望楼丸

国共内戦から日中戦争における中共軍に関心があります。 ここには、学術論文や専門書水準の…

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国共内戦から日中戦争における中共軍に関心があります。 ここには、学術論文や専門書水準の記事はありません。 見つけたこと、気付いたことをメモランダムのように書いていきます。

記事一覧

【中共の統治】支配地域での反乱・鎮圧2ー建国後の大陸における国民党勢力

建国後、大陸には国民党残党勢力が存在していたことが知られている。 ここでは、以下の書籍の記事「大陸に残された反共遊撃隊150萬の解剖」を紹介したい。 政経タイムズ社…

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1日前

【書評&雑記】カール・シュミット『パルチザンの理論』

本書については、まだわからない点も非常に多いのだが、現時点での見解を示しておきたい。 カール・シュミット『パルチザンの理論』ちくま学芸文庫。 政治性、妥協のなさ…

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2日前

【近接戦闘】近接戦闘よりも、待ち伏せ射撃戦?

おそらく、中共軍にとって最も重要なのは、白兵戦(手榴弾や銃剣・刀剣をもちいた戦闘)ではなく、小銃を中心とした射撃戦だったのではないか。 本稿では、その理由として…

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5日前

終戦前の中共航空9ー瑞金にあった謎の飛行場

ブラウンによれば、コミンテルンの「フレッド」の指示で瑞金に飛行場が作られたという。 ブラウンは「何の役にも立たなかった」と否定的だが、一体何のために作られたのだ…

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5日前

中共指導者の人柄3ー毛沢東の唐辛子話

以前にも書いたが、毛沢東は「唐辛子を食べてこそ革命家だ」という趣旨の冗談をよく言っていた。 今回、新たに証言を見つけたので紹介する。 ブラウンによれば、毛沢東は…

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5日前

【近接戦闘】兵器としての槍4ーなぜ放棄されたか?

以前の記事で、槍は有効だとされつつも、放棄される方向にあったことを描いた。 日本軍が銃剣突撃を重視したことは有名である。 このように、中共軍も槍をもちいた白兵戦を…

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5日前

【近接戦闘】兵器としての槍3ー「長刀は相当の効力あり」

以下は、百団大戦中における中共軍戦闘報告書である。 「長刀」を班ごとに1本装備し、拳銃をもつ幹部も装備すべきだと述べている。 そして、「白刃戦闘」で「相当の効力…

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5日前
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【近接戦闘】兵器としての槍2ー青龍刀より槍?

ここでは、中共軍において、刀剣類では槍が最も多く使用され、青龍刀よりも使用例が多い可能性を指摘する。 以前の記事で、青龍刀の使用事例は発見しずらく、槍のほうが頻…

望楼丸
5日前

【近接戦闘】兵器としての槍ー有効だが、放棄される

以下で見るように、国民党軍・中共軍ともに槍を有効な兵器だと認識していた。 にもかかわらず、中共軍は槍を放棄する方向性を明確にもっていた。 国民党軍の内部文書ー小…

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5日前

【近接戦闘】井岡山「七〇嶺の戦闘」ー林彪の白兵突撃戦

井岡山での戦闘では、中共軍が白兵戦を実施した事例があった。 この戦闘では、林彪が指揮する部隊が白兵突撃戦を行ったことで知られる。 戦闘時期:1928年6月頃 戦闘概要…

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5日前
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【近接戦闘】待ち伏せ射撃での戦闘事例(中国東北部、第二次国共内戦にて)

これまで、中共軍は「手榴弾と銃剣」を使用した近接戦闘を重視していたという印象があった。 しかし、以下で示すように待ち伏せ射撃によって戦闘に勝利した事例も確認でき…

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5日前

【近接戦闘】指揮官を先頭にして前進

スノーは「紅軍指揮官の死傷者は非常に多い」とし、「連隊長をはじめ彼らは、通常、兵士とともに戦闘に突入する」という。 ジョセフ・スティルウェル(のち中国方面連合軍…

