おかき

読書は、どこにでもどんな時代にも連れて行ってくれる、何にでもなれて色々な体験をさせてく…

おかき

読書は、どこにでもどんな時代にも連れて行ってくれる、何にでもなれて色々な体験をさせてくれる最高のレジャーです。 読書感想文を徒然に綴っていきます。

最近の記事

「あたしとママのファイトな日常/山本幸久」を読んで感じたこと

ものすごーく気持ちの良い作品でした。 やっぱり山本さん、好きだわぁー。 ムカつくいじめっ子の公平を一発殴ってやりたいという気持ちでボクシングを始めだ小学校4年生の風花、そして、職場の後輩にイラつく日々を送りつつ洋裁店で働いている母親の陽菜子、この二人の目線で交互に語られる物語でした。 ボクシングを通じて知り合った人達、ボクシングを始めたことでの出来事、ジムでの練習や自宅での自主練や試合などボクシングという競技を通じて、風花はボクシングの技術だけではなく心も成長していきます

    • 「未明の砦/太田愛」を読んで感じたこと

      大手自動車メーカー「ユシマ」で働く4人の若い非正規工員達が指名手配される事になったのはなぜ?逮捕寸前で彼らを逃がすために密告電話をしたのは誰? 謎だらけで始まり、夢中になって読んだ616ページのこの作品、驚いたり、憤ったり、ホロリとしたり、感情が揺り動かされまくりで大変でした。 それぞれの事情で寮にいるしかない夏休みを過ごすはずだった4人に海辺の田舎での夏休みを与えてくれたのは「ユシマ」のベテラン正規工員の玄羽さん。その玄羽さんが過酷な仕事中に亡くなった死を労災と認めず有耶

      • 「阪急電車」をオタク的に楽しむ旅

        わたくし、オタク気質な本スキーです。 時折、聖地巡礼的な旅をしたくなります。 随分前のことですが、「阪急電車15分の奇跡の旅」を感じる旅と題して楽しんだオタク旅行を思い起こしていきましょう✌️ 「阪急電車」は宝塚から西宮北口までの短い路線、今津線での群像劇を描いた作品です。 たまたま乗り合わせていた人達の人生が微かに交差する様子を覗き見してるようで、とっても興味深いのです。 まずは梅田から宝塚に向かいます 「宝塚」では読書が趣味の男女の出会います。 車窓から見えた「生

        • 「ポイズンドーター・ホーリーマザー/湊かなえ」を読んで感じたこと

          ・マイディアレスト ・ベストフレンド ・罪深き女 ・優しい人 ・ポイズンドーター ・ホーリーマザー 6遍の短編集です。 母と娘、妹と姉、仕事上のライバル、同級生と、どれもこれも女同士のイヤミスです。 同じ事柄でもそれぞれの見方、捉え方でガラッと風景が変わるもの。 何が正しいのか?正しさは人の数ある。 読み終わった後のザラっとした感じ、ずっしりと重い気分になるんだけど、湊かなえさんを読んだなぁ〜という満足感があります。 「優しい人」の最後の最後の文章が読み終えた後の心には

        「あたしとママのファイトな日常/山本幸久」を読んで感じたこと

          「それ自体が奇跡/小野寺史宜」を読んで感じたこと

          夫婦三部作の三作目です。 もう大丈夫。この夫婦もの、読み慣れてきました。 仕事がいまいち出来ないけど人柄が良く見た目も良い貢と、目立たないけど仕事が出来る綾。 貢がJリーグ入りを目指すクラブチームでアマだけど本気のサッカーをやることになったと事後報告をしたことから、そろそろ子どもをと思っていた綾は相談もなかったことに不満をつのらせる、そんな結婚して3年目の田口夫婦のとある1月1日二人が勤める百貨店唯一の定休日から、その翌年の1月1日までを描いていました。 貢のサッカー練習

