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#漫画

パワーアップした思い出アルバム:『女の園の星』レビュー

パワーアップした思い出アルバム:『女の園の星』レビュー

女子校で働く国語教師・星先生の、なにげないけどおもしろすぎる日常を描いたこちらの漫画。
すでに話題ですが、もっと多くの人に読んでもらうべき!!と思ったので、レビュー書きます。

私が考えるこの漫画(というか和山やまさんの漫画全般かも)の魅力ポイントは、以下の3つです。
(1)懐かしい×かっこいい×色気のある絵
(2)独特の笑いのセンス
(3)ひとひねり加えられた「あるある」

(1)懐かしい×かっ

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キャラクターのチューニングについて:『凪のお暇』漫画版とドラマ版の比較

キャラクターのチューニングについて:『凪のお暇』漫画版とドラマ版の比較

中学の美術の時間、長方形の中をいくつかに区切って、鉛筆で白から黒へのグラデーションを描く、という課題があった。私は絵は得意なほうだと自負しており、だからこの課題にも結構自信があったのだけれど、教室を巡回していた先生に、こう言い放たれた。

「うーん、全然、段階の描き方が粗いねえ」

3メートルもの高さを誇るプライドを持つ私は(心理テスト調べ)、だからこういうことを言われると一生覚えているのだけれど

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私たちは違う国に生きているけど、それでも一緒にいることはできる:『違国日記』

私たちは違う国に生きているけど、それでも一緒にいることはできる:『違国日記』

やっぱり、この漫画に救われた記憶が色合わせないうちにレビューを書いておきたいと思いました。
思い入れのある漫画なので長文になっちゃいそうですが…。

ざっくりとしたストーリー----
高代槙生(こうだい・まきお)は
35歳の少女小説家。

群れることを好まず、ひとりの時間を大切にしていたが、姉夫婦が交通事故で亡くなり、その娘である15歳の朝(あさ)を引き取ることにする。

亡くなった姉は生前、

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その敵は、永遠に、絶対に、あなたの敵なのか?:『進撃の巨人』

その敵は、永遠に、絶対に、あなたの敵なのか?:『進撃の巨人』

(ややネタバレありですので、今更ですが、未読の方はご注意ください)

絵がうまいに越したことはないが、それよりも大切なのは漫画力だと痛感させられる作品。

新しい方の巻はストーリーが複雑になってきて読む速度が下がったが、3日で全巻(29巻)読んでしまったよ…。

複雑で読みにくいとはいえ、メッセージについて考えると後半こそとても大事だと思う。国にしてもSNSにしても敵対ばっかりが目につく今こそ、読

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見た目はエリート・中身はポンコツ、鷹野ツメ子の行く先は?:『無能の鷹』第一話レビュー

見た目はエリート・中身はポンコツ、鷹野ツメ子の行く先は?:『無能の鷹』第一話レビュー

コミックス派の私は、漫画雑誌って滅多に買わない。

しかし、瀧波ユカリさんのツイートが気になって、今月号のKiss(電子版)を買ってしまった。

これからどう転ぶかまったくわからないが、第一話がとても好みだったので、おすすめポイント2つを記しておきたい。

おすすめポイント1:鷹野さんの破天荒なキャラクタースマートな身のこなし
公共放送のアナウンサーのような
きれいな発声
その場しのぎではなく

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『青野くんに触りたいから死にたい』の、印象的なシーンベスト3

『青野くんに触りたいから死にたい』の、印象的なシーンベスト3

椎名うみさんと押見修造さんの対談がめちゃめちゃおもしろくて(漫画を描く人が読んだら学ぶところがとても多いと思うし、読み手としても一層深く読めるヒントがもりもり)、もっと多くの人に『青野くんを触りたいから死にたい』を読んでもらって椎名さんをハイパーお金持ちにしたい!という気持ちが高まったので、印象的なシーンランキングを開催します。

※私は、よいクリエイターはみんなハイパーお金持ちになる世の中にした

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ハードな運命と戦うキラキラお目々の美しさよ:『乙女怪獣キャラメリゼ』

ハードな運命と戦うキラキラお目々の美しさよ:『乙女怪獣キャラメリゼ』

私は、イケダハヤトさんのTwitterでこの漫画の存在を知った。

それから、「心の気になる漫画リスト」にずっと入れてたんだけど、昨日ついに試し読みしてしまってね…。

まあ、予想通り、既刊(2巻)全部買ったよね…。

今、めちゃめちゃ愛が溢れてどうしようもないから好きなポイントを記録しておこうと思う。

1.絶望的な運命に抗おうとする美しさ女子高生が人外のものになっちゃう、という設定、どこで見た

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私の遺骨を読んでね:ダルちゃん

私の遺骨を読んでね:ダルちゃん

なぜ子供を生んだのか、という話に至ったとき、職場で一番都会が似合う先輩は「自分がここにいた証拠が残したかったからかなあ。私が死んじゃったとしても、子供がいたら、私のかけらは未来に残るじゃない?」と言った。

私は長生きしたいわけじゃない。こんなくそみたいな世の中でどうして生を更新していきたいと思えるだろう、と毎月思っている。

それでも、この話を聞いたとき、私が子供を生まずに死んだら、私の存在はな

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私なら、ハンバーガーも投げない:なれた手つきでちゃんづけで(『36度』より)

私なら、ハンバーガーも投げない:なれた手つきでちゃんづけで(『36度』より)

最近の私はなるべく色々なものが読みたくて、ある作品を何度も読み返すことは少ないのだけれど、ゴトウユキコさんの短編集『36度』は別。特に気に入っている話を、何度も読んでしまう。

例えば、「なれた手つきでちゃんづけで」という話。
もっと多くの人に読んでほしいから、今日はこの漫画の特に印象に残ったところを、ふたつ、書いてみようと思う。

あらすじ志村シゲルは漫画家。突然アシスタントが辞めてピンチヒッタ

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ずるくない人の成功だけ認めるね。:大家さんと僕

ずるくない人の成功だけ認めるね。:大家さんと僕

少し前に、矢部太郎さんの漫画『大家さんと僕』を読んだ。何かを読んだり観たりしたあと、他の人はどんな感想を持ったのか調べるのが好きなので、やっぱりすぐに「大家さんと僕 感想」で検索をかけたのだった。

そこで引っかかったのが、矢部さんのお父さんが絵本作家だ、という情報をめぐってのあれこれだった。

ある人はTwitterで「父親が絵本作家なら、処女作が優れているのも当たり前だ、そういう血筋なんだか

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