見出し画像

2023大学ラグビー関東対抗戦:慶應義塾対青山学院を簡単な数字で見てみた

みなさんこんにちは
サモア戦勝利の余韻残る週末、いかがお過ごしでしょうか

今回は9/30に行われた関東大学対抗戦のうち、慶應義塾大学対青山学院大学の試合についてレビューをしていきたいと思います

それではメンバー表から

次にスタッツです

それでは順番に見ていきましょう


慶應義塾のアタック・ディフェンス

慶應義塾のアタックシステム

9シェイプで手堅くアタックしていたのがかなり印象的でしたね
BKの選手に出す機会がほとんどなく、あったとしてもセットピースからの1stフェイズなどが主で、流れの中で10番の山田選手がボールを受け取るシーンはほとんど見られませんでした

一方で12番の三木選手はほぼFWのようなプレーを見せていましたね
SHからのパスを受けてそのまま自分でキャリーしたり、10シェイプに近いような立ち位置でボールをもらってはキャリーしたりと、キャリーに選択の重きを置いたプレースタイルだったように思います
その代わりに13番の永山選手がSOもこなせる器用なタイプのCTBだったので、バランスが取れてると言えばそうなのかもしれません

アタックのフローそのものを見ると、一応は表裏を使ったアタック様相を見せてはいましたが、9シェイプの先頭の選手からのスイベルパスの場面などはボールを受けてつなぐ役割を果たすFWの選手が自らの勢いを殺してパスをすることに注力していたので、キャリーの恐ろしさがなくなって青山学院側としては少し気持ち的にはディフェンスしやすかったのではないでしょうか

また、9シェイプの裏や10シェイプの裏などバックドアを使うシーンも見られていましたが、個人的な感想としては相手にパスの選択肢として負荷をかけることができているようには見えず、ディフェンス側も容易にスライドすることができていました
ディフェンスがずらされて必死に横方向に移動するといった場面はほとんどなかったかと思います

キックはハイボールが多く、自分たちが蹴り込んだ際の再獲得ないしはプレッシャーをかける場面において戦術はうまくはまっていたように見えました
一方でキックレシーブの際には高いエリアを青山学院の選手に確保され、キャッチミスをしたりお見合いをしてそもそも誰も触れなかったりといった状態にもなっていました
その中で14番の笠原選手は堅実なキックチェイスで相手選手にいいプレッシャーをかけることができていたと思います

ラックのスピードに関しても慶應義塾の今回の試合における評価ポイントになってくるかと思います
3人以上のオーバーの選手が絡んだラックがほとんど起きておらず、多くのラックがキャリアー+2人の選手で完結していました
橋本選手の球捌きも安定しており、良いボールが後方の選手に供給されていたと思います

慶應義塾のキャリー

9シェイプがアタックの主となっていて、ポッド内のパスも一定数ありましたが1stレシーバーの選手がそのままキャリーすることも多く、青山学院のディフェンスのプレッシャーをかなり受けていたように思います
サポートの選手がハンマー(タックルを受けた選手に体を寄せて一緒に前に出る)に入ることで前進はできていましたが、よりディフェンスで体を張ってくるようなチームが相手となった時は再現性が少し不安になってくるかと思います

青山学院の精度の良いタックルを受ける中、前に出る力を有していたのは2番の中山選手と12番の三木選手だったように思います
中山選手はもちろんモールの最後尾のプレイヤーとしてトライにつながるラストキャリーの役割を果たしていましたが、フィールドプレーでも安定感のあるキャリーを見せていました
また、三木選手はFWのようなキャリーを見せており、タックルを受けても足をかいて前に出ることで相手を外したり、掴まれた状態で前にぐっと出ることができていたのが印象に残っています

細かい数を見ていきましょう
キャリー回数は前後半合わせて63回となっており、勝利チームと試合展開から見ると比較的少なめということができるかもしれません
ただ、トライのパターンがモールトライ2回とインターセプトに近いターンオーバーからそのままトライと効率のいいスコア方法だったので、ある種納得の数値ではあります

9シェイプでのキャリーが合計26回見られており、4割ほどのキャリーが9シェイプ関連ということができます
Otherを除いたその他のキャリーが少ないことから、9シェイプのキャリーがアタックの核になっていたことはほぼ間違いないかと思います