          「それ自体が奇跡/小野寺史宜」を読んで感じたこと

          「近いはずの人/小野寺史宜」を読んで感じたこと

          夫婦三部作の二作目です。 読み終わってすぐは、どんよりな気分。微妙…でした。 しばらく寝かせてて、感想を書こうと思い起こしてみたら、なるほど〜!とわかってきました。 結婚して4年目、33歳の北野俊英はタクシー転落事故で妻を失いました。 不思議なことに、妻は友達と旅行に行ったはずなのに一人でタクシーに乗っていたのです。 哀しみと困惑の俊英は毎晩500mlビールを4〜5本飲みながら妻の携帯電話のロックを解除しようと0000から順に打ち込んでいます。痛々しいです。 5ヶ月目でとう

          「近いはずの人/小野寺史宜」を読んで感じたこと

          「その愛の程度/小野寺史宜」を読んで感じたこと

          小野寺さん夫婦三部作の一作目です。 う〜ん、微妙。モヤモヤする〜。 上司だった年上妻と結婚した豊永守彦はそこそこ顔が良くてそこそこ優しくて点数をつけると平均点以上だけど、あと一歩が踏み込めない。 妻の職場の親睦会を兼ねた河原でのバーベキューで、妻の連れ子葉月と妻の職場女性の子ども留衣の二人が川で溺れた時に守彦が葉月と思って助け出した子が留衣だったことから歯車が狂うのです。 その後は別居、離婚、出会い、恋心、傷心、出会いと目まぐるしい半年間です。 この期間で守彦は少しは成長

          「その愛の程度/小野寺史宜」を読んで感じたこと

          「渋谷に里帰り/山本幸久」を読んで感じたこと

          山本幸久さんのお仕事小説は大好物なのです。 随分前の本だけど手にとってなかった本を見つけたので、わくわくと読んでみました。 寿退社する営業成績トップの先輩の後任となった峰崎稔が引き継いだエリアはよりにもよって渋谷。稔にとって渋谷は鬼門で20年も避けてきたところだったのです。 鬼門というのは、稔は渋谷で育ったけれども小学生の頃に家業のパン屋の経営難で父親が店をたたむことになり、友達にも黙って渋谷から引越したことが負い目になって近寄るのが怖くなってしまってるという理由から。

          「渋谷に里帰り/山本幸久」を読んで感じたこと

          「あずかりやさん/大山淳子」を読んで感じたこと

          ハードな本を続けて読んでたので、優しい気持ちになる本を手に取りました。 1日100円で、どんなものでも預かります。 東京の下町、明日町こんぺいとう商店街の片隅で藍染ののれん「さとう」を掲げて、ひっそりと経営しているあずかりやさん。 店主は桐島透さん。屋号は「桐島」です。 正しい屋号を知っているのは開業手続き窓口の職員さんだけ。 その理由は、店主が目が見えない者で、そののれんの文字を知らないからです。 と、そこはあまり重要ではないのに、いたく面白く感じてしまいました。 私の

          「あずかりやさん/大山淳子」を読んで感じたこと

          「母という呪縛 娘という牢獄/齊藤彩」を読んで感じたこと

          2018年3月に発覚した「医学部9浪母親バラバラ殺害事件」を覚えていますか? 滋賀県守山市の30代の看護学生が母親を殺害後に遺体を解体して遺棄した殺人事件です。 本書は、著者がこの事件を起こした女性を公判中は接見を続け、服役してからも文通を重ね、詳細な取材から書かれたノンフィクションの渾身のルポタージュです。 彼女が母親を殺害した理由は、医者になるよう強要する母親から9年間も医学部受験を強いられる苛烈な教育虐待と過剰な干渉にさらされ続け追い詰められたことからでした。 受

          「母という呪縛 娘という牢獄/齊藤彩」を読んで感じたこと

          「みつばの泉ちゃん/小野寺史宜」を読んで感じたこと

          昨年、みつばの郵便屋さんシリーズを良い気分で読んでました。 こちらは、その準レギュラーである片岡泉ちゃんの半世紀でした。 9歳から33歳までのエピソードを、前半は周りの人たちの視点で、後半は泉ちゃん本人が語っています。 語り手は、 小学生時代は近所のお姉さん明石弓乃 中学生時代は部活の友達、米山綾瀬 高校生時代は可愛い従兄弟、柴原修太 アルバイター時代は上司の杉野大成、そして、元彼の井田歌男 30歳の時は片岡泉 31歳〜33歳は木村泉 小野寺さんらしく登場人物はみんなフル

