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【詩】ドーナツの穴の食べ方

博士は知りたくてたまりませんでした
ドーナツの穴はどうすれば食べられるのか
博士は解明したくて仕方ありませんでした
ドーナツの穴ははたしてどんな味がするのか

博士は毎日考えていました
寝ても覚めても考えていました
ドーナツの穴をどうすれば口に運べるのか
試行錯誤する毎日でした

博士はドーナツを水に浸けて凍らせてみました
全面氷の塊になったドーナツのうち
穴の部分だけくり抜いて食べてみました
でもそれはただの冷たい氷でしかなく
寒くなった博士は翌日風邪を引いてしまいました

今度はドーナツの生地を極限まで削っていき
僅かに残った生地と穴を
慎重に口へと運んでみました
でもそれはやはりドーナツの味がするだけで
博士はドーナツの食べ過ぎで虫歯がチクチク痛みました

博士は研究を続けました
たったひとりでろくに休みも取らず
ドーナツの穴の食べ方を死に物狂いで探りました
三度の飯も忘れてしまう程に
ドーナツの穴の解明に全力を尽くしていました

でも答えはひとつも見つかりませんでした

万策尽きて疲れてしまった博士は
なんとなくドーナツを空へかざし
ドーナツの穴から空を覗いてみました

透き通った空でした
それはそれはまっ白な
砂糖のような大空が広がっていました



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