最近の記事

自死者に

われわれの暮らす社会では、性愛や出生、家族の形成などといった親密な人間関係のあり方に関して、いまだ公的な圧力がはびこっている。と、こう書くと政治批判の書き出しのようだが、今日はそうではない。「お上」たる政府がかけてくる圧力以前の問題として、われわれ一般市民が互いに監視しあい、圧力をかけあっていることが諸悪の根源であるということは、正しく理解されていない。 生まれたときから脅されている。男に生まれたなら男としての、女に生まれたなら女としての正常な人生を全うしろとどやされる(もち

    • 「カモメよ、そこから銀座は見えるか?」観劇メモ

      M&Oplaysプロデュース公演「カモメよ、そこから銀座は見えるか?」(作・演出:岩松了)、本多劇場で観てきました。 観おわったあと、私と同伴した家族とで話したりしながら考えたこと、その結果受け取った物語の様相について、忘れないうちに書いておいてみようかと思う。全部は書ききれないが、一番胸に沁みた主人公イズミのことを中心に。 これから書くことはあくまで私の見方ではあるけど、公式パンフレット(有料)の岩松了インタビューで、ある程度答え合わせはできてると思っている。 一度観ただけ

      • 【痛い】ねずみよけのために超音波使うのやめてほしい【うるさい】

         最近すごい普及してないですか、ねずみよけの超音波。商業的な建物の入り口とか、搬入口、地下駐車場への出入り口。地下鉄の駅から地上へ出ることなくビルの地下階へ入れるような場所なんかにもよく流してある。中には外周をぐるっと丸ごと囲むように流している建物なんかもあって、近づくだけで具合が悪くなる。以前はまったく音のしなかった建物が急に使い始めたなと気がつくことも。  人間には聞こえない音だなどと嘘を言ったのは誰なのだ、聞こえてるぞ、しかも街で使われている超音波にもいろいろと種類があ

        • 3月っぽいやつ

           出版業界の片隅で職人として生きていくという新たな目標のために、アルバイトを辞めた。在学中から、大学卒業後に資格取得を経て新たな職に就くまでのあいだ、生活のための費用はこのアルバイトで得る賃金に依拠していた。振り返るともう3年と2ヶ月もの長きにわたって同じ職場にいたことになる。  ひとつの職を何十年もつづけているような人からみれば、3年ごときのなにが長いものかと思われるだろうが、私にとってはこれが同一職の最長勤務記録だった。そして個人事業主として生計を立てることを決めた私にと

        自死者に

          障害者ではなくなるために、一度きちんと障害者になるということを考える

           私が自閉症者であることを知る職場の同僚から、ある日、こんな質問を受けた——「障害や病と名がつく特質について、それはまさしく障害または病であるという人と、たんに個性であるという人がいる。発達障害の当事者であるあなたはどう考えるか」。  私は仕事の手を止めて少し考え、それからこのような意味のことを答えた——「ほんとうの意味で個性であるということができるようになるためには、まずはそれがまさしく障害または病であるとみとめることからはじめるよりほかにない」。  大学卒業直前、最後の学

          有料
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          障害者ではなくなるために、一度きちんと障害者になるとい…

          めでたく障害者の仲間入りを果たしてから二週間

          誰がつけたのかよく知らないけども、発達障害という名がついているわけだから、病院で検査を受けてその定義にあてはまるとの診断をもらった以上は障害者を名乗っても構わないよね。 成人を対象とする発達障害専門の外来をおく病院は都内でさえ数が少ない。その中でも、アスペルガー症候群・高機能自閉の診断と支援を得意とするところは注意欠陥・多動性障害の専門院にくらべてさらに少ないらしい。東京でもこの状態か……つまり地方在住の当事者はその時点で正確な診断や公的支援においてほとんど詰んでいるのかも

          めでたく障害者の仲間入りを果たしてから二週間