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【掌編小説】臆病な私は、靴を脱ぐ

【掌編小説】臆病な私は、靴を脱ぐ

「笹谷は土足で人の心に踏み込まないだろ。そこに安心できたんだよな」

 その言葉は、わたしに緩やかに、それでいてほどけないようにしっかりと絡みついた。
 そんな風に言われてしまうと、わたしはこの場所から身動きが、取れない。

* * *

 席替えで席が前後になったことをきっかけにして、わたしは伊方と仲良くなった。好きになるまでに、時間は掛からなかったと思う。

 わたしの席の前だった伊方が、席に

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