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赤ちゃんのフィジカル探索

前回の記事では「赤ちゃんの探索とはRPGのレベルあげ」と書きました。身体の感覚、動かし方、物の運動パターン、人との関わり方をなどを学んでいきます。そのとき最も大切なことは「あなたは世界を探索するために生まれてきた!さぁ、世界を楽しもう!」という物語世界を大人が用意できるか、ということです。

その物語世界の作り方には2つの方向があります。1つはフィジカルの世界で「どんな物を周囲に置くか」。もう1つはメンタルの世界で「周囲の人の関わり方」です。今日は「Baby-Led Weaning」という食育の方法を参考に、フィジカルの探索について考えていきます。

今回の記事で伝えたいこと
・赤ちゃんは好奇心に基づいて探索をする
・たくさんの感覚を使い、さまざまな運動を試す
・集中できる環境をつくるべし

Baby-Led Weaningとは

「Baby-Led Weaning(以下:BLW)」とは、「赤ちゃん主導の離乳食」という意味です。ざっくり言えば「生後6ヶ月ごろから、大人とほぼ同じ食事を与える」というものです。通常の離乳食はピュレ状にした野菜やお粥などをスプーンで口に運びますが、BLWは歯茎でつぶせるやわらかさに茹でたスティック状の野菜(サツマイモ、バナナ、アボカドなど)を与えます。まずは動画を見てみてください。

この手法にはリスクがあります。喉につまってしまったり、鉄分不足になったり、吐き戻しをしてしまいやすいです。この動画の最初のほうでも吐いちゃってますよね。栄養不足を補うために母乳もしくはミルクを併用すべきという主張もあり、エビデンスに基づく明確な方法論はまだ分析段階のようです

*参考資料:Baby-Led Weaning: The Evidence to Date

しかし、今日はそのリスクの話を置いておいて、ぼくがBLWが面白いと思った点について書きます。その理由は以下の三つです。

① 好奇心ドリヴン      
② 感覚と運動の探索
③ 共感の探索

この記事では、①、②について書きます。③については次回!

① 好奇心ドリヴン

BLWは赤ちゃんの好奇心を引き出しよく観察する手法であると言えそうです。まずは食べることに興味を持つかどうか。そして食べている時の表情。こうした要素を観察しながら、赤ちゃん自身が楽しんでいるかどうかをよく見極めます。「Baby-Led」という名前のとおりです。

② 感覚と運動の探索

生後1歳過ぎぐらいまで、赤ちゃんはとにかく物をつかんでは口に入れます。厚切りのポテトチップスを食べる時の感触を想像してみてください。指でつまんで口に運び、歯でばりぼりとチップスが砕けていくのを、口の中の触覚や聴覚で感じますよね。さらに味と匂い。複数の感覚を一気に使います。口に物を入れることでたくさんの感覚を知ることができます。

さらに、赤ちゃんの口と手の「運動」に注目してみてください。口に食材を運ぶ手の使い方、食べ物を細くするための唇や顎の動かし方を調整し、日に日に上達しています。

サツマイモ、バナナ、アボカドの味、匂い、柔らかさなどの物的特性と、口に運ぶときの手の使い方、飲み込む時の口の使い方と、手や口や顎で生じる複数の感覚を統合して「食べる」ということを探索しているのです。

また、BLWでは赤ちゃんが椅子にしっかりと座っています。おそらく、テレビもつけていないし、おもちゃも周囲にない。食べるために集中する環境をつくっています。姿勢を安定させ、集中できる環境をつくる。BX(Baby Experience)を最大化する工夫がなされているようです。

まとめ

さて、今日のまとめです。BLWはまだ確かなエビデンスがありませんが、好奇心・感覚ー運動・共感の3つの点から興味深い実践です。好奇心をよく観察し、どんな感覚ー運動をしているかをよく見ることができます。そのために集中できる環境を用意していることも重要な点です。動画では順番に食事を手渡していました。途中から学習した赤ちゃんたちは、ママが食べ物をわたしてくれることを予測して「くれー!!」という感じで手を伸ばしていましたね。

次回は、BLWを事例に「メンタルの探索」について書こうと思います。大人と同じものを食べることがいかに共感性を育むのか。好奇心ドリヴンと大人の関わり方の関係とは?ということについて考えていきます。

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