイメージに反して「星など見えなくていい」と、これほど内省的なのは例がない。SCANDAL「夜明けの流星群」(2014)と比較せよ。

折々の歌詞(55)

折々の歌詞(55)

透明な雫はあなた 可憐な水の音/きらめくように揺れる波紋は春の予感 目覚めの呪文

 L’Arc〜en〜Ciel

「snow drop」(1998)春の喜びを色彩豊かに描いた。表現に焦りも拘泥もない無垢な光。「石走る垂水の上の早蕨の萌え出づる春になりにけるかも」(志貴皇子の懽の御歌一首)

折々の歌詞(54)

折々の歌詞(54)

「私の翼を使うがいいわ,スパイダー。」

 hide with Spread Beaver

「ピンク スパイダー」(1998)「自らのジェット」で飛ぼうとする意志に「スパイダー」の全存在が凝縮されている。「黄金色…棘の生えた蜘蛛に成りたい」obscure( DIR EN GREY)

折々の歌詞(53)

折々の歌詞(53)

己遠変えた 修羅の道/百鬼夜行は 蛇乃目/己乃姿 通しては/暗中模索 蛇乃如し

 DIR EN GREY

羅刹国(2000)「遠」は万葉仮名であり「ヲ」の発音を示す。破格の表記法。「羅刹国来る」の大胆さ。「時は満ち、神の国は近づいた」(マルコ1:14−15)「音楽漂う岸侵しゆく蛇の飢」