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※今回はこちらの続きです。
~その時がついに訪れた~ ネガティブな過去を受け入れる


https://note.com/tukuda/n/n70afb7094fd8




心電図が取り外され、病室から機械が持ち出されている間、のり子は弟の腕の近くまで身体を曲げて、口にタオルをあてながら声を殺して泣いていた。

今まで抑えていた感情が一気に溢れ出しそれがなみだに姿を変えてのり子の体外へ放出され

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※今回はこちらの続きです。
~無菌室から一般病棟へ~ ネガティブな過去を受け入れる

https://note.com/tukuda/n/naef583d520e0



弟はのり子が持っていないものをたくさん持っていた。
ユーモアがあり友達が多い。スポーツ万能でポジティブシンキング。

だから弟でありながらのり子は弟を尊敬していた。
年下でありながら自分とは違う偉い人と思っていた。



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※今回はこちらの続きです。
↓バッタさん~ネガティブな過去を洗い流す~
https://note.com/tukuda/n/n163d3558ee6e?from=notice




「これからの治療の方向性が分かりましたので無菌室から一般病棟へ移ります。」
佐々木医師はにこやかに弟に向かって話をした。


大学病院では数人の医師がグループを組んで弟の治療にあたっていた。
佐々木医師はその中で一

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※今回はこちらの続きです。
↓同じ病室だったNさんの死
https://note.com/tukuda/n/n7757ab342385



のり子の弟は無菌室で28歳を迎えた。
単調な入院生活にならないよう、二人はちょっとしたイベントを計画して楽しんでいた。

その中の一つに宝くじを買うことがあった。普段購入する機会がない二人だったが、夏と冬に大きな宝くじがあることは知っていた。
その宝くじはど

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※今回はこちらの続きです。

https://note.com/tukuda/n/nc441491ddd01

のり子の弟は入院してから毎日、勤務先である新聞社の新聞を読んでいた。

そして、必ずお悔やみ欄はひとりひとり、自分に関係がある方かどうかを見ていた。


ある日、弟はお悔やみ欄のお一人にくぎ付けになった。


その方はNさん。
ついこの間までの一般病棟で向かいのベッドにいた方だった。

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※今回はこちらの続きです。

https://note.com/tukuda/n/n21a49f2f9ed5?from=notice





弟は一般病棟から無菌室に移る前に、病院の理髪店の方にお願いして散髪をしていただいた。
弟はこれから治療が厳しくなると医師から聞いていたから、自分に気合を入れる意味もあり、髪を五厘刈りにした。

そんなヘアスタイルは高校の野球部以来である。
顔立ちのはっき

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※今回はこちらの続きです。

https://note.com/tukuda/n/nb314d9df08ff?from=notice





話は少し前に戻ります。



のり子の弟が入院してまもなく、今後の治療中に血液が急遽必要になることもある為、献血をお願いしたいと医師から言われた。


のり子はまず、弟の勤務先である新聞社に電話をした。


いつもお世話になっている弟の直属の上長のTさ

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※今回はこちらの続きです。

https://note.com/tukuda/n/n3b90c1a03ed0?from=notice



のり子の弟は6人部屋の方々とも良好な関係だった。


同じ病室の人たちは、それぞれ病名は違えども、ある意味、同志だった。退院していく同志の後ろ姿を見ながら、自分も早く退院できるようにしようと弟は言った。



弟は吐き気と高熱故にベッドが大きく揺れる状態で体

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※今回はこちらの続きです。

https://note.com/tukuda/n/n440fbae3820e?from=notice




「ところで、息子さん(弟)には本当の病名を伝えても大丈夫でしょうか。」


T部長はのり子達に向かっておっしゃった。

両親ものり子も考えたが即答できない。

弟は27歳で立派な大人だから、自分の病名を知る権利はある。
家族の私たちがそれを阻止するのはおか

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※途中、咳が出てすみません。
※今回はこちらの続きです。

https://note.com/tukuda/n/n3c0436897708?from=notice




「検査の結果、緊急入院することになりました。ご本人には連絡済みです。病状の説明をしますので、ご両親、こちらに来てください。」

地震などの緊急速報を話されているアナウンサーのような、少し慌てた感じで大学病院の先生はおっしゃった

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今回は、こちらのnoteの続きになります。
↓「私は税のプロになる」根拠のない自信がなぜかあった

https://note.com/tukuda/n/n591966513995



「私は税理士事務所に勤めながら税理士になる。」
そのような大志を抱いてのり子は11年間勤めた会社を円満退職した。


のり子には「税のプロになる」、その夢でいっぱいだった。自分はなれるとなぜか思っていた。



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※今回はこちらのnoteの続きです。
↓いいことばかりだった私の初めての挫折

https://note.com/tukuda/n/ncdf4cd49287f?from=notice




家族に税に詳しい人がいて欲しい。
ある件でのり子はそう痛感した。

では誰が適任か?
最終学歴が尋常小学校の両親は想定外。
姉は既に嫁いでいる。
残るは弟と私。



そうか!
私が税に詳しい人になればいいん

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※今回はこちらのnoteの続きです。

https://note.com/tukuda/n/n2e8a02988c9e?from=notice




のり子は快適なひとり暮らしを続けるうちに都会で暮らす自分を想像するようになった。


のり子の勤務先は東京に本社があり、社内で転属できる制度がその頃始まり、のり子は東京の本社の事務管理部に転属したいと思うようになった。


都会での独り暮らしは怖

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※今回はこちらのnoteの続きです。

https://note.com/tukuda/n/ndba5c76dba52





自分から進んで事務職から販売職に転属したのり子は水を得た魚のように毎日を楽しんでいた。


「やってみたいと思うことはやってみよう。」

その時ののり子を言葉で表現すればこうだった。


そしてのり子は20代後半になって、「ひとり暮らしをしてみたい」と強く思うようにな

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