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自分を守る言い訳の作り方【オンラインナースのお仕事】

※この記事は、双極性障害の朝日さんの原稿をもとに、看護師の私の視点を入れ書き起こしたエッセイです。


しなやかに生きるには、誰か一人のせいにはしないこと。私、あなた、それ以外の運や天候などどちらにもどうにもできない部分。それぞれ3当分にして、それぞれ言い訳を作ったらいいと思う。
自分だけが悪いと思い込むことは、生きていると本当にたくさんあるけれど、そうでもないと思えるだけで、だいぶ生きるのが楽になる。

朝日さんの原稿より

世界的名著『FACTFULNESS』では、人間には「犯人捜し本能」が備わっていると書かれています。犯人捜し本能とは、何か悪い出来事が起きたとき、単純明快な理由を見つけたくなる傾向のことを言います。

この人間が持つ本能は、看護師として働いているときに、顕著に現れました。何か重大なミスを起こしたときはインシデントレポートを書き、事象を振り返ります。これは、誤った医療行為の再発防止に役立つものです。しかし、いつしか私は「いかに自分が悪かったのか」を書くようになりました。
「自分が悪いとすれば物事は丸く収まる」それはまさしく、対象が自分に向けられた犯人捜し本能だったのです。

レポートは提出すれば終了というわけではなく、看護師長と面談し、場合によっては看護部長クラスの方も同席し話し合いが持たれることもありました。このような経過を踏んでいったスタッフは、辞めていくのが常でした。私もその一人と言えます。

だから、朝日さんの原稿を読んだときに「この考えが、看護師として働く人たちに広がったらいいな」と思いました。患者さんのせいにするというのは、絶対にあってはいけないことだけど。せめて選択肢として「チームメンバー」や「環境」があってほしいと思うのです。

自分が悪いと書けば書くほど、思えば思うほど、苦しくなっていきます。「自分だけのせいじゃない」そう思えたら、どれだけ救われることでしょう。「私が悪い」「あなたが悪い」そう言ってしまうは簡単です。けれども、どの仕事でも、人との関りでも、どうか自分だけを責めないでほしいと思っています。そして、誰かが傷ついていたら、この話をして、一緒に考えてあげください。

「言い訳」という言葉はいかにもネガティブな響きで、聞いた当初は私も受け入れられませんでした。「誠実に生きていきたい」と願う私には、言い訳なんぞ縁もゆかりもないものだと思っていたからです。しかしながら、原稿を読み進めていくと、朝日さんの「言い訳」とは、私にとって「自分を守るためのフレーズ」だと言い換えられるようになりました。

私は本当に嘘の一つもつけなくて、それが人間としてあるべき姿だと長い間信じてきました。ご想像通り、それって本当に辛い生き方で、この持って生まれた性格のおかげで、何度も心と体を壊しました。けれども、言い訳というお守りフレーズを備えておけば、少しだけラクに呼吸ができる気がしています。それは決して不誠実ではありません。生き延びていくための知恵。朝日さんの言葉を借りると、薬のようなものなのです。


※このマガジンは、個人が特定されないように書こうと留意しています。でも、朝日さんは「別に自分だと気づかれても構わない。それよりも、同じ病気の人を救えるのならという思いが優先する」とのこと。関係者の方は、そっと見守ってくださると幸いです。

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