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風呂が2日に一度でも耐えられたあの魔法の粉

ベビーパウダーを所望している。
心から欲している。

せっかくシャワーを浴びてサッパリしても、5分ともたず身体中がベタベタになって皮膚呼吸できなくなるこの嫌な感じ。
なんという熱帯の夜。

最近ベビーパウダーってどうなんだろう。
子供ももうすっかり大きくなったから、よく分からない。
今も使われているのか、すっかり廃れたのか。
一時期、原料のタルク(滑石)の害でもめてたけど、解決したのかな。

***

実家は貧乏を極めた。

夏でも風呂は2日に一度しか入らせてもらえなかった。
今より格段に涼しかったとはいえ、だ。

神戸・塩屋の急な坂の上に家があったから、帰ってきたら汗だくだ。
どれくらいの坂道だったか、過去にあげた写真を再掲しておこう。

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この坂を登り切って汗をかかない人がいたら教えてほしい。
なのに、風呂の日でなければ汗を流さず寝るしかなかったのだ。

今思えば濡れタオルで身体を拭くくらいすればよかったのに。
もしかすると洗濯物を増やすな圧もあったのかもしれない。

しかし天瓜粉(てんかふん)を使うことは許されていた。
今でいうベビーパウダーだ。

風呂のある日でも、汗かきの僕は首回りや肘裏、膝裏に天瓜粉をつけた。
つけないと、ひどいアセモに悩まされたからだ。

風呂のない日には…寝る前にこんな状態になった。

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全身バカ殿である。

人生でもっとも汗かきだった高校時代さえも、風呂は2日に一度だった。
夏、風呂のない翌日はさすがに自分が汗くさくないか気になったものだ。
多汗な時期でもあったが、多感な時期でもあったのだ。

それでも全身バカ殿、いや天瓜粉の威力たるや絶大。
つければそれまでのベタベタが嘘のようにサラサラになり、翌日もなんともいえずいい香りに包まれている。
おかげで、貧乏だからごめんという肩身の狭さも味わわずに済んだ。
あぁ天瓜粉。

天瓜粉は文字どおり、瓜から作られていた。
カラスウリの根から取れる白い粉が原料だ。
今どきのベビーパウダーは、悶着のあったタルクやコーンスターチで作られているそうだけど。

***

シャワーさえ浴びられれば…
シャワーがすべてを解決してくれる…
高校生の僕はどれだけ切望したか分からない。

今では当時の貧乏を脱し、毎日シャワーを浴びることができる。
これで大丈夫、ノープロブレム! のはずだったのに。
シャワーのサッパリ心地が数分で消滅するような地球になるなんて…

だからやっぱり、天瓜粉を所望している。
風呂が2日に一度でも耐えられたあの魔法の粉を。
あ、いや、ベビーパウダーを。

(2022/7/2記)

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