右翼の発想はエスノセントリズムである。しかしエスノセントリズム自体が中国の攘夷思想であったり西欧の国民軍を中核とするナショナリズムの亜流にすぎないのだ。

しかしこれはすべてウソである。日本人というのは鼻っから単一民族ではない。列島の異なった多部族と渡来部族が共同で造った国である。そして俗に云う近現代日本人なんてものは西欧列強に対抗するために近代以降に創ったものにすぎない。

天皇(大王)が随時頂点に君臨していたわけではない。仮にそうならなぜ六波羅探題があるのか?臣籍降下から鑑みて関連性はあるが随時天皇が日本をハンドリングしてきたわけではない。

おまけに天皇と太政天皇が同時に君臨する時代や南北朝時代には天皇が2人君臨していた。その場合どう説明するのか?どちらもトップに君臨していたのか?

日本の文化は中国や朝鮮から伝来したものがほとんどである。桓武天皇の母方は百済貴族である。坂上田村麻呂や最澄や空海もそうだと云われている。

臨済宗ですらそれは宋に留学した栄西が持ってきたものである。江戸時代に主流であった朱子学もまた宋の時代に生まれた新儒教であった。秦氏や漢氏といった有力氏族も有名であろう。奈良や京都は渡来系の技術や文化がふんだんに盛り込まれている。国風文化はそれを継承しながらもアレンジしたものだった。

そんなに日本独自のものが好きなら漢字を一切使わなければいい。ひらがなやカタカナも漢字由来だから使わなければいい。アルファベットを使わなければいい。自分で文字でも作ればいい。

法律や政治機構は中国由来であり西欧由来である。そんなに日本独自のものが好きなら自分で法律と政治機構を造ればいい。

神社や寺など行かなければいい。庭園や公園に行かなければいい。お米やパンも食べずにお茶を飲まなければいい。お金も使わずパソコンもスマホも使わなければいい。

マクドナルドにもスタバにも行かずデパートにも行かずコンビニにも行かなければいい。アマゾンも使わずツイッター(X)も使わなければいい。すべて外来のものだ。

日本文化は西欧とは異なっているという発想がオワコンである。そもそも風土は違っても近代以降概ねのコンセプトは西欧から来ている。現代日本人が大好きな社会という「言葉」は外来語を訳した概念だ。

神仏習合文化は主に中国起源であり、日本にあった文化ではない。東南アジアにも存在する。そもそも多神教文化はエジプトにもオリエントにもギリシアにもローマにも北欧にもあったものだ。プロセスとしては珍しくない。

またヤマト朝廷は蝦夷や隼人を征伐したり近代政府は廃仏毀釈をしたりしているので決して寛容ではない。どちらかといえば神仏を利用して同化政策を行っていっただけだ。尊王攘夷や一世一元の制や教育勅語も中国思想のパクりであった。

神社が日本由来というのも相当怪しい。

何度も東アジア文化と接触しながら構築していったのが神社文化だ。

神道は儒教によって構築された部分が大きい。宮大工は朝鮮から来た僧侶である慧滋と慧聡が飛鳥寺を建立したのが起源である。

武士に関してはジャポニズムの影響で「武士とは文武両道だ。サムライは道徳心の塊だ。」と思う人々がいると思う。しかしこれも大嘘であろう。そもそも武士が日本独自の文化なのかも相当怪しいと言わざるをえない。

基本的に鎌倉時代の武士は脳筋であり弓が主流であった。江戸時代の武士のような文学素養は微塵もなく追従性も乏しい。

『御成敗式目』に『葉隠』『武士道』のようなアホな自己犠牲観念など微塵もない。

江戸時代の朱子学(=宋学)的な大義名分論と文治統制の融合によって生成されていったのが大方の痴愚が考える上意下達文武両道的な武士観であろう。それを中枢に据えて尊王攘夷を構築していったのが長州藩の起爆剤である水戸学だろう。

やはり現代日本人がなぜここまでアホなのかといえばマイルドなエスノセントリズムに陥っているからであろう。すなわち歴史を自省して構築できないので、陳腐な自惚れ(=ウリナラリズム)から永久に脱する事ができない。

「中国や朝鮮や東南アジアとは違う独自の日本」「欧米とは違う独自の日本」というアホなエスノセントリズムこそが低偏差値の発想である。ここにスピやサブカルが付随する事で一層下らない歴史観が形成される事になる。

日本が日本として歴史を紡いできた事など1秒もなく東アジア文化や南蛮文化や蘭文化や西欧文化や米文化に取り込まれる形でしか存在しなかった事を認められないから常に低偏差値だ。

サブカル低偏差値が歴史の話に関与する事ですべての文脈が破壊されていく。政治や経済や教育や芸術や文化に右翼とスピが携わった時点でオワコンだ。