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深夜に通行人が、血まみれで倒れていた話をしようと思う。


ちょっとむかしの話になるのだが、深夜にお酒が足りなくなり、近くのコンビニ(いつものところ)に買い出しに行った帰り、マンションまでの道のりを酔っ払いながら歩いて帰っていると、ぼくの歩く数十メートル先の路上で、中年太りの男性が、なぜか血まみれで倒れていた。

「え? どういうこと?」

その周りには数人の男女が群がっており、なぜかゲラゲラと笑っている。

友だち? いじめ? 集団暴行? 金銭の未払いでリンチでもされた?

笑っているのを見る限り、酔っ払ってずっ転けたのを笑われているのか?

など、色んなことを考えながら、その様子を観察していると、どうやら全員酔っ払っているらしく、とにかくその周りに群がっている連中も、喋っていても呂律が回っていない。

さすがに近くに飲み屋街があるだけに、深夜の治安は悪いようだ。

ちょうど、そのとき、ぼくの数メートル先を女性が歩いていたのだが、女性もその光景に驚いてしまい、なんの躊躇もなく、血まみれで倒れている男性を素通りしていく。

そりゃそうだ。

誰もあんな連中と関わりたくなどない。もし助けて自分まで巻き添えを食らったら、堪ったモノではない。

もちろん、ぼくだってそうだ。

一瞬、倒れている男性に声をかけるか迷ったのだが、さすがに相手が8人くらいの集団(周りで笑ってる連中が)だったこともあり、助けるのはあまりにも分が悪い。倒れている男性には悪いとは思いながらも、自分の保身も考え、「ごめーん……」と心の中で謝罪をしつつ、その男性を見捨てて、ぼくも通りすぎることにした。

ただ、見捨てたとはいえ、気になるのは気になるため、何度も後ろをふり返りながら、マンションまでの道のりを歩いて帰っていたのだが、ほんの数メートル先に交番? 派出所? があるのに、警察も一向に出てくる気配がない……。

「おいおい、警察、さっさと出てきて、仲裁するなり、助けるなりしろよ……」

そんなことを考えながら、やっぱ110番だけはしとくか? と考え直し、「助けるのは無理でも、せめて通報くらいはしてあげよう……」と、ポケットからスマホを取り出そうとしたそのとき、やっと、交番から警察の人たちが出てくるのが見えた。

「おいおい、遅せーよ!!」

などと心のなかでツッコミを入れながら、ポケットから取り出しかけたスマホを、もう一度ポケットにしまい、マンションまでの帰り道を、ときどきふり返りながら、とぼとぼと帰った。

ただ、警察が来たとはいえ、その後のその男性の行く末も気になったので、マンションの上の階から眼下の様子を確認しようとしたのだが、ちょうどべつの建物が邪魔して、よく確認することができなかった。

仕方なく部屋に入り、さっきの一件で醒めかけた酔いを、ぼくは買ってきたアルコールを注入して、再度、呑み直すことにした。



ごめんなさい。今回は、なんのオチも用意していないです。

ただ、『血まみれで倒れてる人がいた』ってだけの話でした……。



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