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バレンタインデー【百合小説】

今にも雨が落ちてきそうなグレーの空を見上げて友梨佳はため息をついた。
手には可愛らしくラッピングされた紙袋。

乙女のイベント、バレンタインだというのに彼女の顔も曇り空だ。
せっかく教師達の目を掻い潜り、今の今までチョコレートを死守したのに、お目当てのあの人は想像以上に人気で近づくことも出来ずにこんな時間になってしまったのだ。


「どなたのプレゼントを受け取ったのかしら・・・たくさん渡されていらしたのに私のチョコレートなんて・・・美鳥様・・・・・・」


昇降口でうな垂れる友梨佳の肩にポンと手が置かれる。
「呼んだ?!」
聞き間違えるはずのない大好きな人の声に身体を震わせると、そこにはにこっと笑った美鳥が立っていた。


至近距離の彼女に友梨佳の表情はとろけそうになるが、ハッとして持っていた袋を差し出す。
「美鳥様、あの、たくさん頂いていらして、お邪魔になるかもしれませんが・・・私の気持ちも受け取って頂けませんか??」
一瞬驚いた顔をする美鳥だったが、いつもの笑顔に戻ると「喜んで」と包みを受け取ってくれた。
 
「正直言うとさ、友梨佳がくれないのかなって不安だったんだけど?」
「そんな・・・」
「だってこんな時間まで会いに来てくれなかったし。待ちかねて探しちゃったよ」
冗談ぽく不満を漏らすと、友梨佳は悲しそうにうつむいた。
「美鳥様が人気ものなので、あの、少し気後れしてしまって・・・」
美鳥は友梨佳の手をとると唇を寄せ囁いた。


「友梨佳はあたしの友梨佳なんだから、気後れとかしないでよ。当然、次は1番に来てくれるよね?」


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