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久しぶりの玉子焼にすっかり気分が上がる

昨日、三宮へ。
朝の忙しい時間に仕事の用で。
その前に銀行にも3つ寄らなければならない。
家を出るのが少し遅れたから、気も焦っていた。
信号ももどかしい。

よし、もうすぐ目的地、なんとか間に合う。
と、なぜか足下に違和感を感じる。
ちらっと何かが視界に入ったような気がするのだ。
ん?と思いながらも、急いでいるから歩は緩めない。
でも、歩きながらやっぱり気になる。
いったい何があった?
1分くらいなら時間はある。
思いきって踵を返し、違和感のあった地点に戻る。

何なんだ! このきれいな字。

こういうのってふつう型紙の上からスプレーしたりするのでは?

トメ、ハネ、ハライ、完璧。
とくに「仮」の字のバランスのよさにしびれる。
習字のお手本のようではないか。
もうこれだけでその工事現場がとても丁寧なのではないかと嬉しくなる。

おっと、もう1分経った。
急がなければ今度こそ遅れる。

なんとか間に合って、用も無事済ませた。
正午に入れていたサロンの予定まで小一時間。
急にお腹がぐぅっと鳴る。
何が食べたい?と自問しようとした瞬間、玉子焼が降ってきた。
そう明石焼きだ。

実は先日、ささきひろこさんの神戸旅をアテンドしたとき、明石焼き食べます?と店に入ろうとしたが、午前中に食べたフロインドリーブのサンドイッチでお腹が満たされていたため断念したのだ。
きっとそのときから僕の口は明石焼きになっていたに違いない。

その日入ろうとした明石焼きの名店〈たちばな〉に向かった。
神戸では明石焼きのことをたこ焼きと呼ぶらしい。
僕は明石育ちなので、その辺の経緯は知らないし、そもそも明石の僕たちは明石焼きではなく玉子焼と呼ぶからまたややこしい。
しかしどうやら古い神戸の人たちは今でもこれをたこ焼きと呼ぶことを大切にしているとものの本で読んだことがある。

〈たちばな〉といえばグルメ情報誌では「神戸で食べる明石焼きの名店」と紹介される人気店だが、確かに店頭の看板には「明石の活たこ、神戸名物たこ焼き」とあり、明石焼きあるいは玉子焼とは書かれていない。

明石の活たこ、神戸名物たこ焼き

座るなり、ひとつ?と訊かれ、ひとつと答える。
ほどなく出てきたのはフルンフルンの玉子焼(以下ややこしいので、僕が幼少期慣れ親しんだ「玉子焼」表記で統一)。
プルンプルンではなくフルンフルンだ。
ミツバの香り高い熱々のダシにつけてフルンとした卵生地を楽しむ。
うわぁ、やっぱりうまいって!

奥の2つはもう食べた

玉子焼は大阪のたこ焼きとは似て非なるものだ。
生地は見てのとおり卵が粉に勝り、まさしく玉子焼。

一説によると、明石の玉子焼は大阪のたこ焼きのルーツとされる。
昔大阪では明石と違って新鮮なタコが手に入らなかったことからこんにゃくで代用したと言われ、たしかに大阪のたこ焼きで今もこんにゃくが入っているものを見かけることがある。

大阪のたこ焼きに使うタコはほぼ地中海からの輸入物だが、それは軟らかくて食べやすいからだそうだ。
一方でこの〈たちばな〉も、もちろん明石に無数にある玉子焼店でも、使うのは地元明石のタコ。
だから驚くほど食感がしっかりしていて、なかなか噛みきれない。
大阪のたこ焼きのつもりで食べると顎をやられるかもしれない。

久しぶりの玉子焼にすっかり気分が上がる。
幼い頃はことあるごとに玉子焼を食べたものだ。
1時間後、サロンでツーブロックの刈り上げを3mmでと言ってしまい、後で少し悔やむことをこの時の僕はまだ知らない。

(2023/10/21記)

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