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建築と福祉が交わるところ。女子大生の読書記録

大学図書館の書庫をふらついていると、まちづくりコーナーに遭遇。
目をどこに向けてもタイトルに惹かれる。ズラリと並んだ本棚から5冊を選び取り、初めに読んだのはこの本。

藤村龍至×山崎亮対談集 コミュニケーションのアーキテクチャを設計する

コミュニティデザイナー・山崎亮さんと建築家・藤村龍二さんの対談で構成される本である。
お二人とも建築業界の方なのだが読み進めるほど福祉の視点から学ぶことがたくさんあり、今回はそれを簡単にまとめる

多様な要素を統合してビジョンを描く

 ものをつくれば売れた時代は終わり、今は「作る」「造る」のではなく「創る」時代。そんな時代に前者を専門としてきた建築家(アーキテクト)は何ができるのか。山崎さんはこう述べる

テクネ―に、設備や法規や予算を代入して、それらを一つに美しく統合(アーク)していく職能が建築家だと言われてきました。アーキテクトだと言われてきました。しかし、これからはものが建たない時代になる。そうであれば、テクネーの部分に「八百屋のおばちゃんの意見」や「漁師のおっちゃんの意見」「行政の意見」など、ばらばらな意見を代入し、それらを美しく統合してビジョンを示すのも、アークテクトの役割じゃないかなと思うんです。

いろんな要素を活かしてビジョンを示す。
それってソーシャルワークそのものじゃないか!

ミクロソーシャルワークではクライエントの経済・心身・生活状況・ニーズ・社会資源を統合して、クライエントがエンパワメントされるような長期・短期目標を提示する。
メゾソーシャルワークでは多様な価値観や立場、特性から生み出されるコミュニティのビジョンを描く。
マクロソーシャルワークではインクルーシブな社会の姿を具体的に社会に訴え、社会変革を起こしていく。

授業で「ビジョンを描くことの重要性」を言われたことはなくいつもプロセス重視だけど、プロセスをよりよいものにするためにも福祉には「美しくてわくわくするビジョン」が必須だし、ビジョンを描くスキルを身に着けていかなくてはならないんだ。あらゆる要素を統合してビジョンを描くスキルは、建築から学べるのかもしれない。

福祉はもっとクリエイティブに

むしろ、人のつながりが弱くなってきたために顕在化した問題、教育や福祉の問題にこそ、クリエイティブな発想を取り入れていかないと、「前例に沿って」「制度に従って」という対応策では、教育も福祉も課題を突破できません

p172

うう…なんだか耳が痛い(笑)

ソーシャルワークは長年対人援助が中心で、社会福祉士という国家資格は既存の制度への理解度を図るものでしかないから、福祉分野は今でも「前例に沿って」「制度に沿って」ということが多いと思う

でも今、社会問題がたくさんあるのだから、今にすがったって根本的な解決にはまったく至らない。
メゾ・マクロソーシャルワークにおいてはもっとクリエイティブに、ソーシャルワーカーはクリエイティブな発想をもてるようにならなきゃなんだ


クリエイターと力をあわせよう

じゃあどうしたらクリエイティブな発想をもてるようになるのか
それは社会課題に取り組むクリエイター、デザイナーの活動を知ることから始まる

「ものをつくれば売れた時代」ではなくなった今、建築やジュエリーやファッションでもなんでも、社会課題の解決に繋げて専門性を発揮しようとしているのだとこの本から学ぶことができた。社会課題を解決しようとする波が広がっているならば、社会課題に取り組むクリエイター、デザイナーは私が想像するより多いし増えていくのだろう

障害者アートは昨今の福祉のトレンドでもある気がするが、それでもまだ福祉とクリエイターの間には距離がある気がする

ソーシャルワーカーはクリエイティビティを学ぶために、クリエイターやデザイナーも含めた多職種連携を図っていくことが必要不可欠だ


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