望楼丸
5日前

【近接戦闘】林彪・毛沢東の「突撃」への言及

スノーの著作には、毛沢東・林彪の「突撃」に関する記述が散見される。 以下にそれを紹介したい。 しかし、「突撃」とはどのような戦法なのか、具体的な説明は見つけられ…

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6日前

【毛沢東戦略】「活発な兵力」という概念ーリビング・フォース

スノーの著書に、興味深い記述(132項)があった。 「紅軍の”戦力”」と記述し、「”戦力”」には「リビング・フォース」とルビがふってある。 そして、この用語には注が…

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6日前

終戦前の中共航空8ー数機の航空機とパイロット

スノー(131項)によれば、第一次国共内戦において中共軍は「蒋の飛行機を数機捕獲」し、「三、四名の操縦士」を有していたものの、「ガソリン、爆弾、それに整備員はもた…

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6日前

【毛沢東戦略】中共軍の侵攻作戦11ー彭徳懐の語る侵攻戦略

彭徳懐は、スノーに「遊撃戦」について語った。 ここでは、数的優位の確保・奇襲の重視などが語られており、中共軍の戦い方について理解の助けになるのでよく確認しておき…

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6日前
【中共の統治】支配地域での反乱・鎮圧2ー建国後の大陸における国民党勢力

【中共の統治】支配地域での反乱・鎮圧2ー建国後の大陸における国民党勢力

建国後、大陸には国民党残党勢力が存在していたことが知られている。
ここでは、以下の書籍の記事「大陸に残された反共遊撃隊150萬の解剖」を紹介したい。

政経タイムズ社 編『中共はどう動くか : 軍事力とその背景』政経タイムズ社、1951年。

150~200万の「反共遊撃隊」?この記事によれば、「反共遊撃隊」が大陸に150~200万いるという。
この情報は、台湾の国民政府や「シェンノート少将」(フ

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【書評&雑記】カール・シュミット『パルチザンの理論』

本書については、まだわからない点も非常に多いのだが、現時点での見解を示しておきたい。

カール・シュミット『パルチザンの理論』ちくま学芸文庫。

政治性、妥協のなさに注目シュミットの主張の重要な点は、「パルチザン」が政治的存在であり、「現実の敵」であり、敵との戦争に妥協的要素がない点であろう。

こういった点から見れば、現在の西側(普遍的価値観)・中国(共産主義)・一部のイスラム国家(宗教)も、「

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【近接戦闘】近接戦闘よりも、待ち伏せ射撃戦?

【近接戦闘】近接戦闘よりも、待ち伏せ射撃戦?

おそらく、中共軍にとって最も重要なのは、白兵戦(手榴弾や銃剣・刀剣をもちいた戦闘)ではなく、小銃を中心とした射撃戦だったのではないか。

本稿では、その理由として以下を挙げる。
・部隊の戦力判定に小銃数が言及されること
・白兵戦での損害を回避しようとした可能性

また、射撃戦は、待ち伏せ攻撃のスタイルが採用されたこと、小銃を主体としつつも機関銃も参加していたことを述べる。

また、中共軍における手

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終戦前の中共航空9ー瑞金にあった謎の飛行場

終戦前の中共航空9ー瑞金にあった謎の飛行場

ブラウンによれば、コミンテルンの「フレッド」の指示で瑞金に飛行場が作られたという。
ブラウンは「何の役にも立たなかった」と否定的だが、一体何のために作られたのだろうか。
ソ連からの援助を期待したのかもしれないが、航空機の航続距離からして困難だろう。

