息子の涙のリクエスト
私は子どもに激甘である。
外出先で、これ買ってと言われれば迷わず買う。
家でお菓子食べたいと言われれば、ほしいと言われるだけ開ける。
何でもかんでも手に入るわけではないことを伝えることも必要なのかもしれないが、私は現時点では必要ないかなと考えている。
お菓子に関しては、奥さんが、日頃はバランスよくご飯を食べさせてくれているので、私と過ごす時くらいはいいかなと思っている側面もある。
週に1,2度2人だけで過ごすのだが、その時に決まって行くスーパーがあり、そこでアイスを買って近くのベンチで食べるのが我々2人のルーティンになっている。
雪が舞ってる日にもアイスを欲しがったので少し不安にはなったが、主張が激しかったので、初めて買うことを躊躇ったが、結局は購入した。
室内で食べようかとも思ったのだが結局いつものベンチに手を引かれて、雪の舞うなかアイスを食べていた。
見ているこっちが風邪をひきそうになったが、非常に美味しそうに食べていてくれた。
その後は、だいたい決まって近くの踏切で電車を見る。
「でんちゃ!」「でんちゃ!」とテンションが上がるので、毎回連れて来る甲斐があるなと思っている。
だが困るのが、テンションが上がりすぎて、「もっかい!」「もっかい!」と電車のおかわりを求められることである。
さすがに電車のダイヤを操ることができないので、どうすることもできないのだが、幸か不幸か、その踏切付近に別の路線の踏切もあるので、2ヶ所の踏切を子を抱っこして往復して、「もっかい!」のリクエストに応えるようにしている。
子が電車に飽きることはないので、私の体力が限界を迎えたタイミングでこの企画は終了となる。
先日も、突如訪れた無限電車企画の終了に納得していない顔の子を抱っこしながら家に向かって歩いていると、なかなかの規模の交通事故が起こっていた。
車3台の絡む事故で、1台の車は完全にひっくり返っていた。
怪我をされている方もおられたようだが、全員自力で歩けるような様子であった。
それでもこの規模の事故なので、パトカーや消防車、救急車が次々と現場に駆けつけた。
怪我をされた方を乗せた救急車は、サイレンを鳴らして現場を後にし、ひっくり返った車が元に戻った頃には、消防車やパトカーの台数は減っていた。
「もっかい」
子が小さな声でぼそっと言った。
「ん」と聞き直すと。
「しょーぼー、きゅーきゅー、もっかい!」と大きな声ではっきりと言った。
一度スイッチが入ると誰にも止められない。
「しょーぼー、きゅーきゅー、もっかい!」の涙ながらのエンドレスリピートが始まった。
事故に関わったであろう方もまだ現場にいたので、緊急車両のリクエストは、さすがに不謹慎かと思ったが、
子にとっては、本やトミカでしか見ていないものが目の前に大集合していれば、もう1回見たい気持ちにもなるのは仕方ないなとも思った。
ただ、サイレンくらいうるさかったので、何か気を紛らわせるものはないかとあたりを見回した。
「電車走ってるよ」
どうにか機嫌取り戻せと願いながら、先ほどまでいた踏切を指差した。
「でんちゃ!」
一瞬で笑顔になった。
この日は、無限電車を2セットして家に帰った。
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