ただ、細かいパスが多かったわけではないので相手としては的を絞りやすかったようにも見え、先述したように9シェイプにはかなりプレッシャー受けていました
あえて外側のエリアを使わなかったのかは判断がつきかねますが、トライにつながる、もしくはラインブレイクを意図的に引き起こすことのできるキャリーは少なかったことから、なかなか「相手を崩す」という段階までアタックの質を高めることはできていなかった印象です

慶應義塾のパス

バックスライン上でもある程度は展開していましたが、前のキャリーの項目でも述べたように9シェイプが中心となったアタック様相を示していたように思います
ある程度は表裏を使った階層的な攻撃意図も見えましたが、そこまで効果的に用いられている印象はなかったですね

パス回数は全体で84回となっており、キャリー・パス比は3:4です
イメージ的にはFWのキャリーも多く、パス回数が少ない状態でキャリーにつながっていた感じですね

詳細を見ていくとやはり9シェイプへのパスアウトが31回と最も多く、4割弱となっています
ポッド内でのパスワークは前半1回、後半5回と後半にかけて増加傾向にあり、少しゲームの流れ、アタックの形を変えようとした意図は見えたかと思います

バックドアへのパスは共に3回と、一定数の使用がみれらています
しかし、9シェイプの選手が相手に接近することなくスイベルパスをしていたり、体を外に開いた状態でスイベルパスをしていたりと、キャリーの意図を切ることができる動きをしていたことから、相手に心理的なプレッシャーはかけることができていなかったようにも見えました

それ以外のパスに関してはそこまで意図的に回数を増やそうとするる雰囲気を感じることができませんでした
前半に関しては良くも悪くも普段あまりやらないようなパスワークやつなぎを見せていて、エラーで相手ボールになってしまうことも多く、そこまで意図に沿ったアタックはできていなかった印象です

慶應義塾のディフェンス

タックル成功率は93.2%とかなり良い数値を叩き出しています
実際に試合を見た印象でも、特に9シェイプに関してかなり強いプレッシャーをかけている印象で、ダブルタックル・シングルタックル問わず精度の高いタックルをすることができていたように思います

一方で細かいパスワークなどで相手にタックルを外されるシーンもありましたが、二の矢・三の矢になる次のサポートタックラーが待ち構えており、どのミスタックルも致命的なエラーにはなっていなかったように見えました
Defenders Beatenからビッグゲインにつながった回数もそこまで多くなかったように思えますしね

ただ、エッジエリアで少し崩される傾向にはあったと思います
バックフィールドの連携は映像から見て取れない部分もありますが、前に出るか味方の動きを待つかの判断がうまくいってなかった可能性はありますね
また、外に押し出せる場面で押し切れない、またはタックルを外される場面もあり、エッジエリアでの攻防は少し何があったかもしれません

青山学院のアタック・ディフェンス

青山学院のアタックシステム

アタックの傾向としては9シェイプの選手にボールを持たせるシーンも多かったですが、10番の青沼選手のボールタッチも多く、ゲームコントロールをしようとしているシーンが散見されました
ただ、慶應のディフェンスが若干前がかりになっていることから意図的なパスワークができていないシーンも多く、意図したキャリーにつながっていないのではないかと見えるシチュエーションもありました

青沼選手がうまくボールを散らしてはいましたが、シチュエーションによってはそのままラックに入ってしまうこともあり、その次のアタックがうまく継続できていない様子も見られました
9番の亀井選手がテンポを落としてゲームの速さをコントロールしているように感じましたが、リズムを変える回数が多めなこともあってテンポが出せず、結果的に相手のディフェンスラインを揺さぶることができていませんでした

セットピースに関していうと全体的には少し不安定だったと思います
スクラムはかなりプレッシャーをかけることができており、実際にペナルティを獲得することもできていましたが、青山学院サイドのペナルティを取られることもあり、攻め込んだエリアでのペナルティでチャンスを逸する時もありましたね

キック戦略としてはおそらく競り合いを狙った傾向にあるかと思います
Boxが多かったですし、自陣からの脱出も再獲得を狙っているような距離感にボールを落としていました
慶應のキックレシーブがうまくはまっていないことも多かったことから、キックの再獲得によるエリアマネジメントはうまくいっていたように思います
一方で先述したようなテンポのコントロールも相まって速攻にはつなげることができていないような印象もあり、次にはつながっていないようにも見えました