中共軍は数機の航空機を鹵獲していたようなので、そういった鹵獲機が運用されていた可能性は否定できない。

参考文献オットー・ブラウン『大長征の内幕 』

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中共指導者の人柄3ー毛沢東の唐辛子話

以前にも書いたが、毛沢東は「唐辛子を食べてこそ革命家だ」という趣旨の冗談をよく言っていた。
今回、新たに証言を見つけたので紹介する。

ブラウンによれば、毛沢東は「赤唐辛子こそ真の革命家の食べ物である」「赤唐辛子を我慢できない者は戦争もできない」と語ったという。

ブラウンは、自分が「唐辛子入の炒めえんどう」などに苦戦していたのを毛沢東が上の言葉を使って「嘲った」と感じたようだ。

また、毛沢東は

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【近接戦闘】兵器としての槍4ーなぜ放棄されたか?

【近接戦闘】兵器としての槍4ーなぜ放棄されたか?

以前の記事で、槍は有効だとされつつも、放棄される方向にあったことを描いた。
日本軍が銃剣突撃を重視したことは有名である。
このように、中共軍も槍をもちいた白兵戦を推奨する道もあったと思われる。
しかも、槍は一部の戦闘で有利に作用した。
だが、あえてそれを放棄したのである。
ここでは、放棄された理由について考えてみたい。

白兵戦での損害を回避するため?中共軍は第一次国共内戦時から、大兵力の敵を各個

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【近接戦闘】兵器としての槍3ー「長刀は相当の効力あり」

【近接戦闘】兵器としての槍3ー「長刀は相当の効力あり」

以下は、百団大戦中における中共軍戦闘報告書である。

「長刀」を班ごとに1本装備し、拳銃をもつ幹部も装備すべきだと述べている。
そして、「白刃戦闘」で「相当の効力」があるとされる点に注目したい。
実戦で使用したという直接の記述は見当たらないが、相当の期待をかけられている。

「長刀」とは何なのかざっとネットで調べると、「なぎなた」(薙刀)のことを「長刀」と呼称することがあるという。
しかし、「なぎ

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【近接戦闘】兵器としての槍2ー青龍刀より槍?

【近接戦闘】兵器としての槍2ー青龍刀より槍?

ここでは、中共軍において、刀剣類では槍が最も多く使用され、青龍刀よりも使用例が多い可能性を指摘する。

以前の記事で、青龍刀の使用事例は発見しずらく、槍のほうが頻繁に使用されていた可能性を指摘した。

前回の記事でも、槍の使用事例などを概観したが、青龍刀よりも槍のほうが頻繁に使用・証言されているという印象を受けた。

【近接戦闘】兵器としての槍ー有効だが、放棄される

【近接戦闘】兵器としての槍ー有効だが、放棄される

以下で見るように、国民党軍・中共軍ともに槍を有効な兵器だと認識していた。
にもかかわらず、中共軍は槍を放棄する方向性を明確にもっていた。

国民党軍の内部文書ー小銃よりも槍国民党軍は、白兵戦などの観点から、小銃よりも槍を採用しようとしたことがある。
以下の記事で記述したように、国府軍内部文書には「白兵戦ニ有利ナル槍兵」という言葉が見られ、部隊の半数近くを小銃ではなく槍・手榴弾で武装させる構想もあっ

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【近接戦闘】井岡山「七〇嶺の戦闘」ー林彪の白兵突撃戦

【近接戦闘】井岡山「七〇嶺の戦闘」ー林彪の白兵突撃戦

井岡山での戦闘では、中共軍が白兵戦を実施した事例があった。
この戦闘では、林彪が指揮する部隊が白兵突撃戦を行ったことで知られる。

戦闘時期:1928年6月頃
戦闘概要:井岡山に対する三度目の国民党軍による掃討作戦。

本稿では、「星火燎原」をもとに本戦闘について記述する。
陳士榘「七〇嶺の戦闘」『星火燎原 中国人民解放軍戦史 1』新人物往来社、207-214項。

槍を主装備とする部隊「二九連隊

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【近接戦闘】待ち伏せ射撃での戦闘事例(中国東北部、第二次国共内戦にて)

