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名前にこめられた想い #124 ネーミング

古典落語に寿限無というものがあります。

「寿限無 寿限無 五劫(ごこう)のすりきれ 海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)の水行末(すいぎょうまつ) 雲来末(うんらいまつ) 風来末(ふうらいまつ) 食う寝るところに住むところ やぶらこうじのぶらこうじ パイポパイポ パイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの 長久命(ちょうきゅうめい)の長助(ちょうすけ)」

これ、実は、人の名なのです。
物語では、待望の男の子を授かった男は、よい名前を付けたくて寺の和尚に相談します。
和尚は、さまざまな縁起のよい言葉を候補として挙げます。
ところが、男は一つに決めることができません。
結局、和尚が口にしたすべての言葉を並べたのが、前出の名です。
当然ながら、そんな長い名では、何をするにも事が進みません。
物語では、そこが落とし所となります。

さて、落語では、落とし処となる長い名ですが、捉え方では、親である男の想いも分からないでもありません。
それだけ、名付け、ネーミング、は大切なことだと考えます。

これは、ビジネスにおきても通じると思います。
もちろん、ビジネスの場合は、想いだけではなく、ブランディングの要素も強く含まれます。

例えば、寿限無の名ですが、長いということで、一時的な話題性はあるかもしれません。
しかし、消費者は、そこから名付けた想いは理解できません。
また、とても覚えることができません。
これでは、ブランディングとしては、なかなか成立しません。

ネーミングで大切なのは例えば、次のようなところです。

1.語感がよく、口ずさみやすい
2.製品やサービスの特徴を理解しやすい
3.覚えやすくて記憶に残る
4.独自性があって印象が強い
5.ストーリー性が感じられる

最近では、ナライティブマーケティングという手法を良くみかけます。
様々な要素をストーリー性を持たせて、連携させることで、より、商品名、サービス名を印象づけるものです。
ここが、想いに通じる部分かと思います。

寿限無に限らず、人には、それぞれ名前があります。
現代では、苗字が、先祖から受け継ぐなど家(家系、家族)のこととなります。
対して、個人を特定するために付けられるアイデンティティが、その後に続く名です。

名は、基本的に親がつけるものです。
寿限無と同様に、子に対する何らかの想いを名に表します。

例えば、私の名は、武彦です。
小さな頃は、その地域に、武彦という立派な人がいたので、そのような人になって欲しいと思って付けたと教えられました。

それが、突然、高校生の頃に本当の理由を教えてもらいました。

私の郷里の仙台市の偉人と言えば、伊達政宗公です。
言わずと知れた、安土桃山時代から江戸時代前期にかけて活躍した武将であり、東北を平定して、仙台藩を開いた人物です。
そして、その神号が武振彦命(たけふるひこのみこと)です。

そうです。
私の両親は、あろうことか、この神号から2文字をいただいて、武彦と付けていたのです。

さすがに私の場合は、やり過ぎです。
しかし、私なりに、その親の想いに応えようと意欲を持ったことは間違いありません。
同様に、個々の名前には、必ず、何らかの名付けの想いがあると考えるべきです。

これは、製品やサービスでも同じです。
それらを消費者に届ける上で、まず、最初に入ってくるのが、その名前です。
そして、その名前がいずれ、ブランドとして確立されたら、それは、顧客に対する信頼の証となります。
是非、想いを込めてネーミングしていただきたいと思います。

また、会社の名前にも、創業者の想いが詰まっていることが少なくありません。
機会をみて、自社の社名を振り返ってみることも大切かと思います。

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