青山学院のキャリー

キャリーは総じて慶應義塾のプレッシャーを受けており、一つ一つのキャリーでゲインを切ることができていなかった回数の方が多かったように思います
何度か生まれたゲインを見ると少しアンストラクチャー気味なシチュエーションが多いような印象で、相手のディフェンスラインがカチッと構築されている時ののゲインラインバトルには苦戦していたように見えました

キャリー回数は88回と慶應よりも多い回数となっており、単純計算では慶應よりもボールを持つことができていたということができるかと思います
ただ、先ほども述べたようにキャリーの多くがゲインにはつながっておらず、プレッシャーを受けていたように見えます
そのため、このエリアで崩す・勝負するといったビジョンはそこまで見てとることはできませんでした

細かく見ていくと、9シェイプのキャリーが32回、10シェイプのキャリーが2回と多くがSHからの1パスでのキャリーとなっています
シェイプ外では28回のキャリーが生まれており、中央エリアが13回でエッジエリアが15回となっていることから、若干外方向にアタックのベクトルが向いているということができるでしょうか

ラインブレイクやDefenders Beatenが一定数生まれたのは救いですね
特にラインアウトからのムーブでゲインを着ることができていたのはアタック効率の良さにも繋がるかと思ったので、良い傾向かと思います

一方で複数回キャリーを積み重ねて相手の隙をつくといったアタックはできていないように感じられ、最終的なアウトカムがターンオーバーで終わることも多かったように思います
一発でビッグゲインを図る時だけではなく、長いフェイズを繰り返した時にどのようなアタックをしていくかといった方針が見えてくるともっと面白くなってくるかと感じました

青山学院のパス

基本的にはポッド内のパスやバックドアへのパスのような工夫を凝らしたパスは少なく、FWがそのままシンプルにキャリーをするか外に回すかといった比較的わかりやすいアタック構造をしていたように思います
その中でラインアウトでのスペシャルプレーを使ったりして崩しを入れていくイメージですね

そのため、慶應のディフェンスの詰めによって意図せずキャリーが起きることもあり、シンプルが故の苦悩もあったのではないかと愚考します
もちろん複雑なパスプレーを完全に是とするわけではないのですが、少しひねりを入れたパスワークがあったも面白いのではないかと思う次第です

パスの内訳を見ていくとOtherが比較的多く、崩れたパスが一定数起きていることがわかります
実際、補給前にバウンドするパスもありましたしね
バランス的に最も多かったのは9シェイプですが、バックスラインへのボール供給も多く、またバックスライン上でのパスワークも多く見られていたことから、アタックのシンプルさの割に上手い展開はできていたのかもれません

個人的には12番の桑田選手の存在も大きかったと思っていて、桑田選手はキャリーも安定してこなすセンターの選手ですがパスを使った繋ぎにも貢献しており、アタックの継続に果たす役割は大きかったのではないでしょうか

青山学院のディフェンス

タックル成功率は、数値的に良かった慶應をさらに上回って95.8%とほぼ完璧ということができるかと思います
実際に見ていても弾かれるシーンはほとんどなかったですし、トライもモールトライやアンラッキーなインターセプトからのトライとタックルに繋がらなかったキャリーが多かったので、結果的にはディフェンスはかなり良かったかと言えます

ディフェンスの出方としては主にポッドにプレッシャーをかけてダブルタックルで押し返すことを意図しているかと思います
慶應のアタックが9シェイプに偏っていたこともあり、そのディフェンスラインの上がりとうまくはまっていて、中央エリアでは互角以上に戦うことができていたように見えました

ただ、少し気になるのがタックルから相手を倒し切るまでの時間です
相手をうまく倒し切ることができていないことからオフロードなどで繋がれたり、相手の重心にプレッシャーをかけられず足も殺せていないことから足をかかれて前に出られるシチュエーションも多かったのではないでしょうか

まとめ

展開的にはシンプルなアタックを繰り返す両校が相手のミスからエリアをとってトライにつなげていた感じかと思います
タックル成功率が高かった分劇的なラインブレイクなどは少なく、少し玄人好みの試合展開だったのではないでしょうか

今回は以上になります
それではまた!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?