【近接戦闘】待ち伏せ射撃での戦闘事例(中国東北部、第二次国共内戦にて)

これまで、中共軍は「手榴弾と銃剣」を使用した近接戦闘を重視していたという印象があった。
しかし、以下で示すように待ち伏せ射撃によって戦闘に勝利した事例も確認できた。

第二次国共内戦における対「土匪」戦闘戦闘時期

戦闘時刻は、夜間。就寝前の時刻だった。
気象条件は雪で、吹雪だったようだ。
1946年~47年にかけての冬季だと思われる。

戦闘地域

中国東北部。

戦闘部隊

中共軍の1個中隊(

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【近接戦闘】指揮官を先頭にして前進

【近接戦闘】指揮官を先頭にして前進

スノーは「紅軍指揮官の死傷者は非常に多い」とし、「連隊長をはじめ彼らは、通常、兵士とともに戦闘に突入する」という。
ジョセフ・スティルウェル(のち中国方面連合軍指揮官)がスノーに対して語ったところによれば、「紅軍将校の口ぐせ」が「ものどもつづけ!」(指揮官先頭)である点が、中共軍の戦闘力を作り出しているという。

このような指揮官先頭の方針によるのだろうか、第一次・第二次包囲掃蕩戦における紅軍将校

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【近接戦闘】林彪・毛沢東の「突撃」への言及

【近接戦闘】林彪・毛沢東の「突撃」への言及

スノーの著作には、毛沢東・林彪の「突撃」に関する記述が散見される。
以下にそれを紹介したい。

しかし、「突撃」とはどのような戦法なのか、具体的な説明は見つけられなかった。
もしかしたら、「人海戦術」といわれる朝鮮戦争での突撃戦法のルーツがここにあるのかもしれない。

林彪は突撃の創始者スノー(72項)によれば、林彪は「”突撃”の創始者として知られている」という。
そして、「馮玉祥将軍がこの戦術に

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【毛沢東戦略】「活発な兵力」という概念ーリビング・フォース

【毛沢東戦略】「活発な兵力」という概念ーリビング・フォース

スノーの著書に、興味深い記述(132項)があった。

「紅軍の”戦力”」と記述し、「”戦力”」には「リビング・フォース」とルビがふってある。
そして、この用語には注がついており、「紅軍が用いる言葉で、主要な戦闘部隊を意味する。」とある。

何かの文献で見た「敵の活発な兵力」という言葉は、おそらく「リビング・フォース」と同義だと思われる。
「敵の活発な兵力」については、以下の記事で言及した。

参考

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終戦前の中共航空8ー数機の航空機とパイロット

終戦前の中共航空8ー数機の航空機とパイロット

スノー(131項)によれば、第一次国共内戦において中共軍は「蒋の飛行機を数機捕獲」し、「三、四名の操縦士」を有していたものの、「ガソリン、爆弾、それに整備員はもたなかった」という。

数名のパイロットが中共軍に参加していたこと、これに対して「整備員」はいなかったとする点に注目したい。
「空軍」の芽が出ていたとは決して言えないが、「空軍」の種はこの時期からまかれていたと思われる。

参考文献エドガー

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【毛沢東戦略】中共軍の侵攻作戦11ー彭徳懐の語る侵攻戦略

【毛沢東戦略】中共軍の侵攻作戦11ー彭徳懐の語る侵攻戦略

彭徳懐は、スノーに「遊撃戦」について語った。
ここでは、数的優位の確保・奇襲の重視などが語られており、中共軍の戦い方について理解の助けになるのでよく確認しておきたい。

ここでは、侵攻的な特徴について述べる。

彭徳懐(202項)によれば、「遊撃隊は静止」してはならず、「絶えず拡大し、・・・新しい外側のグループ」を作っていく必要があるという。
つまり、常に外部に侵攻し続けるのだ。

参考文献エドガ

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