          「みつばの泉ちゃん/小野寺史宜」を読んで感じたこと

          「二周目の恋(文春文庫)」を読んで感じたこと

          ・最悪よりは平凡/ 島本理生 ・深夜のスパチュラ/ 綿谷りさ ・フェイクファー/ 波木銅 ・カーマインライン/ 一穂ミチ ・道具屋筋の旅立ち/ 遠田潤子 ・無事に、行きなさい/ 桜木紫乃 ・海なり遠くに/ 窪美澄  結構、短編集好きなのです。 電車通勤してるから乗って降りての間でひとつふたつは完結しちゃうというのが気持ちいいという時間的なものと、1冊で色んな気持ちを味わえちゃうというお得感ですね。 7人の人気作家さんによる恋愛アンソロジーです。恋の始まりの予感、恋の空回り

          「二周目の恋(文春文庫)」を読んで感じたこと

          「朱色の化身/塩田武士」を読んで感じたこと

          序章では昭和31年の福井県芦原温泉の大火で悲痛な思いをした市井の人達の様子が描かれており、心拍数高めに読み始めました。 元記者の大路享は元新聞記者の父親から辻珠緒という女性と会えないかと依頼を受けます。 行方不明になっている珠緒の行方を探すため、珠緒の元同僚、元上司、友人、恩師、元夫など関係のあった人々への聞き取りを行うのです。 その中で珠緒の過去と人間性が徐々に見えてきます。 恵まれない幼少期でも賢さは際立っていたこと。京都大学を卒業したこと。大手銀行に就職したこと。その

          「朱色の化身/塩田武士」を読んで感じたこと

          「ファラオの密室/白川尚史」を読んで感じたこと

          本スキー倶楽部福岡支部の可愛い酒豪書店員さんに激推しされ、彼女が勤める書店に来店して、この本を購入させてもらいました。 古代エジプトを舞台としたファンタジーミステリーで、とっても面白かったです。 私が小学生くらいの頃に古代エジプトのブームがあったのです。テレビの特番で吉村作治さんがピラミッドを調査研究してたり、ミイラ展や古代エジプト展があちこちで開催されたりしてました。当時は古代のロマンと異国への憧れに満ち満ちてました。 そんな時代を過ごしてきた私ですから、死者が蘇る設定

          「ファラオの密室/白川尚史」を読んで感じたこと

          「タスキ彼方/額賀澪」を読んで感じたこと

          きっかけはボストンマラソンの会場で、新米駅伝監督成竹と学生最強ランナー神原が、古びた日記を受け取ったことから。 戦時中、戦後、そして、現代と時間軸がクロスしながら箱根駅伝の物語が綴られています。 「最後の駅伝」昭和15年1月の箱根駅伝は衝撃でした。 登りを得意とし前年は5区を走ったランナーがその年は1区を走ったのは走り終えたあと出征のためにすぐに地元に帰って入営するためだったということ。 「最後に走れて良かった」と呟き、目頭を抑え「もう走ることもないな」呟いたこと。 その

          「タスキ彼方/額賀澪」を読んで感じたこと

          「光のとこにいてね/一穂ミチ」を読んで感じたこと

          父親が医者という裕福な家に育つ結珠(ゆず)と、シングルマザーの元で古びた団地に暮らす貧困家庭の果遠(かのん)。 住む世界が違う出会うはずのない二人は母親が毒親なのが共通点でした。最低限の世話はするけれど娘への愛情がない結珠の母親、極端な自然派思考を強要し自己愛だけの果遠の母親。 愛を知らずに育った二人の出会って別れての繰り返しの切なさを、7歳、15歳、29歳で描いていました。 7歳では、幼くて行動も何もかも不自由。 15歳では親の事情や他人の目で思いのままに動けない不自

          「光のとこにいてね/一穂ミチ」を読んで感じたこと