折々の歌詞

欄干から星を見る

星のゆらぎが目に映る
水面眼下、君を呼ぶ
からだめいっぱいあたしになるんだ
呼んでよ

水の波紋に指をひたす
待ち受けた声に立ちすくまないで
あたしの全部に怯えちゃだめよ
ひたすらに空を見る

サッシにふれた瑞々しい指が
ひどくいとおしそうに埃を眺めた
声も出さずに身をかがめた僕は
よりかかる柱の温度を知って

夏の田んぼの揺らぎない青さを
あなたの白い麦わらにさしのべて
ゆるゆるりゆれた透けてい

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君に伝えたいことがある 風よりも早く伝えたいこと

君に伝えたいことがある
風よりもはやく伝えたいこと
マーマレードが陽にきらめく
様よりも綺麗で不確かな声

君を追いかけた八月よ
光よりただそばにいるだけで
歯をゆすぐ君の声が聞きたい
友達にだけ好きと言えること

君に伝えたいことがある
好きなのに上手く言えないこと

君に希う夢描く
蜂蜜の花と咲き変わること
マーマレードは陽にきらめく
願っていた笑声がゆるえた

限りなく青に近い白に
出会って

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木漏れ日に花を置く

水のようなわたしは
何にもなれるのにどこにもいけない
それはさみしさの形を知らないから
つめたく白い炎を抱いた

泣いているあなたを慰めたいのに
何一つ口にできない
あなたの持つ感情を知らないから
すみれ草ひとつ差し出せない

僕は何にも知らなかったのだ
離れてから鼻がかじかむことも
ツンと痛むその熱の意味すら
君に教えられるまでわからなかったのだ

君を通して知った熱が
君の目を帯びて過ぎていく

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etc.

あたしの最期を飾る言葉だとしたら
あなたの四文字の名前がいいな
ロマンスブルーのリボンを結ぶ
傍らであなたはそう笑って ねぇ

そうやってもういつからか
会わないつもりだったのと
答えてくれないあなたの笑顔が
優しさと知っているから

刃となった最後のキスは
血じゃなくあなたの味がした
十一月 色素の抜けていく青空に
君の聴こえない歌を歌う

怒れない僕を叱って欲しい
そんな歌が夏の終わりを告げた

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折々の歌詞(124)

あしたはあると/なんとなく想うよ/潤みかけた瞳に映った/月のながめかた/みつけた

ROUAGE

「月のながめかた」(2000)「キミに見立てて月をみた」「上目使いで月をみた」と
心理的、空間的距離をへだてた「キミ」の象徴であった「月」が
目の前で「キミ」と一致する瞬間。絶唱。

折々の歌詞(123)

加速する魂の抜殻に跨がれ!!
剥き出しの魂の鼓動に合わせ鞭を打て!!

 emmurée

an「acute」(2012) 「魂」の反復にゆるぎない意志がこめられている。
「跨がれ」「鞭を打て」の強い命令形が効果的。
「抜殻」とは肉体そのものだろうか。だとすれば「跨がる」というイメージは
なにを意味しているのか。

折々の歌詞(122)

興奮すっゾ! 宇宙へGO!

 氷川きよし

「限界突破×サバイバー」(2017)鳥山明『ドラゴンボール』シリーズの本質を
ここまで簡潔に、明確に描破した詞章はほかにありえない。
原作の世界観に寄り添いながら、想像力あふれる言語遊戯は
まったく無駄がない。
古今に冠絶したアニメソング。絶唱。

折々の歌詞(121)

夢ならばどれほどよかったでしょう/未だにあなたのことを夢にみる/忘れた物を取りに帰るように/古びた思い出の埃を払う

 米津玄師

「Lemon」(2018)「夢にみる」まさにそのことを「夢ならば」と願っているのは奇妙。意味内容は了解できるので許容するにしても、安易な「夢」の繰り返しが音韻的効果を生むことはなく、「夢ならば」「夢にみる」おたがいに類型を強調しあっていっそう陳腐にしている。「忘れた物

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折々の歌詞(120)

目の裏側で/ミルクこぼれて/あふれ出したんだ/“愛という憎悪”

  THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

「スモーキン・ビリー」(1998)インスピレーションが発し、美と真実を感受するのは常に身体の表側ではなく、背骨から頭の先にかけての「裏側」であり、特に「憎悪」は「目の裏側」。
「ミルク」の色彩、におい、味覚を想起しつつ、ここに現出した唯一無二の「憎悪」の感覚を把握せよ。

折々の歌詞(119)

夜は長いネオン街

 仲街よみ

「ネオン街」(2014)俳句的に圧縮されており
「長い」が「夜」と「ネオン街」
どちらにもかかることは不可能ながら
どちらにもかかっているかのよう。
論理的に考えると意味は分からないが
それでも、よく分かる。