母が魔法使いに
私の両親は、私の住んでいる場所から電車で2時間ほど離れた地にマンションを買って暮らしており、2人が出ていった実家に、私は奥さんと2歳の子と暮らしています。
数ヶ月に1回、奥さんが仕事や、友達と会うって時に、2人で、電車に2時間ほど揺られて、私の両親に、孫の顔を見せにいっています。
先日も、奥さんが学生時代の友人と集まる事になっていたので、子と2人で、両親の住む海沿いの町を目指しました。
数ヶ月ぶりに孫に会った両親、特に祖母にあたる私の母は、成長ぶりに驚いており、「背が大きくなっている」や「いっぱい喋れるようになってる」など、言ってくれていました。
軽く食事をして、海沿いの遊歩道を歩いているときに母が、「3人で写真を撮りたい」と言ってきました。
3人と言うのは、子と私の両親の3人で、
引っ越しを機に取り始めた地方新聞で、孫とおじいちゃんおばあちゃんの写真の企画があるらしく、それに応募したいとのことでした。
そういうことならと、私も、写真映りの良さそうな場所を考えたり、画角が悪いとか、後ろに人が映り込んでしまった、とか言っていると、なかなかいい写真が撮れず、
子も飽きてきて地面に落ちているどんぐり集めに夢中になっていました。
私としては、よくある光景で、危なっかしく思うのですが、いつも絶妙なバランスで、足場の悪いところも歩いたり走ったりしているので、特に気にしていなかったのですが、
久しぶりに見る私の母は、やはり気になるようで子供の身長に合わせて中腰になりながら後を追ってくれていました。
「気をつけてよ」
「足元危ないよ」
って言いながら追いかけていて、
そしたら子が急に180度転回して急に母の方に走り出して、母の後ろ側に回るような状態になりました。
母もそれについて、180度回って再び追いかけようとしてくれた時に
「みしみし、バシッ」
って音がして、
音のした方に目をやると、枝がしなって折れていました。
母って、女の人にしては身長が高い方で、多分170センチくらいあるんですね。
その母が、ずっと中腰で、子供目線で追いかけてくれてて、「気をつけや」って言いながらついていってくれてたのですが、
180度回る際に、若干起き上がるというか、腰の高さを上げる拍子に、木の枝に頭が引っかかってしまって、みしみし音を立てて、バキッと枝が折れてしまっていました。
子を見てもらっており、絶対痛いですし、笑ったらあかんのは分かっているんですけど、声出して笑ってしまって、
一通り笑って、ようやく心配するフェーズに突入した頃には、母は、どこから取り出したかもわからない鏡で、もう顔面をチェックしていて、私も見てみたのですが、
ちょうどハリーポッターのおでこの傷と同じ位置に、同じような稲妻みたいな傷ができていました。
たまらず「いや、ハリーポッターやん」って言ったんですけど、母は多分ハリーポッター知らないので、スルーされて、
おそらくホグワーツ直伝の魔法の粉を、おでこに塗って傷口を隠していました。
その後、海をバックに、人も少ない絶好の場所を見つけたので、
母の携帯で写真を撮りました。
一応、私のiPhoneでも撮っておくかということで、念の為にもう一枚パシャリと撮っておきました。
そして、両親の住むマンションに場所を移して、改めて撮った写真を見たのですが、
背景とか構図的には素人ながら、結構いいんじゃないかなという写りで、
母はおでこの傷が心配みたいで、一応前髪で隠していたので、最初に確認した母の携帯では傷が全くわからなかったのですが、
私のiPhoneで拡大して確認したところ、
最近の一気に春めいてきた陽気も手伝って、
魔法の粉は完全に落ちており、普通にハリーポッターでした。
多分、この写真は、応募したところで採用されないと思うので、また別の写真を撮りに、両親の元を訪れたいと思います。
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